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【スペック】全長×全幅×全高=4620×1805×1425mm/ホイールベース=2760mm/車重=1650kg/駆動方式=FR/4リッターV8DOHC32バルブ(420ps/8300rpm、40.8kgm/3900rpm)/価格=1213万円(テスト車=1218万1000円/USBオーディオインターフェイス=5万1000円)

BMW M3クーペ コンペティション(FR/7AT)【試乗記】

史上最良のM3 2011.04.25 試乗記 下野 康史 BMW M3クーペ コンペティション(FR/7AT)
……1218万1000円

BMWのハイパフォーマンスモデル「M3クーペ」に新グレードが登場。“競争”の名を冠する、スペシャルバージョンの実力を確かめた。
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ナットクの1213万円

1985年に初登場した「BMW M3」の25周年を祝うモデルが“コンペティション”である。デビューから四半世紀、M社が手がけた“特別な3シリーズ”は、 E30から現行のE90系まで4世代を数える。エンジンは2.3リッター4気筒から6気筒を経て、4リッターV8に進化した。

初代M3ではガチンコ・ライバルだった「メルセデス190E 2.3-16」や「2.5-16」は1代限りの190シリーズとともにとっくに姿を消している。“流行り”に目ざといようでいて、BMWは継続する力も 大したものなのだ。もちろんそれだけM3がアツく支持されてきたということだが。

コンペティションは、M3クーペに新たなパッケージオプションを加えたモデルである。その内容は、1インチ・アップの19インチアルミホイール、カーボン製のトランクスポイラーやドアミラーカバー。内装にもカーボンパーツがおごられる。
パワーユニット関係に変更はないが、EDC(電子制御ダンパー)やDSC(スタビリティコントロール)には専用セッティングが施される。ボディ色はマットブラックのホイールを引き立たせる鮮やかなファイヤーオレンジのみ。変速機は6段MTと7段M DCT(Mダブル・クラッチ・トランスミッション)どちらも選択可能で、M DCTは50万円高。ノーマルM3との差、つまりコンペティションの“お代”は、プラス145万円になる。

試乗したのはM DCT付き。1213万円といえば、「ポルシェ911カレラ」のPDK(1267万円)が射程に入る価格だが、走り出すなりナットクした。これは史上最良のM3である。

「ファイヤーオレンジ」の専用ボディカラーが、ノーマルM3クーペにも備わる黒いカーボンルーフを一層際立たせる。
「ファイヤーオレンジ」の専用ボディカラーが、ノーマルM3クーペにも備わる黒いカーボンルーフを一層際立たせる。 拡大
ミラーカバーもカーボン仕様になるのが、“スペシャル版M3”の証し。
ミラーカバーもカーボン仕様になるのが、“スペシャル版M3”の証し。 拡大
19インチのアロイホイールは専用品。ベースとなる「M3」にオプション設定される19インチよりも、さらにワイド化されている。
19インチのアロイホイールは専用品。ベースとなる「M3」にオプション設定される19インチよりも、さらにワイド化されている。 拡大
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洗練の極み

コンペティションという名前から、よりレーシングライクな味つけを想像していたら、見事に裏切られた。このクルマは、スポーツプレミアム性を高めた現行M3をさらにその方向性で磨きあげた“M3のなかのM3”である。3.2リッター直6の先代M3から切り替わった直後は、ややプレミアム指向にオーバーシュートしたやに思えたが、ここまで極めれば、マイリマシタという感じだ。

走り出してまず気づいたのは、19インチ化の効果か、“バネ下“がいっそう軽く感じられるようになったことだ。ノーマルよりさらに赤身の筋肉が増しているのに、もともとよかった乗り心地もさらに向上している。すばらしい脚だ。

行きつけのワインディングロードで可能な限り速く走ってみたが、EDCやDSCの専用セッティングを感じることはできなかった。ただ、相変わらずの感動詞は「二駆でいいんじゃん!」だ。
BMWの“車是”でもあるイーブンな前後重量配分のせいか、ノーズは軽い。わりと最近、同じところで乗った「日産GT-R」を思い出してあらためて感心したのは、タダのFRでこれほどのトラクションと操縦安定性が実現できるのかということである。

7段のM DCTも、GT-Rの6段ツインクラッチ式変速機とは好対照だ。レーシーな変速音やショックを隠しきろうとしないGT-Rに対して、M3は見事に洗練されている。ガチャガチャしたメカメカしさとはいっさい無縁。シフトダウン時の自動ブリッピングも控えめで、一段落としくらいではエンジン音も高まらない。それでいて、トルコン式ATにはないスポーティなダイレクト感はちゃんとある。

インテリアの様子。インストゥルメントパネルにもカーボンパネルがあしらわれる。
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オートマチックドライブを可能とする7段M DCTの操作レバー。MTのシフトレバーに似た形状をもつ。
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リアシートは60:40の分割可倒式。その中央にはスキーホールがあり、長尺物の積載にも対応する。
(画像をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
リアシートは60:40の分割可倒式。その中央にはスキーホールがあり、長尺物の積載にも対応する。
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デパートからサーキットまで

420psの出力などを含めて、4リッターV8に変更はない、はずなのだが、コンペティションは今まで乗ったどのE90型M3よりもさらに好印象だった。
これまではアメリカンV8的な「ズロロロ……」したビートがあり、それがM3っぽくなくて気にくわなかったが、今回は感じなかった。8000rpm以上まで回せば回すほどコンパクト感が増すシビれるV8だ。撮影でちょっと移動するとき、クルマのそばにいると、フト回転が上がったときなどにグランプリ・バイクみたいな乾いたエンジン音が漏れる。そういうのもシビれる。

M3にもアイドリングストップ機構が標準装備されるようになった。でも、これはまだ改良の余地ありだ。発進の再始動時にいちいち“プルルル”くらいのタイムラグを伴う。0-100km/h=4.8秒のM3ともあろうものが、スタートでこんなにつまずいてはいけない。そのくせ「デフォルトでオン」という自信家だが、エンジンをかけるたびにぼくはさっさとキャンセルボタンを押した。

その1点を除くと、M3コンペティションは 非の打ちどころのないクルマである。週末、都心のデパートに寄ってから、郊外のサーキットへ駆けつけてスポーツ走行が楽しめる。ポルシェ911を脅かすほど速いのに、4人がゆったり座れて荷物も積める。
コンペティションというからワイルドなサーキット仕立てかと思ったら、さにあらず。美しい超高性能を持つハコのスポーツカーというキャラクターに、コンペティションの特別装備がさらに磨きをかけている。最大の欠点といえば、オレンジのクーペしかないということだろうか。

(文=下野康史/写真=郡大二郎)

ボンネットの下におさまる、4リッターV8ユニット。スペックそのものは、ノーマルの「M3」と変わらない。
ボンネットの下におさまる、4リッターV8ユニット。スペックそのものは、ノーマルの「M3」と変わらない。 拡大
「コンペティション」の車型は2ドアクーペのみで、4ドア版は用意されない。乗車時には、やや遠くにあるシートベルトをアーム(写真)が手繰り寄せてくれる。ドア内張りのカーボンパネルにも注目。
「コンペティション」の車型は2ドアクーペのみで、4ドア版は用意されない。乗車時には、やや遠くにあるシートベルトをアーム(写真)が手繰り寄せてくれる。ドア内張りのカーボンパネルにも注目。 拡大
リアシートの様子。乗車定員は4名となる。なお、フロントシートにはシートヒーターが標準で備わる。
リアシートの様子。乗車定員は4名となる。なお、フロントシートにはシートヒーターが標準で備わる。 拡大
 
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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