第53回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その4「謎のスプリンター」〜
2006.11.23 これっきりですカー第53回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その4「謎のスプリンター」〜
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トヨタ・スプリンター1200デラックス/1400ハイデラックス(1970-71)
■カローラからの独立
1970年5月、カローラが初めて迎えたフルモデルチェンジに際して、68年に初代カローラのクーペ版「カローラ・スプリンター」として登場したスプリンターは、新たに「トヨタ・スプリンター」の名を与えられてカローラ・シリーズから独立。同時にカローラ・シリーズにはボディを共有する「カローラ・クーペ」が誕生した。
基本的に同じボディとはいえ、カローラ・セダンとほとんど同じおとなしい顔つきのカローラ・クーペに対して、独自のグリルを持つスプリンターは、よりスポーティで若者向けのムードを放っていた。
バリエーションは、「カローラ・クーペ」「スプリンター」ともに高性能版の「1200SL」とおとなしい「1200デラックス」の2グレード。
エンジンは初代から受け継いだ直4OHV1166ccで、「SL」にはツインキャブを備えて最高出力77ps/6000rpmを発生する3K-B型を搭載。「デラックス」用のシングルキャブユニットはカローラとスプリンターで若干チューンが異なり、カローラ版は68ps/6000rpm(3K型)だが、スプリンター版は圧縮比が高められており73ps/6600rpm(3K-D型)を発生した。
また、前輪ブレーキも双方の「SL」と「スプリンター・デラックス」にはディスクが与えられるのに対して、「カローラ・クーペ・デラックス」ではドラムとなっていた。
つまり外観同様、中身も「スプリンター」のほうがよりスポーティな味付けとなっていたのである。
しかしながら、どういうわけだか「スプリンター1200デラックス」に限って、そのインパネには当時としても時代遅れで地味な印象の、角形(横長)のスピードメーターが鎮座していたのだ。
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■1年ちょっとで消滅
66年の誕生以来、カローラのインパネには円形メーターが埋め込まれていた。国産乗用車のインテリアといえば、ベンチシートにコラムシフト、それに角形メーターが主流だった時代に、カローラのセパレートシート+フロアシフト、円形メーターという組み合わせは、セールスポイントだったスポーティなイメージの演出に大いに貢献していたのだ。
当然ながら2代目カローラもその文法を守っていたのだが、よりによってスポーティなキャラクターを与えた「スプリンター1200デラックス」に、いかなる意図でわざわざ専用の角形メーターを与えたのだろう?
当時は珍しい存在となりつつあった角形メーターを使うことで、スペシャルな雰囲気をアピールしようと考えたのだろうか?
なお、高性能版の「1200SL」は、タコメーターを備える関係からカローラ版と同じ円形メーターだった。
だが、この角形メーターの採用に疑問を抱いたユーザーは少なくなかったようで、間もなく円形メーター仕様も追加設定された。
70年10月、カローラ/スプリンターに「1400シリーズ」が加えられた後も、スプリンターの「1200デラックス」と「1400ハイデラックス」には角形メーター仕様がしぶとく残されており、円形メーター仕様と選択可能となっていた。が、やはり角形メーター仕様は人気薄だったようで、71年8月のマイナーチェンジ以降のカタログでは、跡形もなく消え去っていた。
1年ちょっとの間だけ作られたスプリンターの「角形メーター仕様」。カローラ/スプリンターの歴史において、相当な「珍車」であるに違いない。(この回おわり)(文=田沼 哲/2006年11月)
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田沼 哲
NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。