第79回:日本に残る「氷河の足跡」、木曽駒ヶ岳(その1:氷河地形を見に行く旅)(矢貫隆)
2006.07.07 クルマで登山第79回:日本に残る「氷河の足跡」、木曽駒ヶ岳その1:氷河地形を見に行く旅(矢貫隆)
■「モレーンって何です?」
「シーズン最後の山は、やっぱりアルプスでしょう!」
虚弱体質で精神軟弱な担当編集A君らしくもない、いつになく強気な発言だった。
アルプスって?
「ふふふ、中央アルプスですよ」
空木岳?
「いや、木曽駒ヶ岳です」
ほう〜。標高2956メートルの、あの木曽駒ヶ岳ねぇ。で、何故、木曽駒なの?
「ふふふ、実はあの山、2612メートル地点までロープウェイで上がれるんですよ、ふふふ……、歩かなくていい」
ふふふ、知ってるよ。俺はあの山に去年も登って散々な目にあったから。
というような会話があって、山小屋が閉鎖になる直前の2005年11月初旬(つまり、今から半年以上も前の話なのだ)、我々は木曽駒ヶ岳の山頂を目指して出発したのだった。今回の登山のテーマは「氷河を見に行く」、いや、正確には「氷河地形を見に行く」である。
氷河期の時代、北半球の北部はその影響を強く受けた。寒冷化の進展に伴い植物は南へと大移動し、大陸氷河の発達によって一部の海は海面が100メートル以上も低下し、あるいは氷に閉ざされ、地表はツンドラ化、などなど。
だが、日本では北海道がツンドラ化したことを除けば、本州の高地に小規模な山岳氷河が発達したに過ぎなかった。日本アルプスの山々では、その跡を見ることができる。氷河期が終わり、氷が消えていく過程でできたカールやモレーンといった氷河地形を見ることができるのである。
「中央アルプスでも?」
もちろん。
木曽駒ヶ岳には千畳敷と呼ばれる大カールがあるし、注意してみればモレーンにだって気がつく。
「カール地形は3年前に仙丈岳で見ましたが、モレーンって何です?」
(つづく)
(文=矢貫隆/2006年7月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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