メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT)【短評(前編)】
“コンパクト”の価値(前編) 2005.11.08 試乗記 メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT) ……654万8850円 新開発のV6を投入して、気筒数&排気量とともにグレードアップをはたした、ベンツのエントリーサルーン「Cクラス」。3リッターV6を積む4WDワゴンのデキやいかに?願わくばこのままの大きさで
やれ小ベンツだの退職者のためのメルセデスだのと、190シリーズからリネームした途端に揶揄されたり一段低く見られたりしてきたCクラス。だが、2代目も後半に入った最近は見違えるように熟成され、このモデルならではと思わせるだけの魅力を備えてきた。
それはズバリ、相対的に小柄なボディの魅力である。BMW3シリーズに代表されるライバルがことごとく肥大化する中、依然として全幅のみ5ナンバー枠をわずかに超える程度のサイズがこの国で扱いやすいのは自明の理だが、それが機械的な洗練や装備/フィニッシュレベルの向上で勇気づけられ、より積極的な価値を生み出しているからだ。そんなCクラスに排気量を増した新エンジンが加わった。テスト車はさらにワゴンの機能性と4WDの安心感を付加、少々高くてもあえてCクラスを選ぼうというオーナーにとっては理想的な1台となるはずだ。
実際、隣にプジョー307ブレークやホンダ・オルティアが収まっている我が家の機械式駐車場では“ベンツ”といえどもそれらと同等かむしろ控えめに見えるのが好ましい。よく切れるステアリングが助けとなって出し入れそのものも楽だ。むろん、この美点は街なかだけのものではない。最初にクルマを受け取ったのは取材の都合上、箱根ターンパイクの途中だったが、それまで乗っていたのが小山のようなSUVだったこともあって気持ちがいいほど引き締まって感じられ、いきなり全開走行に及んでもあたかもライトウェイトスポーツを操るような気安さで走り回ることができた。
実用性と端正な仕上がり
そのぶん、室内スペースが限られるのはやむを得ない。特に前席の居住空間がそうで、縦置きのパワートレーンをカバーするセンターコンソールが膝まで迫っていたり、現代のクルマとしてはドアが比較的近かったりすることにも気づかされる。左ハンドルに限られるため、走行中、道路きわがすぐそばに感じられるのも妙だ。もっとも、BMWと違って重量配分にさほど執着しなかったことが功を奏してか、前56:後44とほどほどのバランスを見せるこのモデルの場合、同じ後輪駆動ベースでも後席やラゲッジルームにはあまりシワ寄せを受けなかったのが幸いだ。リアシートは低めに落とし込まれ、ヘッドクリアランスとレッグルームには充分な余裕があるし、外からは大したことがなさそうに見える“猫背”のリアセクションは、いざテールゲートを開けてみるとなかなかの容量と使いやすさを持つカーゴルームが待ち受けている。
レギュラーサイズのスペアタイアを床下に収め、この点でもランフラットのBMWと好対照をなすCクラスは荷室の広さ自体もさることながら、収納に関するアイデアが豊富で、それでいて乱雑になるのを防ぎ、メルセデスらしい端正な仕上がりを見せている。一時期クォリティの低下が囁かれたメルセデスだが、このところ再び質感が向上、個人的には明るいグレーで統一されたファブリック/人工皮革混成のシートや内装が気に入った。 (後編につづく)
(文=道田宣和(別冊CG編集室)/写真=荒川正幸/2005年11月)
・メルセデス・ベンツ C280 4マティック ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/5AT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017201.html

道田 宣和
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。