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第148回:衝撃のアウディA6

2019.10.29 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

アウディには「バカ」がない

当連載では、アウディの話題をメインで取り上げたことがない。アウディがいいクルマをつくっているのは間違いのない事実だが、私のココロにはまったく引っかからなかった。

アウディは、強烈なパフォーマンスを持つモデルも多数ラインナップしている。RS系はどれもこれもすさまじい性能だし、サウンドも迫力満点だ。その上には「R8」というスーパースポーツもある。でも、それらを欲しいと思ったことは一度もない。

なぜならば、アウディというブランドは、なにもかもがあまりにも清潔かつおりこうすぎるからだ。

例えば、フェラーリやランボルギーニって、「バカ」じゃないですか。バカがつくってバカが乗るというような。アントニオ猪木は「馬鹿になれ」と言ったが、私は「バカになりたければフェラーリやランボルギーニに乗れ!」と言いたい。

同じドイツ御三家でも、メルセデスやBMWは、アウディに比べればバカである。

メルセデスは、なにがどうなってもやっぱり権威的。威張ってふんぞり返っているような大げさなイメージがあり、どうやってもちょっとバカっぽい。

一方BMWは、エンジンバカであり走りバカ。知的なイメージもあるけれど、BMWにはドライバーを狂わせ、バカにしてしまう何かがある。なにせ駆けぬける歓びですから。

しかし、アウディには「バカ」がない。なにをやってもクールで、バカにならないように一歩引いている。そのスカした感じが心にブレーキをかける。

アウディR8
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筆者の愛車「フェラーリ328GTS」。(写真=池之平昌信)
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筆者の愛車「BMW 320d」。(写真=池之平昌信)
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すさまじく乗り心地がいい

なので、新型「A6」に試乗した時も、まったくなんの期待もなかった。逆に、これほどまでに新旧デザインの見分けが難しいモデルはない!! カーマニアにもわかりまへん! というネガティブな先入観だけはあった。

ところが、走り出して数秒後には、「なんじゃこりゃ~~~~~!!」と叫んでおりました。

こ、こ、この乗り味のすばらしさは何? 一体どーなってんの!?

アウディの乗り味というと、程度の差はあれ、どれもこれも硬派でスポーティー。路面が平滑で速度無制限のアウトバーンならいざ知らず、ジョイントが多く、かつ低速な日本の道路では、ちょっとやせ我慢する必要がある。どれもこれもそんな感じなので、もうアウディは乗らなくてもわかるから乗らなくていーです! くらいに思ってました。「A5スポーツバック」や「A7スポーツバック」もそんな感じでした。

ところが、A6はまるで違った。途方もなくすさまじかった。ちなみに試乗したのは、「A6 55 TFSIクワトロSライン」というモデルで御座いました。

なにがどうすさまじかったかというと、とにかく死ぬほど乗り心地がいいのですよ……。

もうちょっと具体的に書くと、ものすごく堅牢(けんろう)なボディーが、路面から浮かんでいるかのように超絶スムーズに走りつつ、ステアリングには路面情報がバッチリ伝わってくるのです。低速を含めたあらゆる速度域で! 死ぬほど足がしなやかで、突き上げは限りなくゼロ! それでいてみじんもソフトすぎず、コーナリングはシャープでスポーティーで安定感抜群。

完璧すぎやないけ……。

新型A6は、これまで私が乗ったクルマの中で、ナンバーワンに乗り心地がよかった。総合的には「ロールス・ロイス・ファントム」よりも「トヨタ・センチュリー」よりも! まさかアウディA6が……。

新型「アウディA6」の乗り味のすばらしさに感動!
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「アウディA5スポーツバック」と筆者。(写真=池之平昌信)
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「アウディA7スポーツバック」も硬派でスポーティーだったが……。(写真=池之平昌信)
「アウディA7スポーツバック」も硬派でスポーティーだったが……。(写真=池之平昌信)拡大

“いいクルマ”の標本

エンジンは3リッターV6ターボで、特に目立ったパフォーマンスもフィーリングもないけれど、公道では完璧以上の性能を満たしている。この控えめに満足させてくれるところがまた、アウディらしいじゃないか。

試乗車にはオプションの「ドライビングパッケージ」(38万円)が付いていたのも、高評価の要因か。後輪をステアする「ダイナミックオールホイールステアリング」は、この巨体をして、東京・杉並区の狭い住宅街でもクイクイ小回りを利かせつつ、首都高では超絶スタビリティーを披露。なんかもう、出木杉君もここまでくると平伏したくなる。

それでいて目立ったところは皆無なのだから、これが真の貴族ってヤツですか? ほら、本物の貴族はキンキラキンの服なんか着ず、地味で上質な無地のシャツ着てるって言うじゃない。実物に会ったことないけど。A6のデザインも、新旧の見分けすらつかないほど地味に上質なわけなので。

しかし、カーマニアとしては、このA6をどう評価すればいいんだ……。

なにせ、ウルトラ超絶いいクルマだけど、あまりにもいいクルマすぎて、癖がまるでない。まるで“いいクルマ”の標本だ! いや、これで毎日通勤してれば、毎日このスーパーいいクルマ感に癒やされて、おっかさんのように感じてくるのかもしれないが、どこにも癖がなくて控えめですべてが美点な女性がいたとして、果たして恋に落ちるでしょうか? そんな女性に会ったことないですが。

カーマニアとしては、猪木方式でバカを目指し、A6だけは避けたほうがいいんじゃないか……。高くて買えませんけど。

それにしてもA6の乗り味は、本当にすばらしかった。大衝撃。以後、私のベンチマークにさせていただきます。

(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

新型「アウディA6」。筆者が試乗した「A6 55 TFSIクワトロSライン」の価格は1035万円から。
新型「アウディA6」。筆者が試乗した「A6 55 TFSIクワトロSライン」の価格は1035万円から。拡大
新型「アウディA6」のインテリア。
新型「アウディA6」のインテリア。拡大
新型「アウディA6」のリアビュー。
新型「アウディA6」のリアビュー。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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