アルファロメオ147GTA(6MT)【試乗記】
デバイスの利かせ方 2003.06.24 試乗記 アルファロメオ147GTA(6MT) ……423.0万円 アルファロメオ往年のビッグネーム“GTA”を復活させた「156GTA」に続き、ハッチバック「147」にもGTAが追加された。3ドアボディに3.2リッターV6+6MTを積んだホットハッチに、『webCG』記者が試乗した。
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123.0万円も安い!
2003年5月17日から日本での販売が開始された「147GTA」は、「156GTA」の弟分にあたるスペシャルモデル。「147」のボディに、156GTA譲りの3.2リッターV6と6段MTを詰め込んだ“ホッテストハッチ”である。156GTAのボディは、4ドアセダンとワゴン(欧州のみ)が用意されたが、147GTAは3ドアハッチバックだけ。左ハンドル、6段MTのみの仕様となる。価格は423.0万円。パワートレインなどを共用する156GTAより123.0万円も安いが、5ドアの「147 2.0セレスピード」より125.0万円高い。
サブネームに、“GTA”(A=alleggerita:軽量化)とついてはいるが、V型6気筒が災いして、車重は3ドアの2リッター(5MT)モデルより110kgも重い。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=4200×1765×1430mm。156GTAと同様、前後トレッドの拡大(それぞれ10mm)やエアロパーツの付与により、ノーマルより35mm広く、全長は30mm長い。寸法的には大差ないが、しかし、外観はグっと迫力を増した。
リポーターとしては、リアビューがお気に入り。ボリューム感ある専用設計のリアバンパー、メッシュを張った大きなエアアウトレット、デュアルエグゾーストパイプなど、“スポーティのアイコン”が活きてカッコイイ。フロントマスクはもともと迫力があるためか、エアロバンパーとエアダクトが、控えめな演出をするにとどまった。
ドアを開け、“GTA”と書かれたサイドシルプレートをまたいでシートに座る。ブラックレザーシートを標準装備する156GTAは、気合いを入れて“伊達オトコ”を演出したようなインテリアだったが、グレーのファブリックシートを装着する147GTAはカジュアルな雰囲気だ。インテリアの意匠は147と同じでも、300km/hまで刻まれたスピードメーターや、アルミ削りだしのABCペダルが、スペシャルモデルであることをドライバーにアピールする。デュアルゾーン式オートエアコンをはじめ、BOSE製オーディオ+10スピーカー、カップホルダーなど、快適装備も充実する。
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“シフトダウンバカ”
156GTA譲りの3.2リッターV6DOHCは、「166」に積まれる3リッターV6のストロークを5.4mm延長。吸排気系のリファインや、オイルクーラーの追加、専用ECU採用などのチューンアップを施したエンジンである。オリジンは、1970年代末のアルファ「6」(セイ)という年期の入ったユニットだが、250ps/6200rpmの最高出力と、30.6kgm/4800rpmの最大トルクは、いまだ一線級。6速2000rpmからでも加速できる柔軟性と、欧州の排ガス規制「ユーロ4」をパスする環境性能の持ち主である。
クラッチは軽く、147には十分過ぎるほどトルキーなエンジンのおかげで、アイドリングからでもラクに発進できるし、タウンスピードで走るのも苦にならない。6段MTのトラベルは長いが、シフトフィールはしっかりした節度あるもの。2500rpmあたりでシフトアップしていくと、6速でちょうど100km/hに達する。
……が、アルファV6に乗っているのに、そんな走り方で済むワケがなかった。なにしろこのエンジンは、3500rpm以上、個人的な希望をいうと、5000rpm以上のエグゾーストノートが素晴らしい。だからいきおい、街では低いギアで引っ張って「フオォォォン!」、高速では6から4、もしくは3速までシフトダウンしてから、追い越し車線で「フオォォォン!」……もう病みつき。乗ったら誰でも、至福の一時を味わうための“シフトダウンバカ”になるんじゃないか? ちなみに147GTAは、パワー・トゥ・ウェイトレシオが5.56kg/psと一級のスポーツカー並。0-100km/hを6.3秒で駆け抜け、最高速度は248km/hに達する。だから、調子に乗ると色んな意味で、アブない。
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ちょっと大味だが……
スポーティスペシャルながら、乗り心地がそこそこイイことが、147GTAの美点。締められた専用チューンのダンパーや、225/45ZR17サイズのスポーティタイヤ(ブリヂストンS-02)を履くため、路面の凸凹はよく拾うが、突き上げの鋭さは抑えられている。ボディに比して巨大なエンジンをフロントに積むため、前軸重量910kg、後軸は480kgと、かなりノーズヘビィ。高速道路ではピッチングが出るかと予想していたが、意外なフラットライドでクルージングをこなす。
ハンドリングは、小柄なボディと短いホイールベースが奏功してか、156GTAよりクルマとの一体感が強いと感じた。ロック・トゥ・ロック1.75回転のクイックなステアリングギアは小気味イイし、ブレンボ製4ポッドキャリパー(フロント)が奢られたブレーキは、踏み始めからよく利く。フロントは重いが、ワインディングを流す程度なら、ステアリングホイールを切るだけで即座に向きを変える。とはいえ、ヒラリとロールするようなノーマル147とは違う、太いタイヤを駆使してグイグイ走る“マッチョ系”だ。
「ちょっと大味かなぁ……」と思いながらペースをあげると、すぐにアンダーステアが顔を出した。恥ずかしながら、スピン防止デバイス「VDC」の介入を招くことになったが、アルファの設定はクルマが“ムズムズする感じ”を残してくれるもの。問題は、ドライバーのやる気に“どうデバイスを利かせるか”である。
(文=webCGオオサワ/写真=清水健太/2003年6月)

大澤 俊博
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