日産セレナ20RS(FF)/20RX(FF)【試乗速報】
全部王道 2005.06.17 試乗記 日産セレナ20RS(FF)/20RX(FF) ……322万5800円/312万7950円 各社があの手この手で特色を出そうとするミニバン。フルモデルチェンジした「日産セレナ」は、箱型ミニバンとして正常進化しながら……。
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イイ意味で裏切られた
5ナンバー枠をイッパイに使ったボクシーなスタイルを持つニュー・セレナは、商用貨車の乗用版たるミニバンの王道を行く正常進化を遂げた。外観から、リポーターはコーナリングでグラっとロールしたり、思い通りに曲がらなかったりの、いわゆるミニバンライクな乗り味を想像していたのだが、今度のセレナは、ちょっと違った。
試乗会当日はあいにくの大雨、屋根の下でインテリアを撮影すべく駐車場でUターンを試みて「アレ?」と思った。従来の箱形ミニバン、以前のセレナや先代「ホンダ・ステップワゴン」、または「トヨタ・ノア/ヴォクシー」とは明らかに違う安定感に、外観から想像されるイメージがイイ意味で裏切られたのである。
運転感覚(?)が普通。せいぜい“ちょっと背が高いハッチバック”並みに感じられたのだ。
新型セレナは、「ラフェスタ」と同様、「ルノー・メガーヌ」と同じCプラットフォームを採用。ボディサイズは全長×全幅×全高=4650(+60)×1695(+-0)×1840(+15)mm、ホイールベース=2860mm(+165)。大きく背が高く、つまり不安定になりがちなんだけど……。
エンジンはラフェスタ譲りの2リッター直4、トランスミッションはCVTのみとし、価格は210万円から266万7000円まで。FFのほかに、スタンバイ式の4WDも設定される。試乗したのは、フロントグリルで個性を出した「20RS」と「20RX」、FFの2台だった。
気の利いた“EASY”ぶり
狐につままれたような感じはしたが、限られた試乗時間、とりあえずインテリアの撮影を進めた。新型のコンセプトは、「BIG!EASY!FUN!ボックス」。王道ミニバンとしての広い車内&荷室空間と、多彩で簡単なシートアレンジ、豊富なアメニティがウリなのはイイけれど、“多彩なシートアレンジ”を撮影するのは手間がかるので、アセる。
勢い込んで2列目、3列目をアレンジしてみると、こちらも想像以上にラクチンだった。セカンドシートは前後スライド、シートバックに加え、左側は左右に190mmスライド可能で3列目にアクセスしやすい。操作はちょっと煩雑なトコロもあるが、使っているうちに慣れてしまうレベル。センターコンソールはフロントシートからセカンドシートまでスライドできるし、2列目右側の座面を跳ね上げると下に小物入れ、荷室床下には9インチゴルフバッグが入る収納があるなど、機能性は高い。
オプションではあるが、「わいわいパック」に含まれる前席と3列目をつなぐインターフォン、その名も「インカーホン」も設定。後ろに座る子供に「海がみえるよー!」なんて、パパ、ママが呼びかけることができる、というワケだ。興奮して叫んでしまうパパには好感を持つが、大声で話し続けるのもツラかろう。この装備で、「パパ、普通に聞こえてるよ〜」なんて、話がはずむかもしれない。
サードシートはシートバックを前に倒し、全体を左右に跳ね上げるタイプ。タイヘン重いのが普通だが、セレナは簡単でこれまたラクチンだ。操作はシート下の赤いヒモを引っ張るだけ、跳ね上げをサポートするスプリングが仕込まれており、「よっこらしょ!」と力むことなく、ベルトを天井付近のグリップに引っかけて固定する際も片手で支えることができた。開発スタッフが「女性でもアレンジできると思います」とムネを張る、その言葉どおりの“EASY”ぶり。気が利いている。
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王道を突き進む
手間のかかる撮影を終わらせて試乗すると、第一印象の“普通感”が強まった。新しいセレナのデザインの特徴である、フロントドアがリアへ滑らかに盛り上がる「シュプールライン」は“BIG”の象徴、さらに“EASY”にも貢献している。デザイン的にそれほど目を惹くわけでも、面白くもないけれど、前席が広く明るいだけでなく、見切りがよくて運転しやすいのだ。着座位置は先代の823mmから750mmへと低められたことも、運転感覚に寄与していると思ったが、それでもセダンやハッチバックよりは高い。にもかかわらず、ロール感や安定感は、背の高いボクシーなミニバンに乗っていることを意識させなかった。おしりの下が柔らかい感じ……といったら言い過ぎだが、乗り心地も悪くない。
一方、後席に移れば、2、3列目の着座位置を高く設定した「シアターレイアウト」のおかげで広くて明るいミニバンらしさが満喫できる。まぁ、乗り心地もリアへいくほどよくはなくなるのだけれど、それもミニバンらしい、かな。
大きなボディに加え、グラスエリアをとったせいか車重が1.6トン超とやや重く、2リッターエンジンにパワフルな印象はないけれど、そこはCVT歴(?)の長い日産。上り坂はさすがにがんばり気味になるが、平坦路ならアクセルペダルを踏み込まなくてもよく走る。動力性能うんぬんより、エンジン回転数をあげなくても走れるため、静粛性が高いことや燃費のよさがメリットだろう。
箱系ボディに必要十分なエンジン、アレンジ豊富な3列シートなどなど、王道を突き進むセレナは普通のミニバン。ではあるが、運転するとミニバンらしくないトコロが、従来のボクシーなミニバンと、ちょっと違う。ミニバンとしてのみならず、クルマとしても王道の進化を遂げたと思う。
(文=webCGオオサワ/写真=荒川正幸/2005年6月)

大澤 俊博
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