ボルボ S60 2.4 Sport Edition(5AT)【試乗記】
“珍寺”“街”“大自然” 2005.06.06 試乗記 ボルボ S60 2.4 Sport Edition(5AT) ボルボの特別仕様車「S60 2.4 Sport Edition(スポーツエディション)」のプレス向け試乗会が大分県で開催。スポーティな装いのミドルサルーンで訪れたのは……。
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「狼の皮を被った羊」
「ぜひココを見てきてほしいんだよ。癒されるぜぇ〜!」
神社仏閣マニアで仏像を愛するオトコ『NAVI』鈴木真人が、出張前夜、リポーターに大分県の“素晴らしいロケーション”を教えてくれた。
−−どんなトコロなんです? 歴史的に重要とか。
「日本“珍寺(チンデラ)”界じゃ有名なスポットだよ」
−−チンデラ?
「試乗会基点の別府市からも近いし、行ってみてよ〜」
……まぁ、とりあえず行ってみますよ。
「写真撮ってきてね、写真! 仏像もイッパイあるから」
で、訪れたのがTOP写真。クルマは「ボルボS60」に設定された特別仕様車「S60 2.4 Sport Edition」である。
BMWが新型「3シリーズ」、アウディがニュー「A4」、プジョーは「407」をリリースし、輸入車ミドルクラスは混戦模様。ボルボにとって認知度の高いワゴンはおいても、セダンS60の存在感を主張しておきたい……ということで、2.4リッターNAモデルにスポーティな特別仕様車「S60 2.4 Sport Edition」が設定された。ボディキットとアルミホイールによる迫力のルックスと、スポーツサスペンション+大径ディスクブレーキで足まわりを硬めたモデルである。ボルボスタッフいわく「狼の皮を被った羊」だ。
インテリアにはアルミパネルや、トップグレード「T-5 Sport」と同じスポーツレザーシートを装着。足まわりにスポーツサスペンションや、大径ディスクブレーキなど、合計170万円ぶんのオプションを装着したうえで、価格はベース車より40万円高の485万円。“ヒトとは違う個性的なモデルを求めるユーザー”に、200台限定で販売される。
ちなみに、2005年モデルのS60は、デビュー以来最大規模を謳うマイナーチェンジが施され、フロントマスクの“彫り”が深くなったほか、インテリアではドアハンドルやアームレストを新デザインとするなどして質感が高められた。
ボルボにあるまじき威圧感
NAVI鈴木の推薦スポットを目指して、大川悠編集顧問のドライブでローカルなワインディングロードを行く。道は狭く、路面もやや荒れぎみだが、スポーツエディションは意外に乗り心地がイイ。“スポーツサス”“大径タイヤ”装着車にありがちな突き上げ感はそれほどでもなく、適度に締まった感触はパセンジャーシートでも頼もしい印象である。スポーツエディションは「T-5」用のキャリパーと、「R」シリーズに次ぐ316mm径のディスクを備え、ステアリングホイールを握る大川はその効きとフィールにゴキゲンだ。
20分ほど走り、別府から10kmほど山間に入った静かな町、挾間(はさま)町にある目的地はあった。珍寺マニア垂涎、巨大な“合掌門”陽光に煌めく「善徳院」である。
情報によると、2005年初頭は売りに出されていたため立ち入り禁止だったというが、買い手がついたのか中に入ることができた。菩薩やら観音様に混じって、なぜか龍の置物が鎮座し、いずれも妙にピカピカ輝いているのが絶妙にチープ。寺院の奥には、1カ所で88カ所霊場巡りができるオリエンテーリング(?)施設を完備する。謎のコンセプトをもつお寺、鳥の声しか聞こえない山間で仏像に囲まれ、リポーターのココロは……まったく癒されない。不気味だ。
記念撮影(?)をしながら改めてクルマを眺めると、エアロパーツによって塊感が強まったスポーツエディションは、けっこうカッコイイ。控えめなボルボのキャラクターとは一線を画す威圧的な装いは新鮮だし、合掌門をバックにしても存在感では負けてない。
「オオサワくん、コレ、ボルボのイメージとしてはどうなの?」
とカメラマンの荒川さん。それは置いてくださいよ……。
モーゼのごとく
さすがにチンデラだけでは大分にきた甲斐もないので、旧い街並みを残す臼杵に向かった。かつては城下町で、1871年に廃藩置県により臼杵県に変更、その後大分県に統一された“由緒正しい”トコロである。石畳と塗り壁をバックにしたほうが、スポーティなボルボは絵になる。カメラマンも(編集としても)一安心か、しきりにシャッターを切る。
さらに、大分県では有名なワインディングロード「やまなみハイウェイ」を通って阿蘇くじゅう国立公園へ足をのばした。中低速コーナーが連続する山道に2.4リッターNAのパワーは、飛ばすにはちょっと物足りないが、低回転からトルキーなエンジンのおかげで流すにはちょうどよく、景色を味わう余裕が持てる。むしろ、スポーティな足まわりと強化されたブレーキの安心感が際だち、適度なペースを保って右に左のコーナリングを攻めるでなく、楽しむことができた。速度をムダに殺さず、しかしむやみに飛ばさない、「シブい楽しみ方だなぁ」と、ひとり悦にいる。
ワインディングを走ってしばらく、目の前に突然、これぞ“素晴らしいロケーション”が開けた。九州のほぼ中央に位置する、阿蘇くじゅう国立公園の長者原(ちょうじゃばる)。新緑に色づいた山々の彼方に、モクっと上がる噴煙が見える。
ホテルへの帰路に高速道路を流していたら、前を行くクルマがみな道を譲ってくれる。大分県は交通マナーがイイんですねぇとつぶやくと、大川が笑った。
「そりゃ違うな」
−−え? ヒドい運転、してないですよね?
「そうじゃなくて、このクルマが怖いんだよ」
なるほど。
品行方正な運転でも、まるでモーゼのごとく道が開けるスポーツエディションは、まさに狼の皮を被った羊。ただ、狼の皮も中身の羊も、完成度が高かった。
(文=webCGオオサワ/写真=荒川正幸/2005年6月)

大澤 俊博
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