日産セレナ25ハイウェイスターX(4AT)7人乗り(前編)【試乗記】
現代版サニー(前編) 2004.12.15 試乗記 日産セレナ25ハイウェイスターX(4AT)7人乗り ……294万円 日産セレナで帰省をする、別冊CG編集室の道田宣和。多人数の使用ではないが、老いた母を「介護車」的に乗せるため、ミニバンを選んだ。さて、使い勝手はどうなのか。帰省の主役
連休でも正月休みでも、長い休みになると道を走るクルマの様子が一変する。ふだんは団地の駐車場で惰眠を貪っていたワンボックスやらワゴンやらのピープルムーバーが、大挙して路上に押し寄せるのだ。今ではすっかり夜中や早朝にスタートする習慣が根付いたか、高速道路の混雑もかつてほどではないにせよ、ある程度の渋滞は避けられないところだ。
そんななか、あたりを見まわせば、リアシートで眠り呆ける家族の姿をよそに、こちらと同じ「セレナ」のステアリングを握って欠伸を堪えるオトーサンと目が合ったりする。口には出さないまでもお互い、「お役目ご苦労さま」と言いたくなるような、それでいてわが身の哀れを見るようで目を逸らしたくなるような、ちょっと複雑な心境になる。
「この風景、どこかで見たことがあるな……」と思って記憶を辿ると、そうだ、かつて「日産サニー」が「トヨタ・カローラ」や「ホンダ・シビック」などとともにモータリゼーションの主役を務めていた、あの頃とそっくり同じなのである。実際、同じワンボックスでもセレナは「トヨタ・ノア/ヴォクシー」や「ホンダ・ステップワゴン」らと並んで、このジャンルのなかで最もポピュラーなクルマの1台。「日産エルグランド」や「トヨタ・アルファード」とは微妙に雰囲気が異なり、それらに後ろから迫られると思わず道を譲ったりするから不思議だ。まさに現代版サニーそのものと言えるのではないか?
介護入門
モブ・ノリオ描くところの主人公ほど、自分は(社会的)ワルでもないし、かといって被介護者に対してあれほど真摯でも熱心でもない。そのへんに掃いて捨てるほどいる団塊世代の筆者が、母を伴って郷里まで、往復500km強の旅に出た。80歳代半ばを超えても口だけは達者な彼女だが、最近さすがに足がめっきり弱ってきた。でもって、以前テストの折に「トヨタ・エスティマ」を経験して味をしめたとみえ、「どうせならオマエ、ああいうクルマがいいねえ」ときた。年寄りは勝手なものなのである。
公私混同もいいところだが、この際、ついでに『webCG』のコンテンツが増えればそれもよしと考えることにした。
このクルマを選んだのは、ひとえにワンボックスならではの広さとシートにある。なかでもフルフラットになるシートが決め手だった。若者ならどんな場所でも寝られるが、年寄りとなるとそうもいかず、そもそもネコやイヌと争うように日がな一日横になっているのが常なのだから。だからベッドは必需品。テスト車が後席2列ベンチシートの8人乗りでなく、セカンドシートがセパレート式の7人乗りと判明したときには一瞬臍を噛んだが、結果的に、これはコレで正解だった。
もちろん、定員いっぱいに乗るわけではない。望めば回転対座も可能な2列目の1脚を一番前に寄せ、バックレストを倒して即席ベッドに仕立てられる。一方、寝るのに飽きたら残りのシート(もれなく角度調節式のアームレストが付いている)に移動して、窓外を流れる景色でも眺めていてくれればいい。もっとも移ったら移ったで、そこでもまた、うたた寝するに違いないのだが。
むしろ、キャプテンシートの方が好都合とさえ思った。リアドアからの出入りがベンチシート式に比べて、本人にとっても介護者にとっても楽だからだ。いまやこの種のクルマでオートスライドドアがなかば常識化したことに、つい最近まで迂闊にも知らなかったが、芥川賞作家が主張するように、介護を(家族にとっての)仕事だと見なすなら、働く側にとっても“福利厚生”のひとつやふたつあっていい。オートドアさえあれば、彼女は自分で乗り降りができ、こちらはそのたびに敢えてクルマを半周して開け閉めしたり(ウォークスルーも可能だが、それほど余裕がない)、ドアが確実に閉まったかどうかを気遣う必要もないからだ。スライドドアのリモコンスイッチは、ダッシュボードに付いている。サービスエリアで停まるたび(年寄りはトイレが近い)それを操作する自分は、まるでバスの運転手かと自嘲気味にもなるが、便利なことこの上ない。(後編に続く)
(文=別冊CG編集室道田宣和/写真=峰昌宏・日産自動車/2004年8月)

道田 宣和
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