ボルボXC70(5AT)【海外試乗記】
ボルボ・フォー・ヘビーデューティ・ライフ 2005.02.14 試乗記 ボルボXC70(5AT) 「V70」のオフロード仕様としてスタートした「XC70」だが、本格SUVの「XC90」が登場して存在意義は薄れたかに思える。しかし、メキシコで2005年モデルに試乗した自動車ジャーナリストの笹目二朗は、そのオフロード性能に目を見張った。人気があるから変更は小さい
新型「XC70」の国際プレス試乗会は、「パリダカ」などと並ぶ過酷なオフロードレースとして知られる「バハ1000」の舞台であるメキシコで行われた。
ボルボの他のモデルと同じく、XC70も2005年モデルとしての小変更を受けた。本格SUVの「XC90」の登場後も相変わらず人気は高く、外観上の変更は少ない。「S60」や「V70」の例にならって、前後のランプ関係がクリアレンズとなり、グリル格子は少し大きくワイルドに、スキッドガードはアルミから樹脂になり、リアにも追加。ドアミラーはXC90並みに大型化、ルーフレールが磨きアルミに、樹脂バンパーはストーングレーに色が変わった、といった程度。
内装関連ではトンネルコンソールにカップホルダーが新設され、ハンドグリップは新デザインのアルミ製になり、ダッシュボードの表面処理は質感をより向上させた。なお北米仕様に採用されている、電子制御ダンパーの「Four-C」は、日本仕様では価格上昇を抑える意味で省略される。
悪路で最後に物をいうのは?
XC70は215mmという地上高のおかげもあって、本格的なSUVも顔負けの走破能力を発揮する。じゃXC70は本格的なSUVではないのか、と揚げ足をとられそうだが、スーパーローなどの極端に低いギア比が追加され、キャラメルブロックのタイヤなどに交換すれば、実力としては第一級だろう。しかし、それはXC90に任せておくとしよう。XC70はよりスマートに、オンもオフも楽しめるキャラクターだ。
今回の試乗会はその「XC90 V8」と抱き合わせで行われたのだが、XC90はアリゾナ・フェニックスの都会周辺、XC70はメキシコ・バハが試乗コースとなった。一見逆のほうがよさそうに思われる舞台を選んだボルボの真意は、弱そうな部分でもこれだけ実力がありますよ、ということを我々に示したかったからではないかと思われる。
実際に石や岩の悪路走行、山越えや川渡りを試したり、水路のギャップ、砂の溜まった轍の道などを走破したりしたが、フロアが路面干渉することは一切なかった。1度だけ後ろに突き出た牽引フックがちょっとかすった程度だったのだ。雪道などでもそうだが、四駆の駆動能力の高さもさることながら、最終的にはロードクリアランスが物をいうというわけだ。
俄セールスマンになってしまう
電子制御ダンパーFour-Cの仕事ぶりも鮮やかだった。「スポーツ」にしておけばボディの上下動は巧みに抑えこまれ、路面からの入力の大きさにかかわらず強行突破できる。もちろんそのままでも小入力に対する乗り心地も良い。しかし個人的な好みから言えば「コンフォート」のままにしておいて、ボディの煽りを利用しながら、ブレーキとスロットルの操作で姿勢をフラットに保つ方が、操縦性としては面白かった。こんな場合にこそ左足ブレーキは有効で、瞬時に判断して凸凹に間に合わせるにはスロットルは踏んだままで、適宜ブレーキを加えるのがスムーズに走らせるコツだ。
本番のバハ1000マイルレースを観たことはないが、余興で参戦する気なら、XC70はこのままでも結構いけるのではないかと思ったほどだ。XC70のアシは十分にヘビーデューティであり、XC90ほど重心高は高くないから転倒する可能性も少ないだろう。
久々にオフロードを走ることができて、XC70の能力に感心したが、まだまだ地球上には未開の地で生活する人々がいることも再認識した。そんな地域でこそ、クルマの有難みは光る。信頼性というのが壊れないことを意味するだけなら、それは比較的簡単に満たすことができる。だが、「快適で安全に」という分野まで信頼に足るクルマはそう多くはない。都会の雑踏の中でXC70を見かけても、「この車の実力はねえ……」と今回の旅を思い出し、請われなくともボルボの俄セールスマンになってしまいそうだ。
(文=笹目二朗/写真=ボルボカーズジャパン/2005年2月)

笹目 二朗
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。




















