BMW 645Ciカブリオレ(6AT)【ブリーフテスト】
BMW 645Ciカブリオレ(6AT) 2004.06.15 試乗記 ……1118万2500円 総合評価……★★★★ BMWのスペシャルティカーに加わったオープンモデル「645Ciカブリオレ」。つくりのよいソフトトップ、洗練されたパワートレインと高い高速性能など、クルマに文句のつけどころはない。しかし、自動車ジャーナリスト金子浩久の心に、ちょっとわだかまりが……。スゴイんだけど……
幌を上げたり下ろしたりして清里を往復したが、高速道路での快適性は抜群だった。様々なハイテク電子制御による走行安定性装置もさることながら、つくりのよい幌によるところが大きかった。「645Ciカブリオレ」の幌は一見すると黒い布製のトップだが、表面には特殊なラバーコーティングが施されているから、風切り音がほとんど発生しない。布地をミクロンのレベルで平滑化したことによって、空気との摩擦音を劇的に減らすことに成功している。同時に、多重構造の幌の内部には、遮音、断熱作用を持った樹脂が充填されているから万全なのだ。
エンジンを含めたドライブトレインの洗練度も非常に高いので、高速走行がまったく苦にならず、清里が近く感じられた。布製の幌でこれだけ静かで快適ならば、最近種類を増している他メーカーのメタルトップのアドバンテージも薄らぐ。
……と言ったそばからナンだが、“軽さ”というソフトトップのアドバンテージはこのクルマの場合は大きくない。幌だけの増加分ではなく、オープンモデルの常でボディ補強が必要なため、クーペの「645Ci」よりも200kgも重いのだ。ま、重厚で丈夫な幌をもつというドイツ製ラクシャリー・カブリオレの伝統をキチンと受け継いでいるのは間違いない。
ほぼクーペ並みといってよい快適性と耐候性を備えた645Ciカブリオレはとても贅沢なクルマだ。大人がラクに4人乗れ、速く、快適。このクルマにできないことは何もないように見える。たぶん、実際そうだろう。でも、クルマ好きをシビレさせる何かが足りないような気がするのだ。山盛りのハイテクをはじめとする、クルマの部分部分はどれもハイクオリティで申し分ないのだが、1台のクルマとしてまとまった場合のインパクトに欠けるというか、愛嬌が足りないというか……。スゴいんだけど、スゴさがリクツ抜きでわかりやすく伝わってこない。ドアポケットにいつも取り扱い説明書を差し込んでおかないと、いいクルマを買ったのに不安な感じがしてきそうだ。清里からの帰り道、運転しながらその理由がなにかずっと考えていたのだが、優秀な機能が眼に付くばかりで、けっきょく最後までわからなかった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年のフランクフルトショーでデビューした大型クーペが「6シリーズ」。クリス・バングルのディレクションのもとデザインされたスタイリングが斬新。ボディは、「アルミ」「スティール」「樹脂」を混在させた「インテリジェント・ライトウェイト・テクノロジー」を採用。車重の増加を最小限に抑えた。
エンジンは、当面、4.4リッターV8のみ。吸排気両バルブを可変化した「ダブルVANOS」を搭載。シリンダーへの混合気流入量を、バルブ開度でコントロールするバルブトロニックエンジンである。トランスミッションは、6AT、2ペダルMTたる「6段SMG」、コンベンショナルな6MTが用意されるが、最後の仕様は日本には入らない。
2004年のデトロイトショーで、コンバーチブルモデル「カブリオレ」が加わった。
(グレード概要)
6シリーズの日本への導入は、クーペが03年10月25日から先行予約開始、カブリオレは翌04年2月1日に発売された。いずれも、左/右ハンドルを選べる。ハイエンドクーペだけに、日本仕様は素のままでフル装備に近い。「ランフラットタイヤ」「大型ガラスサンルーフ」「パークディスタンスコントロール」「DVDナビゲーションシステム」「6連奏CDチェンジャー」などを標準で備える。夜間、カーブでも進行方向を照らす「アダプティブヘッドライト」ほか、現代のエクスクルーシブカーらしく「ノンスモーカーパッケージ」もオプションリストに載る。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「7シリーズ」「5シリーズ」と続く最近のBMWのインテリア意匠に従うインパネは、視覚的に優れ、機能的で使いやすい。議論の対象になる「iDrive」を、私は大いに認める。もし、「iDrive」を用いなければ、ただでさえすくなくないスイッチ類が膨大な個数を数えることになってしまうからだ。「iDrive」を“機能と操作を集約しすぎ”と嫌い、部分的にアナログのスイッチ類に戻したとしても、きっと「アウディA8」の「MMC」ぐらいの満艦飾になってしまうだろう。ならば、なおさら645Ciカブリオレのようなスポーティなラクシャリーカブリオレはシンプルにいきたいと思う。
(前席)……★★★★★
揉み革の色艶、肌触りが素晴らしい。チョイスが6種類も用意されているのも頼もしい。こういう贅沢なクルマを買うときは、シート革も贅沢に選びたい。BMWは、そこをちゃんとわかっている。それが「ヨーロッパの自動車文化」というものだろう。
シートは大ぶりで、各方向のサポートも十分ある。電動調整の幅も広く、様々なポジションを取れる。ベストポジションといってもそれはひとつだけではなく、シティドライブ、高速走行、ワインディングロードと、いろいろなシチュエーションごとのベストポジションを見付けることができることを教わった。最近のコンバーチブルにありがちな、太く、傾斜の強いAピラーが視界を遮ることもない。前席の居住空間に余裕があるので、乗り降りの際に窓枠の角で頭をブツケそうになることもなかった。
(後席)……★★★
クーペボディだが、大人ふたりが腰かけるのに十分な空間が確保されている。だが、シート座面が大きく窪み、背もたれが直立に近い形状なので、リラックスできるわけではないのはちょっと残念。「2プラス2」と「フル4シーター」の中間の「2プラス4分の3シーター」とでもいった感じ。前席が前方に簡単にスライドする「コンフォート・エントリー」が、後席への乗り降りを助けてくれる。
(荷室)……★
スペースは、ミニマム。収納された幌が、荷室スペースに大きく張り出してきているからだ。幌を上げているときは、収納用の「バリアブル・ソフトトップ・ボックス」を荷室上部に畳むことができるが、そうしても天地寸法は浅く、奥行きも短い。様々な張り出しも大きいので、大きな荷物は諦めなければならないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
4.4リッターV8エンジンは、トルクたっぷりで1940kgもの重量級ボディを軽々と加速させる。6段ATは、シーケンシャルシフトが可能な「ステップトロニック」付きだが、ギアチェンジはシフターのみ。ハンドル上で操作はできない。変速はとてもスムーズ。
興味深いのは、シフトレバー脇の「SPORT」スイッチだ。単なるシフトアップタイミング・コントロールではなく、このスイッチを押すことによって、エンジンレスポンスやパワーステアリングのアシストまでスポーティな演出が施される。これは、「DDC(ドライビング・ダイナミック・コントロール)」と呼ばれるエンジンマネージメントシステム。謳い文句通り、スロットルレスポンスは鋭くなり、それによって変速も頻繁に行われるようになった。パワーステアリングのアシスト変化を体感することまではできなかったが、あらゆるところがスムーズでおっとり型だった645Ciカブリオレのアドレナリンがすこし沸き立った。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
コーナリング中のロールを補正する「DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)」の効きは明瞭。大きく重いボディが、キビキビと向きを変えていく。また、速度や走行状況に応じて、ギアレシオとパワーアシスト量を自動制御する「アクティブ・ステアリング」も、ありがた味が大きい。低速時は、オーソドックスなクルマよりも切れ過ぎて戸惑うが、すぐに慣れる。それらのハイテクを除外して考えても、ハンドリングはどこまでも安定していながら、ステアリングホイールを通じて路面とクルマの挙動をよく伝えてくれる。ただし、乗り心地にはすこし難がある。履いているランフラットタイヤが、首都高速の進行方向と直角の繋ぎ目や鋭い段差などを通過すると、ハーシュネスとショックをもたらすからだ。
(写真=峰昌宏)
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【テストデータ
報告者:金子浩久
テスト日:2004年4月6日-10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:4785km
タイヤ:(前)245/45R18(後)275/40R18
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(4):高速道路(4)山岳路(2)
テスト距離:471.7km
使用燃料:64.3リッター
参考燃費:7.3km/リッター

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