第69回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その6)(矢貫隆)
2005.10.28 クルマで登山第69回:花粉症はナゼ発症するのか〜答えは日光に〜(その6)(矢貫隆)
■森と湿原に囲まれた戦場ヶ原
中禅寺湖や華厳の滝、あるいは戦場ヶ原がある奥日光の歴史は、およそ1200年前の奈良時代、下野の国の僧、勝道上人が日光山の開山を志して入山したところから始まっている。
以来、この地は信仰の山として守られてきて、1934年(昭和9年)には日光国立公園に指定された。ちなみに、勝道上人というのは山岳信仰の社寺として現在の輪王寺を建立し日光山繁栄の源をつくった人物であり、今では日本百名山として登山者に人気の男体山に初めて登った人物でもあるらしい。
中禅寺湖畔にそびえる標高2486mの男体山。本当はここに登りたかったのは言うまでもないけど、軟弱編集者A君にその体力はなく、だから戦場ヶ原ハイキングとなった。
しかし、僕は少しもがっかりはしていなかった。何しろ標高約1400mに位置する面積400ヘクタールという広大な湿原とその周辺にはミズナラやらハルニレなどを中心とする落葉広葉樹林帯が広がっていて、読者がこの記事を目にする頃には、ちょうど紅葉が見ごろの季節になっているはずである。しかも湿原内の木道を歩けば数多くの植物群を観察できるのである。運がよければ野生の鹿たちと遭遇することだってあるし、しかも湿原だから、当たり前だが道は平坦で疲れない。
いろは坂を登り切り、中禅寺湖に沿って10分も走らないうちに神戦伝説の地、戦場ヶ原に到着した。
この湿原には、神代の昔、男体山の神と赤城山の神が領地をめぐり争いとなったという伝説がある。前者は大蛇に、後者は大百足に姿を変えて戦ったのだが、結果は男体山の勝利に終わったのだという。そして、その戦いの場となったところから戦場ヶ原という名が付いたというのだ。
戦場ヶ原。森と湿原に囲まれた、ゆっくりのんびり歩いても2時間ほどのハイキングである。(つづく)
(文=矢貫隆/2005年10月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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