三菱エクリプススパイダー(4AT)【試乗記】
ある意味「パイクカー」 2004.12.08 試乗記 三菱エクリプススパイダー(4AT) ……315万円 2000年に北米で発売された「エクリプススパイダー」が、ようやく日本に導入されることになった。久々に復活した三菱のオープンモデルに、『NAVI』編集委員の鈴木真人が試乗した。4年遅れの日本上陸
同じ日に試乗した「コルトプラス」がとても洗練された印象のクルマだったから、このクルマの古めかしさが際立って感じられたのかもしれない。外から眺めても、乗り込んでみても、運転してみても、ベタなアメリカンテイストが山盛りである。ホント、久しぶりにこういうクルマに乗った。
三菱もずいぶん幅の広いクルマ作りをするものだ。しかし、コルトプラスが月に2000台を売らなくてはならない量産モデルなのに対して、エクリプススパイダーは2004年と2005年の2年で500台が販売目標という、超ニッチな市場を相手にしたモデルだ。万人向けのクルマではない。まず、それを確認しておこう。
エクリプスが登場したのは、1989年。北米専用モデルとしてデビューしたが、90年に日本で限定販売された。シンプルな面で構成された未来的な印象のエクステリアで、クーペだけのラインナップだった。94年にフルモデルチェンジされ、96年にスパイダーを追加。こちらも限定で販売され、すぐ売り切れた経緯がある。99年に3代目となったエクリプスは、2000年に新しいスパイダーを発表していて、日本への導入は4年遅れとなるわけだ。そして、4年というのは、クルマにとっては結構長い年月である。
アメリカンな気分が横溢
完全な黒に支配された室内は、古典的なアメリカンスポーツの匂いがぷんぷんする。「男」「野性」「マッチョ」と連呼されているようだ。あまりの精悍さに息苦しくなって、急いでソフトトップをおろしてオープンにする。開閉は電動だが、サンバイザーを下げてラッチハンドルを操作するという手順が必要だ。黒い屋根の代わりに青い空を得て、アメリカンスポーツの陽気な面があらわとなった。一気に気分が明るくなる。
手のひらに余る巨大なセレクターをむんずと掴み、Dレンジに入れる。無用なデカさがアメリカなのである。マニュアルゲートがついているが、どうも似つかわしくない。ATはどうせ4段であり、わざわざ手動でシフトを変えようというモチベーションが湧いてこないのだ。
もちろん、低回転からのトルクには何の不満もない。さりとて、変に汗をかこうという気が起こらない。加速するとき、エンジンは野太いサウンドを発して存在を主張する。これも、ひとつの演出なのだ。アメリカンな気分はさらに横溢し、せせこましい考えは霧散していく。だから、路面の悪いところでボディがぐにゃりとするのを感じたり、後ろのほうでなにやらギシギシいうのが聞こえても気にならないのだ。Uターンをしようとしたら側溝に落ちそうになったのには、さすがに閉口したが。
フェラーリより目立つ!?
乗っているあいだ中、「アメリカンスポーツごっこ」をしているような心持ちなのだった。日本に輸入されるアメリカ車がどれもこれもヨーロッパ車指向になっている今、エクリプススパイダーはかなりレアなフィールの持ち主である。ある意味、「パイクカー」みたいなものと言っていいかもしれない。ならば、なかなか良いデキである。
2003年の東京モーターショーに参考出品したら、かなりいい反応が返ってきたので輸入することになったのだそうだ。新車投入ができない状況で、すこしでもラインナップを増やしたいという意向も働いているだろう。事情はどうであれ、この手のクルマを愛好する向きには朗報である。古き佳きマッチョと開放的な気分が、わずか315万円で手に入るのだ。あまり走っていないから、街ではフェラーリよりも目立つだろう。メインストリームから外れた嗜好を持つことは、時として幸福をもたらす。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2004年11月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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