オペル・スピードスター(5MT)【海外試乗記】

『スパイダーのごとく』 2000.08.30 試乗記 河村 康彦 オペル・スピードスター(5MT) 1999年のジュネーブショーで披露され、話題を呼んだオペル版ロータス・エリーゼことスピードスター。市販開始に先立ち、モータージャーナリスト河村康彦が、フランスはストラスブルクでテストドライブ!


オペル・スピードスター(5MT)【海外試乗記】の画像
(上)
スピードスターのディメンションは、全長×全幅×全高=3790(+55)×1708(+8)×1112(-88)mm。カッコ内はエリーゼと比較して。ホイールベースは、30mm長い2330mm。車重は120kg重い870kg。
(下)
MGFの1.8リッター「K型」ユニットを用いるエリーゼに対し、こちらはオペル自慢のECOTECエンジン。アストラクーペのパワートレインが流用される。147ps/5800rpmの最高出力、20.7kgm/4000rpmの最大トルクを発生する2.2リッター直4DOHC16バルブは、オールアルミ製。乾燥重量わずか138kgである。

(上)スピードスターのディメンションは、全長×全幅×全高=3790(+55)×1708(+8)×1112(-88)mm。カッコ内はエリーゼと比較して。ホイールベースは、30mm長い2330mm。車重は120kg重い870kg。(下)MGFの1.8リッター「K型」ユニットを用いるエリーゼに対し、こちらはオペル自慢のECOTECエンジン。アストラクーペのパワートレインが流用される。147ps/5800rpmの最高出力、20.7kgm/4000rpmの最大トルクを発生する2.2リッター直4DOHC16バルブは、オールアルミ製。乾燥重量わずか138kgである。

日本導入にあたっての難点

オペル社の自動車生産100周年記念という意味が込められた同社初のミドシップカーが、オペル・スピードスターだ。
年間計画生産台数3000台。うち、イギリスとドイツがそれぞれおよそ1000台ずつ。「残りをそれ以外の各国が奪い合うことになる」という。生産は、ロンドン北東約150km、「ヘゼル」にあるロータスの工場で行われる。そう、オペル・スピードスターは、英国のロータスエンジニアリング社との共同開発によるものなのだ。
アルミ製の基本骨格はロータス・エリーゼのそれと同一で、これにオペル製のランニングギア(エンジン+ミッション)と専用デザインの25枚のFRP製パネルを組み合わせたのがアウトライン、ということになる。
前後の「稲妻」エンブレムがなければとてもオペルの作品とは思えないほどアグレッシブなルックスのキャビンは、もちろん、思いきりタイト。アルミ製の骨組みの中に体をスッポリ捻じ込む、という感覚は、やはりエリーゼと同じ印象だ。それでも、オーディオやABS、ドライバーズ・エアバッグなどエリーゼにないアイテムが与えられたのは、スピードスターがオペル・ブランドを名乗るからだろう。ただし、たとえこうしたクルマであってもエアコンが付かないというのは、日本導入にあたっては事実上最大のネックと言わざるを得ないと思うが……。



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アルミ材むき出しのフロアに、薄く、スポーティなレザーシートが奢られる。黒、青、赤、そしてベージュが用意されるという。現地モデルに、エアコンは装備されない。

アルミ材むき出しのフロアに、薄く、スポーティなレザーシートが奢られる。黒、青、赤、そしてベージュが用意されるという。現地モデルに、エアコンは装備されない。

見た目には物足りないが……

アストラクーペから移植された2.2リッター「ECOTC」ユニットは、オペルユニットの例に漏れず低回転域トルクが太く、特に重くもないクラッチを介して、あっけないほど簡単にスタートが切れる。かと言って、回してつまらないエンジンというわけではないから誤解なきよう。3500rpmを越えたあたりから、さらに一段増しのパワーの伸びを感じることができるのだ。ただしピュアなスポーツカーとしては、いかにも実用車風のサウンドが何としても物足りない。
このクルマの走りの最大の特徴は、フットワークのよさ。地を這うように低いボディと、相対的に広いトレッド。そして絶対的に軽い重量のお陰で、スピードスターの車輪はまさにスパイダー(=蜘蛛)のごとく路面をつかんで放さない。175/55R17と、見た目には少々物足りない細いフロントタイヤだが、実はコレが優れた前後グリップバランスを生み出している秘密のひとつのようだ。ちなみに、リアは、225/45R17だ。
意外だったのは、乗り心地が覚悟をしていたよりも遥かにスムーズでこなれたものであったこと。このあたりにも「オペル」のスポーツカーとしての性格付けが与えられているのだろう。

(文=河村康彦)