トヨタ・カムリ Gリミテッドエディション(FF/5AT)/Gディグニスエディション(FF/5AT)【試乗速報】
気持ちよさが足りない 2006.02.08 試乗記 トヨタ・カムリ Gリミテッドエディション(FF/5AT)/Gディグニスエディション(FF/5AT) ……299万400円/345万4500円 国内では地味な存在ながらも、グローバルカーとしては名をはせる「トヨタ・カムリ」がフルモデルチェンジ。トヨタ最上級の新型FFセダンを試す。ちょっと派手に
「旧型ってどんな顔だっけ?」と考え込んでしまうほど日本では地味な存在だった先代の「トヨタ・カムリ」。しかし、世界100カ国以上で販売されるこのグローバルカーは、アメリカだけでも年間40万台のセールスを誇るという超人気モデルだ。そんな、トヨタにとっては重要なカムリがフルモデルチェンジを果たした。
旧型とは対照的に新型のフロントマスクは派手である。ノーズにカタマリ感を持たせたデザインは先日デビューしたベルタとも相通じるイメージ。ただ、申し訳ないがちょっと不細工……あくまで個人的な印象だけど。
4815mmの全長は同じだが、旧型に比べて全幅は25mm広がって1820mmに、全高は20mm下がって1470mmになった。少しワイドアンドローになり、確かに従来よりもシャープなプロポーションである。しかし、カッコがよくても室内が狭くては困る。もちろん、そのあたりはトヨタもわかっていて、ホイールベースを55mm延長しただけで、室内長は260mmも延びている。おかげで前後シート間の距離が30mm増え、後席の足元は十分に余裕があった。そうはいっても、驚くほどのスペースではないし、ラゲッジスペースには83リッターの容量減というしわ寄せはあったが。
シートやダッシュボードの下半分などが比較的明るいカラーでまとめられたインテリアは、センタークラスターを含むT字型の部分が浮かんで見えるのが特徴だ。そしてセンタークラスターには透明感のあるアクリルパネルで彩られている。でも、そのパネルの色が薄いグリーンなので、別な意味でまわりから浮いてしまった。余計な色などつけなくてもよかったのに。
余裕あるエンジン
搭載されるエンジンは、先代から受け継ぐ2.4リッター直列4気筒の2AZ-FEユニット。シリンダーブロックや吸排気系の見直しを図り、従来よりも8psアップの167ps/6000rpmを発揮する。組み合わされるトランスミッションは、前輪駆動が5ATで、4WDが4ATだ。「エスティマ」や「RAV4」の場合、同じ2AZ-FEにはCVTが組み合わされるのとは対照的だが、それはカムリのメインマーケットであるアメリカにおいてCVTの認知度が低いことが影響しているとのことだ。
それはさておき、300kg以上車両重量が不利なエスティマに対しても十分なトルクを発揮する2AZ-FEエンジンだけに、軽量(といっても1500kg以上あるが)のカムリには余裕たっぷりなのは予想どおり。試乗した前輪駆動モデルでは、発進が力強く、街中や高速で流れに乗って走るときでも、アクセルの踏み加減によってレブカウンターの針を2000〜3000rpmに踊らせながら、ゆとりある加速を見せてくれた。
3000rpmを超えたあたりからは4000rpmをピークにさらに力強さを示すのだが、エンジンからのノイズが大きいのと、スムーズな吹け上がりにはほど遠いマナーが玉にキズ。しかし、それにしても実用性の高いエンジンではある。
気になったのは乗り心地。前後ストラットのサスペンションには215/60R16の比較的控えめなサイズのタイヤが組み合わされていたのに、しっとりとした感じがなく、どちらかといえば落ち着きのたりない挙動を示した。とくに高速ではスムーズに見える路面でも小さな上下動を繰り返し、スピードを上げるとさらにその動きは大きさを増し、フラット感が乏しいのだ。
限られたコースでの試乗だったが、詰めの甘さが目立ってしまった新型カムリ。実用的な部分もたくさんあるが、動き出してからの気持ちよさがたりない、というのが正直な印象である。デザインもまたしかり。すべてのセダンがスポーティになる必要はないし、カムリの目指す道もいまのままでいいと思う。だが、スポーティじゃなくても、走りやデザインを気持ちよくすることはできるはずだ。日本人を納得させるには、そのあたりが不可欠だと私は思う。
(文=生方聡/写真=高橋信宏/2006年2月)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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