フィアット・パンダ4×4クライミング(5MT)【ブリーフテスト】
フィアット・パンダ4×4クライミング(5MT) 2005.08.09 試乗記 ……188万8950円 総合評価……★★★★ 2004年7月、フィアットの代表するコンパクトカー「パンダ」がフルモデルチェンジされた。その2代目「パンダ」の4輪駆動モデルに試乗した。
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大した才能
全長3570mm。軽自動車が3395mm、ヴィッツが3750mmだから、そのちょうど中間の全長となるパンダだが、そこから湧き出している存在感はボディサイズをはるかに上回っている。たまたま試乗車が“ドライターコイズ”という鮮やかなスカイブルーを身にまとい、室内に目をやると、これまた鮮やかなイエローとグレーのツートーンのシート。ただ存在するだけで、周囲の空気を心地よいものに変えてしまうパンダは、大した才能の持ち主なのだ。
ビスカスカップリング式のいわゆるスタンバイ4WDとマッド&スノーのタイヤ、そして、高められた車高など、“4×4 Climbing”の名にふさわしい雰囲気づくりがなされているが、一番うれしいのはシンプルなマニュアルギアボックスが装着されることかもしれない。個人的には、前輪駆動でいいからマニュアルギアボックスで、スカイドーム付き/ルーフレール無し(これなら立体駐車場もOK!)モデルがあったら“買い”なんだけどなぁ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1980年の初代デビュー以来親しまれてきた、フィアットを代表するコンパクトカー。2003年のフランクフルトショーで発表された最新型は、欧州で同年9月にリリース、翌年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得して、2004年7月31日にわが国へやってきた。
もともとMPVとして開発された「ジンゴ」をパンダとして発表したため、新型は単なるコンパクトカーでなく、いわゆる“ミニミニバン”的な多様性をウリにする。
全長×全幅×全高=3535×1590×1535mm、ホイールベースは2300mm。兄貴分「プント」よりひとまわり小さいが全高は55mm高く、ここもミニバン的だ。インテリアでは、MPV譲りの広い室内空間、可倒式リアシートによって、206リッターから最大860リッターに拡大できる荷室容量などがジマンだ。
パワートレインは、1.2リッター直4 SOHC(60ps、10.4kgm)に、FFが2ペダル5MT「デュアロジック」の組み合わせ。ラインナップは、ベーシックな「パンダ」と、電動サンルーフなどを付与した「パンダプラス」の2本立て。
2005年3月に、四駆モデル「4×4クライミング」を追加。エンジンはFFモデルと同じ1.2リッター直4だが、トランスミッションは5段MT。4WDはビスカスカプリング式センターデフを装着したもの。外観はプロテクターなどでモディファイされタフネスさをアップ。足まわり、ブレーキなども専用品とし、よりヘビーなシチュエーションでも使えるようにした。
(グレード概要)
先代「フィアット・パンダ」にも設定されていた4輪駆動モデルが「4×4 クライミング」。電動ダブルサンルーフ「スカイドーム」やアルミホイールを装着する上級グレード「4×4 クライミングプラス」も用意される。
ロードクリアランスを160mmに設定し、フィアットによれば、アプローチアングル24度、デパーチャーアングル42度、ランプアングル(突起物乗り越え許容角度)24度。50%以上の勾配率がある坂道を走破できると謳われる。外観もモディファイされ、前後バンパーやサイドパネルに、ブラックプロテクターを施した専用品を採用して、4×4らしいタフさを演出した。
サスペンションも変更され、フロントはFFと同じマクファーソンストラット式ながら、ラフな路面での走行に耐えるよう、ダンパーとコイルスプリングを4×4専用品に換装。リアサスペンションはトーションビーム式から、独立懸架のトレーリングアーム式が採用された。ほかに、ブレーキディスクを 240mm(フロントはベンチレーテッド)に拡大して性能を高めるなど、足まわりはFFと大きく異なる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
明るいグレーのプラスチックがベースで、ドアトリムの一部にイエローのファブリックが施されたインテリアが特徴のパンダ4×4。コンパクトカーにふさわしいこざっぱりした雰囲気と、変に高級感を出そうとしていないところが好印象だ。
ダッシュボードのスイッチ類は一目で機能がわかるシンプルなデザイン。自由自在に向きが変えられるエアベントも楽しい。
前席のドアにはパワーウィンドウが備わるが、後席は手動。リアドアにはイエローのファブリックが配されないなど割り切った部分も多いが、これでいいんだと思わせるのもパンダの才能でもある。
(前席)……★★★
1635mmという全高からも想像できるように、シートポジションもそれ相応に高く、ちょっとしたミニバン気分が味わえる。コンパクトなサイズも手伝って、混雑した都心の道路をすり抜けるには好都合だ。ただ、ドアミラーの視野が狭く、助手席側(右側)の死角が大きいので注意が必要。
シートは外側のイエローの部分がソフトで、それに比べると内側のグレーの部分がやや硬めになっているので、背中のサポートは悪くない。ただ、腰のサポートはもう少しほしい。
(後席)……★★★
前後ともアップライトな姿勢で座らせるために、短い全長の割に後席のレッグスペースは十分確保されている。爪先が前席の下に余裕で入り、自然に足が伸ばすことができるのもうれしい点。頭上のスペースは十分に確保されているが、天井が視界の大部分を占めるためか、開放感はいまひとつだ。
(荷室)……★★
コンパクトカーだなぁと身に染みて感じるのがテールゲートを開いたとき。荷室は奥行きが50cmほどで、正直、もう少し広いと助かるが、ベビーカーくらいは収まりそう。リアシートのシートバックを倒せば奥行きは1m以上になるが、フロアには段差が残ってしまう。室内高に余裕があるので、いざというときでも大きな荷物を呑み込むことができそうだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
最初に乗ったのが箱根の登り坂だったので、場所によってはアクセルペダルを床まで踏み込んでも60km/hが精一杯。1.2リッター自然吸気ユニットの非力さに思わず笑ってしまった。高速道路でも追い越し車線に出るのを躊躇するほどだが、だからといってこのクルマがつまらないかといえばむしろその逆である。
最高出力60ps、最大トルク10.4kgmという、日本の軽自動車に毛が生えたほどのスペックではあるが、マニュアルギアボックスの1速と2速を使い、高いエンジン回転数をキープすれば、街中を痛快に駆け抜けることができる。絶対的なスピードや加速はたかがしれてはいるし、回せばそれなりにエンジンは騒々しいけれど、クルマと一緒に一所懸命走っているという感覚がとても新鮮なのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
背が高く、車高も上がり気味のパンダ4x4だから、一見不安定な印象を受けるが、実際はその反対で、やや硬めのしっかりした乗り心地を示す。高速道路でも法定速度内なら十分フラット。マッド&スノー仕様のタイヤが路面の荒れを伝えることもあるが、これも許せる範囲内だ。ワインディングロードに持ち込むと、コーナーではそれなりにロールは大きめだがグラッと傾く感じはないので不安はない。ただ、フロントに荷重を残してコーナーに入らないと思った以上に外に膨らんでしまうのでご注意を!
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年7月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:4735km
タイヤ:(前)185/65R14(後)同じ(いずれもブリヂストン デューラーH/T
オプション装備:なし
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:283km
使用燃料:35.2リッター
参考燃費:8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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