日産フーガ250GT(FR/5AT)【試乗記】
旧来の日産でも、ドイツ車の亜流でもない 2005.03.01 試乗記 日産フーガ250GT(FR/5AT) ……389万5500円 19インチホイールを装着した3.5リッターモデルばかりが話題となっていた日産「フーガ」だが、今回は二玄社編集顧問大川悠が2.5リッターモデルに試乗した。そこには、日産の目指す新しいセダン像がより明確な形で表れていたのである。自分で持つなら250GT
高性能セダンマーケットに対する日産の意欲作「フーガ」は、「セドリック/グロリア」の歴史をあえて捨て、新しいセダン像に挑戦した。それは、結構成功しているという。おもしろいのは、狙いのとおり、輸入車ユーザーも含めた新しい顧客もかなり開拓した一方で、メーカーが予想した以上に従来のセドリック/グロリアからの買い換えも多いということだ。メーカーが考えているよりも早く、実際のマーケットのほうがどんどん変化し、ユーザーの意識も変容しているのである。
フーガは主として最高性能版の「350GT」について多く語られているが、今回は小さなエンジン、2.5リッターのV6を載せた「250GT」を借り出してみた。19インチタイヤをうまく消化した350GTのスポーツパッケージも評価できるものだったが、今回2.5リッターモデルに乗って、自分で持つならこのくらいのモデルがちょうどいいのじゃないかと、それなりに見直した。
遊びすぎたデザイナー
外観、インテリアともにスタイリングはかなり意欲的である。最近の日産デザインは、中小型車はプロダクトデザイン的な味わいを強め、ややエキゾティックなイメージを出している反面で、中大型車は力感というか存在感を強めようとしている。特にフーガやシーマはアメリカにおいてインフィニティブランドとしても売られるために、表現が比較的強い。
ビッグキャビンを強調したプロポーションを持つフーガの場合、ヘッドランプやテールランプの意匠、19インチタイヤ用ホイールデザインなどは、ちょっと力みすぎて洗練度に欠ける嫌いがある。もっともここまで思い切らなければ、新しい日産サルーンの新しいイメージが作れなかったのだろう。
インテリアは評判がいいようだが、リポーターはあまり好まない。ティアナぐらいまではいいが、このフーガ系はちょっとデザインボキャブラリーが多すぎるし、素材や色の組み合わせが煩雑である。今回の試乗車は木目調フィニッシャーだったが、せっかくインテリアにも新しいアプローチを試したのだから、旧来の素材感に頼っていないピアノ調のフィニッシャーのほうが潔い。それに金環食からヒントを得たというメーター回りのオレンジの照明(消せるのは知っている)、コンソールの上で天井に向いているスイッチ類や、ドライバーがかがまないと見えないように垂直壁上についた妙にアナクロな時計など、デザイナーが遊びすぎだと感じた。
好ましい2.5リッターユニット
この250GTで一番好ましく思えたのはエンジンである。210ps、27.0kgmと3.5リッターの280psと37.0kgmに比べるなら控えめで、スポーティサルーンと呼ぶのははばかられるが、回転感覚がいい。3.5リッターよりも気持ちがいいフィールを高回転まで保ち続けるし、中低回転域のトルクも1.6トンのドンガラには充分なだけある。そのトルクに対応してファイナルはややローギアードになっているが、5ATの応答もいいから、その気になれば結構活発に走れる。
ステアリングはかなりクイックだし、軽いノーズは比較的素直に動くが、ステアリングをごくわずか切った部分にほんの少し曖昧な不感帯があるので、最初は少し戸惑う。乗りごこちはリファインされているというよりは、どっしりした感じである。トヨタのクルマのような静けさもスムーズネスもないが、きちんとしたストロークとダンピングで、ボディ全体をしっかりと受け止めて走る。
19インチタイヤを履いた3.5のスポーツパッケージは、それなりに痛快なサルーンだったのに対して、この17インチ版2.5リッターモデルはそれほど強く自己主張しない。でも旧来の日産でもドイツ車の亜流でもない、新しい日本のサルーンとして、もっとも親しみやすいモデルだろう。
(文=大川悠/写真=高橋信宏/2005年3月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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