BMW316ti(5MT)【海外試乗記】
『エントリーモデルを超えて』 2001.04.14 試乗記 BMW316ti(5MT) “お下がり”ではないシャシーを使ったBMWのハッチバックモデルに、自動車ジャーナリストの木村好宏が試乗。インテイクバルブのリフト量が可変式になった「コンパクト」こと316tiはどうなのか? スペインはマラガから報告する。イケブクロ・スターレット
1994年春からBMWがヨーロッパで発売を開始した3シリーズ「コンパクト」は、その時点ですでに1世代前となっていた「E30」シャシーを流用するといった、不思議な急造モデルであった。
それでも、比較的アトラクティブな価格から、バイエルンのプレミアムブランドのエントリーモデルとして、最終モデルがラインを離れた2000年9月までの6年間に、合計40万台が生産された。その数は3シリーズ全体の21%に達し、BMWの屋台骨の一部となったのである。
日本でも「シャシーは古いが廉価」というコンセプトは認められ、BMWジャパン(ビー・エム・ダブリュー株式会社)は、3シリーズの具体的なブレークダウン、つまり販売に占めるコンパクトの割合は発表しないが、少なくとも街中で見かける頻度による推測では、「ロッポンギ・カローラ」とは言わないまでも、「イケブクロ・スターレット」くらい“ビーエム”の普及には役立ったようだ。
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新しい可変バルブタイミング機構
さて、初代発表から6年目にフルモデルチェンジを受けたニューコンパクトのシャシーは、もはや兄貴からの“お下がり”ではない、現行3シリーズ(E46)をベースにしたアップ・トゥ・デートなモデルとなった。それどころかエクステリアデザインは、4ドアセダンとの差別化のために、ヘッドランプはグラスカバーなしの丸型4灯式に、リア・コンビネーションランプには反対に透明なカバーが被せられた。
確かにサルーンとの区別はハッキリしたが、アルファ・スパイダーのようなフロントと、トヨタ・アルテッツァのようなリアのコンビネーションをとるデザインが、果たして商業的に成功するかは疑問である。一方、インテリアはメーターナセルのデザインが変わった程度で大きな変化はない。
サイズも、4ドアセダンからトランク部を209mm切り落としたとは言え、全長は4262mmと、旧モデルより52mm長くなった。
用意されるエンジンは、1.8リッター(115ps)4気筒と、2.5リッター(193ps)ストレート6。日本へは4気筒を搭載したBMW316tiが輸入される。排気量は1.8リッターだが、名前は316なのである。
1.8リッターエンジンには、バルブトロニックという新技術が採用された。これはインテイクバルブのリフト量を機械的にコントロールするシステム。スロットルバタフライを不要にし、流入抵抗を減らすことによって燃費を下げる働きをするという。BMWは、従来の1.8リッターと比較して、約10パーセントの燃費の向上をみた、と主張する。
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スポーティな2ドア版
スペインはマラガで行なわれた試乗会での印象は、当たり前のことだけれど、クルマ全体のデキがやや安っぽかった旧モデルよりずっと良くなっていた。エクステリアだけでなく、インテリアも。
ドライブフィールは、より低くなったサスペンション、レシオが落とされたステアリングギアなどにより、セダンより敏捷でスポーティな印象だ。ウェイトは、リアトランクが切り落とされた一方、ガラス面積の広いハッチのため、サルーンより若干重くなった。とはいえ、操縦性への影響はほとんどなかったし、開口部が広くなったことによるボディ剛性の低下も心配ない。
興ざめなのは、燃費に重点を置いたためか、ややピックアップの鈍い直4ユニット。フライバイワイヤーのセッティングに、もうすこし煮詰めが必要だ。交通の流れが速いヨーロッパで、しかもマニュアルトランスミッションならまだガマンもできるが、日本のストップ&ゴーの多い道でオートマチック車の316tiを駆るとなると、たまらない。
ニュー・コンパクトは、これまでのような単なるエントリーモデルではなく、3シリーズ中のスポーティな2ドアバリエーションとしても、十分に対応出来るモデルに進化していた。あとは、エンジンマネジメントの熟成が待たれる。
日本には、2001年11下旬に、316tiのATモデルが導入される予定だ。日本での価格は発表されていないが、ドイツではおよそ4万マルク(1マルク60円として、240.0万円)と、結構なバーゲンプライスがつけられる。
(文=木村好宏/写真=小宮岩男/2001年3月)

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。
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