アウディA6アバント2.4(CVT)/3.2FSIクワトロ(6AT)/4.2クワトロ(6AT)【試乗記】
まだあった! 「繊細なアウディ」 2005.07.16 試乗記 アウディA6アバント2.4(CVT)/3.2FSIクワトロ(6AT)/4.2クワトロ(6AT) ……674万円/792万円/941万円 セダンから約9か月遅れて、「アウディA6」のワゴン版となる「アバント」が日本に上陸した。先代に比べると大幅にボディが拡大され、ラゲッジ容量も増えたアッパーミドルワゴンの3グレードに試乗した。 拡大 |
拡大 |
目立ち路線に抵抗する(?)リアスタイル
全長4935mm、全幅1855mm。アウディA6アバントのボディサイズだ。日本で正規に販売されるワゴンでは最大になる。しかも新型で採用されたシングルフレームグリルの顔つきは迫力モノで、サイズ以上の存在感がある。アウディといえば、かつてはドイツ車としてはセンシティブかつモデレートなイメージが特徴だったものだが、新しいA6に関しては、メルセデス・ベンツやBMWと同じように、目立つことを重視したデザインにスイッチした感じを受ける。ただアウディ自身は、とどまるところを知らないかのような拡大路線、目立ち路線を、よしとしていないのかもしれない。それを感じたのが、新型A6アバントのリアスタイルだ。
左右のパネルは大きく絞り込まれ、ルーフからリアゲートにつながるラインはなだらかなカーブを描き、とがった部分がない。優雅で控えめに見せようというデザイナーの気持ちが伝わってくる。それは、以前からのアウディのイメージそのままだ。その分、ラゲッジスペースは外から想像するほど広くはない。奥行きはかなりのものだが、床や壁は、けっして大きいとはいえないリアゲートの開口部そのままの位置にある。ただしこれは歴代アバントもそうだったから、伝統を受け継いだという言いかたもできる。
それに仕立てはアウディらしさにあふれている。フロアの左右にはレールがあって、フックやロッドやストラップをそこに固定できる。なによりもアルミ製パーツのていねいな作りや、レールの上をすべるような動きが印象的だ。デキのいい道具に触れたときの満足感を味わうことができる。
良心的なグレード構成
運転席まわりはセダンと同じ。アバントにはセダンと同じように、「2.4」「3.2FSIクワトロ」「4.2クワトロ」の3グレードがあるが、グレードによって仕立てや装備にほとんど差がないのは良心的だ。リアシートは、シートバックだけを6:4分割で折り畳む方式となる。座り心地は、ドイツ車らしからぬまろやかな感触のフロントと比べると、少し硬めだ。しかしクッションやシートバックの傾きは理想的で、折り畳みの犠牲になったような感じはない。
ボディは狭い道ではさすがに大きく感じるが、走り出すと軽快な動きが、それをあまり感じさせない。とくに2.4でその印象が強かった。加速はこれでじゅうぶん。登り坂ではアクセル全開になるが、遅いと感じるほどではない。繊細に吹け上がるV6エンジンのおかげで、高回転まで回してもストレスを感じないし、マルチトロニックと呼ばれるCVTは限られたパワーとトルクを効率よく伝えてくれる。1730kgを2.4リッターで動かしているという事実以上によく走る。
同じV6でも3.2FSIクワトロのエンジンは、緻密さを保ったまま、力強いサウンドになる。ただし加速は、4WDになったことで120kg重くなったことと、トランスミッションがトルコン式の6速ATになるという違いもあって、スペックほどの差はないと感じた。
4.2クワトロは、ドドド……というよき時代のアメリカ車を思わせるサウンドともに、豪快に速度を上げていく。1940kgと重くなったボディを、この音とともに力ずくで引っぱり上げていくフィーリングは、どこかSUVっぽい。アメリカ人の嗜好に合わせたのかもしれないが、アウディのイメージに合っているのはV6、なかでも2.4リッターであると思う。
エアサスもコイルも快適
A6アバントには、セダンにはないアダプティブエアサスペンション(エアサス)が、3.2クワトロにオプション、4.2クワトロに標準で装備される。センターコンソールのダイヤルでコンフォート、オートマチック、ダイナミック、リフトの4モードをセレクトできるのは、A8と同じだ。今回は4.2クワトロでこの足を試した。
コンフォートはかなりソフトだが、それゆえにタイヤの上下動がボヨンボヨンと残ることがあった。オートマチックではそれがなくなり、フラット感が増す。乗り心地も硬すぎず柔らかすぎずで、ちょうどよい。車高が15mm低くなるダイナミックでもガチガチではなく、245/40R18という太く扁平なタイヤからのショックをうまくいなしてくれる。
コイルスプリングの2.4や3.2FSIクワトロの乗り心地もいい。低速でタイヤからのコツコツ感を伝えるのが気になる点で、フラットな姿勢を保ち、上下の動きは大きなクルマらしくゆったりしていて、リラックスできる。とくにタイヤが3.2FSIクワトロの225/50R17から225/55R16にインチダウンされる2.4は、まろやかな乗り味が好印象だった。
アウディ=知的と考えるなら……
ステアリングは最近の他のアウディと同じように、50〜60km/hあたりからねっとりした重さを感じるようになる。切れ味そのものは自然だが、感触は車種によって微妙に異なり、4.2クワトロでダイナミックモードを選ぶと、かなりスパッと切れるようになる。コーナリングの限界は、前輪駆動の2.4でもかなり高い。ただしスピードを上げていくとやはり前輪が悲鳴を上げるし、コーナー中にアクセルを離したとの挙動変化はわりとはっきり出る。その点クワトロの安定感はありがたい。公道ではかなりペースを上げても、切ったとおりに進んでいくだけだ。とくに4.2クワトロでは、245/40R18という太く扁平なタイヤとハイパワー/ビッグトルクを生かした、ねじ伏せるような走りが印象的だった。
3車種すべてに乗ったので、自分なりに「買うならどれにするか」も考えてみた。そうなると、価格のことが頭をよぎる。3.2FSIクワトロは2.4より140万円も高く、4.2クワトロはそれよりさらに115万円上になるからだ。しかしボディサイズは3車共通だし、インテリアの仕立てもほとんど差がない。加速は2.4で充分だし、なによりも繊細でまろやかな走りが心地よい。
クワトロやV8といったメカニズムに魅力を感じる向きもあろうし、ドイツ車の定義では速さこそ正義なのかもしれないが、あの大きなボディが2.4リッターでちゃんと走り、500万円台で買えるのは、知的な感じがする。それはまた、アウディらしいと言い換えることができるものだ。
(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】 2026.2.14 トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.2.11 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。
-
ホンダN-ONE RS(FF/6MT)【試乗記】 2026.2.10 多くのカーマニアが軽自動車で唯一の“ホットハッチ”と支持する「ホンダN-ONE RS」。デビューから5年目に登場した一部改良モデルでは、いかなる改良・改善がおこなわれたのか。開発陣がこだわったというアップデートメニューと、進化・熟成した走りをリポートする。
-
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】 2026.2.9 「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(後編)
2026.2.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ハイブリッドシステムを1.8リッターから2リッターに積み替え、シャシーも専用に鍛え上げたスポーティーモデルだ。後編ではハンドリングなどの印象を聞く。 -
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】
2026.2.14試乗記トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。 -
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。 -
第860回:ブリヂストンの設計基盤技術「エンライトン」を用いて進化 SUV向けタイヤ「アレンザLX200」を試す
2026.2.13エディターから一言ブリヂストンのプレミアムSUV向けコンフォートタイヤ「アレンザLX100」の後継となるのが、2026年2月に発売された「アレンザLX200」。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて開発された最新タイヤの特徴を報告する。 -
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(前編)
2026.2.12あの多田哲哉の自動車放談イメージキャラクターの「デリ丸。」とともに、すっかり人気モノとなった三菱の軽「デリカミニ」。商品力の全体的な底上げが図られた新型のデキについて、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんが語る。 -
ホンダアクセスが手がけた30年前の5代目「プレリュード」に「実効空力」のルーツを見た
2026.2.12デイリーコラムホンダ車の純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスがエアロパーツの開発に取り入れる「実効空力」。そのユニークなコンセプトの起点となった5代目「プレリュード」と最新モデルに乗り、空力パーツの進化や開発アプローチの違いを確かめた。





































