アルファ・ロメオ・アルファ147 2.0 ツインスパーク セレスピード(2ペダル5MT)【試乗記】
1年振りでも好ましく思えた 2005.06.25 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ147 2.0 ツインスパーク セレスピード(2ペダル5MT) ……319万2000円 マイナーチェンジで、ジウジアーロの手になる鋭いフロントマスクを得た「アルファ147」。1年ぶりに試乗した大川悠は、絶妙な楽しさ加減を楽しんだ。人生オーバードライブのときに147
友人や知り合いの間で、最近アルファ147を買った人間が何人かいる。私の友人だから、たいていはそろそろ定年を迎えるようないい歳の大人だ。それまではメルセデス・ベンツの「Eクラス」や「BMW5シリーズ」、あるいは「トヨタ・クラウン」などに乗ってきた彼らがどうしてアルファ、それも147なのかというと、ほとんど理由は共通している。
適度に小さく、格好がイイのにもかかわらず、そうとは見えないのに実は立派な4ドアで、しかもリアシートがたためるから結構実用になる。子供が仕上がって夫婦2人で暮らしているなら、ちょうどいい大きさなのだ。それに、皆、これは訊かなければ言わないし、訊けば白状することなのだが、「最近大きいクルマは苦手でね。狭い道では面倒になったし、真っ直ぐにバックで駐車できなくなっちゃって……」。そういう世代なのである。
昔からクルマは好きだった。でも若い頃は貧乏で、アルファなんて考えられなかった。生活が楽になった“ちょっと前”までは、メルセデスやBMWを選ぶような年齢や立場になっていた。
だから、今もう一度、クルマ好きの生活に戻りたい。でも体力も収入も先細りになり、そろそろ人生オーバードライブに入れる時期になっている。
そんな人間にとって147は、結構いい選択なのである。
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思わず「あ、買いたいな」と……。
ひとりで箱根に向かいながら、そんなことを考えていた。147に乗るのは約1年ぶりだと思うけれど、あのときと同じだった。『webCG』スタッフから「マイナーチェンジしたので、乗って原稿を書いてほしい」と依頼されたときは、「ああ、なんだか面倒だな。今さら小さなアルファでもないだろう」と一瞬思う。でも、一度家まで乗って帰り、翌朝2度目に走り出した頃には、「やっぱりアルファっていいな。買ってもいいかな」と心変わりする。
「一度家に持って帰り、一晩置いてから乗る」、この儀式というか段階が重要なのである。実はこれはどんなクルマにも当てはまることで、単なる試乗ではなく、一度仮の日常生活に引き込んでしまうのが大切なのだ。そうすると、より真剣に、しかも自分のこととして、そのクルマを見直すことができる。
で、また1年振りに「買ってもいいか」になった。この1年間の147の変化はごくわずかである。でもそれは、個人的に好ましい変化だった。
中世の騎士のような面構え
2005年4月16日から日本で販売された147は小さな変更を受けた。外観の一部変更、内装の変更、そして2.0TSセレスピードに限ってはサスペンションの改変、こんなところである。
一番わかりやすいのはフロントマスクである。最近のアルファ各車に倣って、ジウジアーロデザインによる新しい家族の顔、つまり吊り目のライトと大きなアンダーグリルが採用された。これは、写真で見た印象よりもいい。従来モデルの独特の表情はとても良かったが、特にテスト車がシルバーだったためか、新しいフロントは、中世の騎士のフェースシールドみたいで、これはこれで意図がはっきりしている。戦闘的に見えるのがいい。
室内ではメーターパネルが一新されて、前よりは仰々しくなく、しかも整理された。真っ黒な下地に真っ白な数字、そしてところどころに入れられたアルファの赤、こういう演出がファンを泣かせる。
内装やシートにはマイクロファイバーの新素材、Alfatexが使われた。これは通気性を備えたスウェード調である。ただし個人的には、どうせ新素材を使うなら思い切ってハイテク感覚を盛り込んで、デザインともども“飛んで”しまうほうがアルファらしいとは思う。
家族を説得しやすくなった乗りごこち
歴史の長いツインスパークの2リッターユニットは変わっていないし、5段シーケンシャルのセレスピードもそのままである。……と、メーカーは言っているが、自動モードで走ると、多少シフトがスムーズになったような気がする。
でもこのギアボックスの場合、大半が意図的にシフトして走るだろう。それもフロアのレバーではなくステアリングのパドルを使うのが大半だと思う。そうやって走るたびに、面倒くさいのか面白いのか自分でもわからなくなってくるのだが、すくなくともパドルはステアリングと一緒に回ってくれないほうが好ましい。
というわけで、この新型で一番良かったのは乗りごこちだった。このモデルに限ってはダンパーストロークを伸ばし、セッティングを変えた「コンフォートサスペンション」が採用されている。これまでは首都高速の継ぎ目や都内の荒れた路面などでは直接的な衝撃が入りやすく、ときどきクルマ全体がドーンッと軽く突き上げられたようなことがあったものだが、新型から、それは大分和らげられた。それだけでも、歳取ってからアルファを買いたいと思った人が、奥様を説得しやすくなったはずだ。
それでも独特の奥が深いハンドリングは充分に楽しめる。ゆっくりしたロールとともに、前輪は勝手なことをしたがることなく、ドライバーがステアリングとスロットルを通じて伝えてくる期待に、素直に挙動で応えてくれる。そうなると、最近腕が落ちたと思っているオトーサンも、「まだまだイケるな!」と気持ちよくだまされる。
なんだか年寄りクルマみたいになってしまったが、もちろん若い人にもお勧めだ。特に、機械をコントロールすることの楽しみや意味を教えてくれるという点で、運転がうまくなりたい女性にも、この147は最適だと思う。
(文=大川悠/写真=峰昌宏/2005年6月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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