キャデラックSTS-V(FR/6AT)【試乗記】
大味のなかに光るこだわり 2006.07.04 試乗記 キャデラックSTS-V(FR/6AT) ……977.0万円 キャデラックのミドルサルーンに、スーパーチャージャー付きエンジンと専用チューンされた足まわりを与えたスポーティモデル「STS-V」。日本で馴染みの薄くなった“アメ車”のテイストが、STS-Vにはバリバリ感じられたという。“異文化”に溢れた1台
日本での“アメ車人気”は、正直ちょっとイマイチだ。というか、相変わらず日本で輸入車というと、それは大方ドイツ車を示すという状態が続いているし、そもそも「アメリカでのアメ車も元気がない」のが昨今の状況だから、それもまぁムベナルカナではあるのだが……。
それにしても、小さな国土のなかに名だたる乗用車メーカーを8つも抱え、“クルマ余り”の状況もすでにここ極まれり! という日本に住みながら、それでもあえて“舶来車”に乗る理由は一体どこにあるのか? 改めてそう問われたとき、そこに「異文化と触れ合いたいから」という思いが少しでも湧き上がるのであれば、そんな期待感を満たしてくれる輸入車というのは、実は今の“アメ車”のなかに決して少なくないと思う。
たとえば、「ハマー」の各車などはその最たるもの。日本はもとより、ヨーロッパの各都市でもその姿を意外なほどに見かけるが、そんな人気を博しているのはあれがまさしく「アメリカの文化そのもの」だからだ。洋の東西を問わず、アメリカ大好き! という人には堪らない一品なのだろう。
そして、ハマーほど自己顕示性は強烈でないけれど、それでもやはり、バリバリにアメリカンなテイストを発していると思えたのが、この「キャデラックSTS-V」というモデルだった。
アメ車ならではの大胆さ
デザイン・モチーフはステルス戦闘機か!? と思えるほどに、気持ちよく(?)パキパキしたエクステリアデザインは、同じ“プレミアム”を標榜するものではあってもレクサスなどとは正反対のスタンス。専用バンパーやエアロパーツ類はなんともエグいデザインだし、LEDを縦に並べたリアコンビネーションランプ「クリアテール」も、随分と思い切ったものだ。スポーティなメッシュグリル……なんて代物はこのところのスポーツモデルの定番ではある。とはいえ、メッシュといっても、まるで焼肉網のごとく粗い目のメッシュを使うその大味さ(大胆さ?)は、やはりアメリカ車ならではだ。
一方のインテリアは、そんな外観から予想するほどにはトンでいなかった。
たしかに、ウッドパネルの色調がトーンダウンされたり、アルミ製のアクセントパネルが用いられたりと、スポーツモデルの定番的な化粧が施されてはいる。が、それでもさほど走りのイメージを直接的にアピールしてこないのは、室内の多くの部分を占有するシートのデザインが、ベースとされたオリジナルのSTSから変更されていない点も大きいはずだ。
ちなみに、このモデルを含めキャデラックSTSシリーズは、すべて左ハンドル仕様のみ。日本には右ハンドルが適しているのはいうまでもないが、しかし「右ハンがあれば売れる」というロジックが必ずしも正しくないのは、そんな“いい訳”を聞いて無理矢理右ハン仕様を作った(?)過去何台かのアメ車が証明してもいる事柄。現在のGMにそんな余力がない、というのも現実だろう。それでも、ステアリング・コラムにリーチ調整機能が付いて、ドライビングポジションの自由度が高いのは幸いだ。
巧みなボディコントロールに驚く
「キャデラック史上最強のパワー」を誇るSTS-Vの心臓は、メカニカル・スーパーチャージャー付きの4.4リッターV8。DOHCヘッドを備えるこのユニットは、アメリカ車としては高い6400rpmという回転数で446psの最高出力を叩き出す。ちなみに本国仕様では469hpと発表データがグンと高いのだが、コレは彼の地における騒音規制の緩さが影響してのことだろうか。“Vシリーズ”はSTSよりも先に「CTS-V」が発表されたが、いまだ日本にやってこない。その理由として「日本の騒音規制がクリアできない」(GMジャパン)というから、さもありなん、である。
車重はほとんど2トンに達する、決して軽くはないSTS-Vだが、さすがに加速の余裕度はタップリだ。が同時に、それはあらかじめ想定していたほど刺激度の高い加速感ではなかった。低回転域から太いトルクを生み出す一方、回転の高まりに伴う伸び感は今ひとつという、メカニカル・スーパーチャージャー付きエンジンゆえだろうか。
乗り心地は意外だった。低速域ではサイドウォール補強型ランフラットタイヤ特有の、硬さ感を伴う乗り味の持ち主であるものの、ある程度速度が乗ると予想以上にしなやかで、ばね下の動きが軽快なことにちょっと驚かされた。いわゆる“ボディコントロール”はなかなか巧みで、ここではちょっとアメ車らしからぬ印象を受ける。「アメ車らしからぬ」と言えば、連続するハードな使用にもペダルタッチの悪化を一切示さないタフなブレーキにも感心……と思ったら、採用しているのはブレンボ製だった。
大味と言えば大味。だが、そうしたなかにキラリと光るこだわりの走りを随所にちりばめている。やっぱりアメリカンなSTS-Vなのである。
(文=河村康彦/写真=峰昌宏、高橋信宏/2006年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。









