スズキMRワゴン T(FF/4AT)/X(FF/4AT)【試乗記】
形だけの女性仕様車はいらない 2006.03.18 試乗記 スズキMRワゴン T(FF/4AT)/X(FF/4AT) ……123万1650円/112万1400円 数ある女性仕様車の中でも、軽乗用車は最も女性ユーザーへの訴求力が必要とされる。スズキは「アルトラパン」ではカバーできなかった、女性向けハイト軽ワゴン市場に「MRワゴン」を持ち込んだ。65%の女性ユーザーに向けて
日本自動車工業会(JAMA)調べでは、軽乗用車は女性ユーザーの比率がおよそ65%になるという。普通自動車にも多くの“女性仕様車”があるが、軽乗用車においてはより効果的な販売が期待できることになる。女性仕様車とはおおざっぱに言えば、外観をかわいくし、女性が喜ぶ便利装備を付与したクルマだ。
その市場に「ホンダ・ライフ」「ダイハツ・ムーヴラテ」に先んじられたスズキが、遅ればせながら投入したモデルは「MRワゴン」。「スタイリッシュな軽ワゴン」がコンセプトだったが、実際はあまり差別化ができていなかったという。今回のフルモデルチェンジをうけ、「ママのためのワゴン」に生まれ変わり、キャラクターを明確にした。
今回のモデルも「ワゴンR」の派生車種という扱いは変わらず、現行ワゴンRと骨格を共用する。
グレードはNA(54ps、6.4kgm)の「G」「X」と、ターボエンジン(60ps、8.5kgm)搭載の「T」、それぞれに4WDとFFが用意される。トランスミッションが4段ATとなるところもワゴンRに準じる。
今回は主にターボモデルの「T」に試乗した。
ママと子供に配慮
「ママ向け」という言葉の通り、カワイイデザインの外観と、ソフトな印象のインテリアが与えられる。
便利機能も充実。助手席座面を跳ね上げて荷物を置ける機能に加え、助手席前に化粧台として使える引き出しが登場したり、果てはドリンクホルダーの手前にペットボトルキャップ置き場(!)があったりと、配慮が細かい。匂いを気にする女性のために、消臭天井&シートも備わる。
子持ちのママに対しては、子供が乗り込みやすいように、リアドアには大きなアームレストを配置し、サイドステップを大型化するなどの処置もされている。後部座席に座る子供に風が届きやすい、インパネ上面から上方に風を送るアッパーベントのエアコンも採用された。
しかし肝心な視点が抜けているようにも思う。それはドライビングポジションに関する装備。シートリフターとチルトステアリングは装備されるものの(G以外)、前後調整できるテレスコピックが付かないのは残念。これは軽自動車に限らず、国産の多くのクルマで採用されないが、体型差に幅のある女性にこそ、ポジションは多様に調整できるべきである。
乗り心地は感心しない
資料に目を通し装備を一通り確認した後、走り出してみる。日常使いが基本の軽自動車だけに、市街地での試乗会である。
ハイトワゴンの例にもれず、視線が高く視界が広いので、取りまわしがしやすい。「ちょっとした買い物」「子供の送り迎え」など、軽自動車の使われ方を考えるとターボエンジンは必要十分の出力。とはいえエンジンの振動や音が大きいところは、女性も気になるだろう。
乗り心地に関しては、良いところを見つけづらい。
基本的にワゴンRから変更点はないという足まわりは、街乗りの速度でもボディの揺れが大きく、シートから腰に伝わるダンピングしきれていない細かい入力も多い。14インチタイヤに、フロントスタビライザーとローダウンサスペンションを装着するターボモデルは走りを意識しているが、それよりも乗り心地にふったほうが良かったと感じた。13インチのNAモデルにも試乗したが、やはりいくぶんソフトな乗り心地になっていた。パワーは劣るものの、オススメするならNAの「X」になる。
ちなみに前述のJAMAデータによると、女性軽乗用車ユーザーは70%超の人がほとんど毎日使うのだという。クルマの中で毎日化粧ができるよりは、乗り心地が良く、運転しやすいクルマが好まれるのではないのだろうか。
|
走ることに優先順位を
果たして、「女性仕様」は快適装備のみであり、走りに関する部分での専用装備はなされていない。これは別にMRワゴンに限ったことではないのだが。女性向けに特別に開発するのはコストが……。という話になるかもしれないが、先のデータを信用すれば、女性ユーザーが多数を占めるわけで、もともと女性向けに開発し、男性モデルを派生車種としてもおかしい話ではないだろう。
1980年代初期に『よろしくメカドック』というマンガがあった。作中、チューナーである主人公は、ライバルショップと女性仕様車対決をする。ドレスアップなどでまとめるライバルに対し、足まわりのチューンやブレーキの強化など、「女性が運転しやすいクルマ」にしあげてきた。
現実に、そういう提案をしてくれるメーカーは出てこないものだろうか。やはりクルマは「走ること」に高い優先順位を置くべきだと思う。
(文=webCG本諏訪裕幸/写真=峰昌宏/2006年3月)

本諏訪 裕幸
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。

































