マツダ・デミオ SPORT (FF/5MT)【試乗記】
街中ではホット気分 2005.06.02 試乗記 マツダ・デミオ SPORT (FF/5MT) ……191万7825円 2005年5月にマイナーチェンジをうけた「マツダ・デミオ」。兄貴分「アクセラ」風の顔になった1.5リッターモデルのスポーティグレードに、自動車ジャーナリストの生方聡が乗った。“オンナ”だけのデミオじゃない
小さくて扱いやすく、見た目もかわいい日本のコンパクトカーは、値段が手頃ということもあって、多くの若い女性が身近に感じる存在である。それだけに、自動車メーカー各社は、あの手この手でこの気まぐれなターゲット層にアプローチするわけだが、度が過ぎると“女性専用モデル”というイメージができあがりかねない。
もちろん本当に女性専用モデルなら構わないが、そんなクルマは滅多になく、ある程度男性の需要もあてにしているはず。私だったら“オンナのクルマ”と聞いただけで購買意欲は急速に萎えてしまうし、そもそも“オンナのクルマ”で過去に成功したモデルがどれだけあっただろうか?
で、本題の「デミオ」である。TVCFやカタログのイメージは、やはり女性を強く意識している。CFに起用される伊東美咲は嫌いじゃないけれど、デミオに乗る自分は想像したくないなぁ……そう思うオトコゴコロをマツダもわかっているようで、“オトコらしいデミオもありますよ”といわんばかりに用意したのが「デミオ SPORT」なのだ。
マイナーチェンジ前にもSPORTというグレードは存在したが、マイナーチェンジ後の新デミオSPORTは主力グレードの「Casual」とは明らかに違う外観を与えることでイメージの差別化を図った。
オトコが買える
前置きが長くなったが、いましばらくご辛抱を。走り出す前に、今回テストしたデミオSPORTについてもう少し説明しておきたい。
デミオSPORTは、「“アグレッシブ”をキーワードにデザインされたエクステリア、ブラックを基調にシルバーで加飾されたインテリアにより、スポーティ且つ質感のあるデザインとしている」(プレスリリースより抜粋)グレード。事実、水平の太いバーが力強いフロントグリルをはじめ、フロント/サイド/リアのエアロパーツや195/45R16タイヤ+6.5J×16のアルミホイール、スモークテールランプが、デミオCasualとは別の印象を与えている。インテリアもブラックのシートやドアトリム、そして、専用のブラックアウトメーターが落ち着いた雰囲気をつくり上げている。これなら大人のオトコからも文句は出ないだろう。
さらに、このデミオSPORTには、ダンパーの減衰力やスタビライザーの剛性をアップした専用チューンドサスペンションが装着されている。搭載するエンジンは1.5リッター直列4気筒DOHCで、最高出力は113ps/6000rpm、最大トルクは14.3kgm/4000rpm。前輪駆動のみの設定で、組み合わされるギアボックスは5段マニュアルと4段オートマチックで、今回は5段マニュアルを選んだ。
なお、デミオには「Casual Aeroactive」というグレードも用意される。SPORTに準じる外観やインテリアを持つが、エンジンは1.3リッターで、サスペンションもノーマル。まあこれも、オトコが選べるちょっとスポーティなグレードといえるだろう。
もう少しスパイスが
ということで、デミオSPORTに乗り込み、エンジン始動。やや長いストロークのシフトレバーを1速に入れてクラッチを繋ぎ、スロットルペダルを軽く踏み込むと、想像していたよりも活発にクルマは発進した。エンジンは右足の動きにあわせて即座に反応し、発せられるサウンドも勇ましく、スポーティさを上手く“演出”している。
でもそれが真の実力かというと、そうでもないようだ。エンジンの元気のよさは電子制御スロットルの味付けによるところが大きく、スロットルペダルのストロークのうちはじめの3分の1くらいは威勢がイイものの、それを過ぎると踏み込んでもトルクが湧き出してくる印象は乏しい。また、3000rpmあたりから4000rpm付近でトルクは盛り上がるが、エンジンそのものは高回転を好むタイプではなく、また、高いギアを選ぶと3000rpm以下では物足りなさを覚えてしまう。3000rpm以上に保ち2〜3速で街中を走り回るにはちょうどいいのだが……。
ややハードなサスペンションに16インチタイヤを組み合わせたデミオSPORTは、やや硬めの乗り心地を示すが、ゴツゴツした印象やバネ下がバタつくことはないから、街乗りでも合格点が与えられる。高速道路では、直進性は高いものの、もう少しフラット感がほしいところだ。一方、箱根のワインディングロードを走るチャンスもあったが、登り坂でやや非力なのはさておき、軽いノーズのおかげで下り坂なら結構軽快なハンドリングを楽しむことができた。
ホットな気分は味わえるが、ホットハッチにはまだまだ遠いデミオSPORT。本格的に楽しむためには、もう少しスパイスを効かせてほしいところである。
(文=生方聡/写真=峰昌宏/2005年6月)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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