第52回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その3「唯一のハードトップ・レビン」〜
2006.11.15 これっきりですカー第52回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その3「唯一のハードトップ・レビン」〜
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トヨタ・カローラ・ハードトップ1600レビン(1974-75)
■レビンとトレノが別ボディに
1974年4月、カローラ/スプリンターはフルモデルチェンジして3代目となった。ボディは2代目よりひとまわり大きくなり、カローラには2/4ドアセダンと2ドアハードトップ、スプリンターには4ドアセダンと2ドアクーペが用意されていた。
このうち4ドアセダンは従来どおり、カローラ、スプリンターともに基本的なボディは共通で、グリルやリアエンドなどの意匠を変えて両車の差別化を図っていた。だが「レビン」や「トレノ」を擁する2ドアクーペモデルには、新たに両ブランドで異なるボディが採用されたのである。
カローラはセンターピラーのない2ドアハードトップクーペ、スプリンターはピラー付きの2ドアクーペだったのだが、単にピラーの有無ということではなくまったく別のボディであり、インパネなど内装のデザインも異なっていた。
しかしシャシーはまったく共通で、「レビン」(型式名TE37)および「トレノ」(同TE47)についていえば、直4DOHC1.6リッターの2T-G/2T-GR(レギュラー仕様)型エンジンはじめパワートレインは先代から踏襲していた。
ボディが大型化したこと、および双方とも先代ほど簡素でなくなったこともあって車重はレビン930kg、トレノ925kgと先代より60〜70kg前後重くなった。
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■初代から約20万値上げ
それでも新車当時の『カーグラフィック』によれば、動力性能に目立った低下はなかったそうだが、先代が得意としたモータースポーツとなるとまた話は別。発表前年の73年秋に勃発したオイルショックによって国内のレース熱が一気に冷え込んでしまったこともあり、サーキットにその姿を見ることはできなかった。いっぽうラリーでは、軽量コンパクトな先代のほうが依然として戦闘力は高いとされていた。
先代の外観上の最大の特徴だったオーバーフェンダーは装着されず、またトレノには装備を充実させた「トレノGT」が新たにラインナップ。価格はレビンが101万円、トレノが102万9000円、トレノGT108万1000円と、初代の誕生時に比べ約20万円、オイルショック後の値上げを経た最終型と比べても10万円近く上昇した。
この2代目レビン/トレノだが、75年に実施された50年排ガス規制に適合不可能ということで、同年11月をもって生産中止された。DOHCの2T-G型搭載のレビン/トレノのみならず、OHV1.4/1.6リッターツインキャブのT-B型、2T-B型搭載モデルもすべてカタログ落ちしたのである(注)。
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■クーペボディで復活
それから14カ月の77年1月、カローラ/スプリンター・シリーズがマイナーチェンジを受けたのと同時に「レビン」(TE51)と「トレノ」(TE61)が復活した。
2T-G型エンジンにEFI(電子制御インジェクション)を装着するなどして51年排ガス規制をクリアした2T-GEUエンジンを搭載しての再登板だったのだが、この復活「レビン」は75年11月以前のようなハードトップボディではなく、「トレノ」用のクーペボディを一部改変して流用していた。
「レビン/トレノ」復活に遡ること1年前の76年1月、カローラ/スプリンター・シリーズには、新たに3ドアハッチバックボディを持つ「リフトバック」が加えられていた。
「リフトバック」のボディはスプリンター・クーペをベースに3ドア化したものだったが、これのカローラ版はスプリンター・クーペ独自のマスクにカローラ風の「お面」を被せたものだった。
復活版レビンは、このリフトバックと同じ手法でカローラ風の顔つきに改められたクーペボディを使っていたのだ。なお「レビン」復活と同時に、カローラには同じボディにおとなしいエンジンを積んだ「クーペ」が加わり、いっぽう「トレノ」が復活したスプリンターには、従来はカローラのみだったハードトップが加わった。
つまりこのマイナーチェンジ以降、カローラ/スプリンター・シリーズには、2ドアセダン(カローラのみ)、4ドアセダン、2ドアクーペ、2ドアハードトップ、3ドアハッチバックというボディバリエーションが揃えられたのだった。
このうち3ドアハッチバックの「リフトバック」には、「レビン/トレノ」と同じDOHCの2T-GEU型エンジンと足まわりを持つホットグレードが新たに用意されたが、「レビン/トレノ」の名は与えられず「リフトバック1600GT」と呼ばれた。
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■唯一の「レビン」2ドアハードトップ
79年3月、カローラ/スプリンターは4代目にフルモデルチェンジした。このときに2ドアハードトップに2T-GEU型DOHCエンジンを搭載したモデルも再登場(カローラの場合、スプリンターは新登場)したが、やはり「レビン」とは名乗らず、グレード名は「ハードトップ1600GT」だった。
というわけで、「レビン」の名を冠した2ドアハードトップとなると、後にも先にも74年4月から75年11月の約1年半にわたって作られた、通称「37(サンナナ)レビン」だけだったのである。(つづく)
(文=田沼 哲/2006年11月)
(注)厳密には、ハイオク仕様の2T-G、2T-B、T-B型エンジン搭載モデルは75年1月で生産中止され、それから11月まではレギュラー仕様の2T-GR、2T-BR、およびT-BRのみがラインナップされていた。

田沼 哲
NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。
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第53回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その4「謎のスプリンター」〜 2006.11.23 トヨタ・スプリンター1200デラックス/1400ハイデラックス(1970-71)■カローラからの独立1970年5月、カローラが初めて迎えたフルモデルチェンジに際して、68年に初代カローラのクーペ版「カローラ・スプリンター」として登場したスプリンターは、新たに「トヨタ・スプリンター」の名を与えられてカローラ・シリーズから独立。同時にカローラ・シリーズにはボディを共有する「カローラ・クーペ」が誕生した。基本的に同じボディとはいえ、カローラ・セダンとほとんど同じおとなしい顔つきのカローラ・クーペに対して、独自のグリルを持つスプリンターは、よりスポーティで若者向けのムードを放っていた。バリエーションは、「カローラ・クーペ」「スプリンター」ともに高性能版の「1200SL」とおとなしい「1200デラックス」の2グレード。エンジンは初代から受け継いだ直4OHV1166ccで、「SL」にはツインキャブを備えて最高出力77ps/6000rpmを発生する3K-B型を搭載。「デラックス」用のシングルキャブユニットはカローラとスプリンターで若干チューンが異なり、カローラ版は68ps/6000rpm(3K型)だが、スプリンター版は圧縮比が高められており73ps/6600rpm(3K-D型)を発生した。また、前輪ブレーキも双方の「SL」と「スプリンター・デラックス」にはディスクが与えられるのに対して、「カローラ・クーペ・デラックス」ではドラムとなっていた。つまり外観同様、中身も「スプリンター」のほうがよりスポーティな味付けとなっていたのである。しかしながら、どういうわけだか「スプリンター1200デラックス」に限って、そのインパネには当時としても時代遅れで地味な印象の、角形(横長)のスピードメーターが鎮座していたのだ。
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第51回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その2「狼の皮を被った羊(後編)」〜 2006.11.10 トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■違いはエンブレムのみ1972年3月のレビン/トレノのデビューから半年に満たない同年8月、それらを含めたカローラ/スプリンターシリーズはマイナーチェンジを受けた。さらに翌73年4月にも小規模な変更が施されたが、この際にそれまで同シリーズには存在しなかった、最高出力105ps/6000rpm、最大トルク14.0kgm/4200rpmを発生する直4OHV1.6リッターツインキャブの2T-B型エンジンを積んだモデルが3車種追加された。うち2車種は「1600SL」と「1600SR」で、これらはグレード名から想像されるとおり既存の「1400SL」「1400SR」のエンジン拡大版である。残り1車種には「レビンJ1600/トレノJ1600」という名称が付けられていたが、これらは「レビン/トレノ」のボディに、DOHCの2T-Gに代えてOHVの2T-B型エンジンを搭載したモデルだった。なお、「レビンJ1600/トレノJ1600」の「J」は「Junior(ジュニア)」の略ではないか言われているが、公式には明らかにされていない。トランクリッド上の「Levin」または「Trueno」のエンブレムに追加された「J」の文字を除いては、外から眺めた限りでは「レビン/トレノ」とまったく変わらない「レビンJ/トレノJ」。だがカタログを眺めていくと、エンジンとエンブレムのほかにも「レビン/トレノ」との違いが2点見つかった。
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第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜 2006.11.6 誕生40周年を迎えた2006年10月に、10代目に進化したトヨタ・カローラ。それを記念した特別編として、今回は往年のカローラおよびその兄弟車だったスプリンター・シリーズに存在した「これっきりモデル」について紹介しよう。かなりマニアックな、「重箱の隅」的な話題と思われるので、読まれる際は覚悟のほどを……。トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)■スパルタンな走りのモデル型式名TE27から、通称「27(ニイナナ)レビン/トレノ」と呼ばれる、初代「カローラ・レビン1600/スプリンター・トレノ1600」。英語で稲妻を意味する「LEVIN」、いっぽう「TRUENO」はスペイン語で雷鳴と、パンチの効いた車名を冠した両車は、2代目カローラ/スプリンター・クーペのコンパクトなボディに、セリカ/カリーナ1600GT用の1.6リッターDOHCエンジンをブチ込み、オーバーフェンダーで武装した硬派のモデルとして、1972年の登場から30余年を経た今なお、愛好家の熱い支持を受けている。「日本の絶版名車」のような企画に必ずといっていいほど登場する「27レビン/トレノ」のベースとなったのは、それらが誕生する以前のカローラ/スプリンターシリーズの最強モデルだった「クーペ1400SR」。SRとは「スポーツ&ラリー」の略で、カローラ/スプリンター・クーペのボディに、ツインキャブを装着して最高出力95ps/6000rpm、最大トルク12.3kgm/4000rpmを発生する直4OHV1407ccエンジンを搭載したスポーティグレードだった。ちなみにカローラ/スプリンター・クーペには、1400SRと同じエンジンを搭載した「1400SL」というモデルも存在していた。「SL」は「スポーツ&ラクシュリー」の略なのだが、このSLに比べるとSRは装備が簡素で、より硬い足まわりを持った、スパルタンな走り重視のモデルだったのである。
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第49回:『唯一無二』日野コンマース(1960-62)(その4) 2006.9.13 新しいコンセプトのトランスポーターとして、1960年2月に発売された日野コンマース。だがそのセールスははかばかしくなかった。
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第48回:『唯一無二』日野コンマース(1960-62)(その3) 2006.9.13 1959年10月に発表され、東京・晴海で開かれた「第6回全日本自動車ショー(東京モーターショー)」でも注目を集めたコンマースは、翌60年2月に発売された。
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