第49回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その2〜(矢貫隆)
2004.09.03 クルマで登山第49回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その2〜
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■観光客の方が多い
僕たちのグループは総勢十余名。自然地理学の勉強中で、山中一泊のスケジュールで標高2956mの木曽駒ヶ岳に登り氷河地形の名残を辿る現地講座だった。
標高1661mの「しらび平駅」からロープウェイで一気に標高2611mの「千畳敷駅」まで登った。実はこのロープウェイ、標高差950mを7分で結ぶ東洋一の規模で、着いた先の千畳敷駅の前には大カール地形が広がり、そこに高山植物のお花畑が広がっているものだから観光客もやってくる。いや、観光客の方が多い。彼らはカールのお花畑を眺めにやってくるのだ。
ご来光を拝めるほど早朝は晴天だったけれど、天気予報がしきりに低気圧の接近を伝えていた通り、昼頃から雲行きは怪しくなってきた。
だから僕らは予定を早めに切り上げロープウェイ駅に向かって歩き出したのだ。カールを下り、あとすこしでロープウェイ駅というところで雨が降ってきた。しかもザーッと降ってきた。慌てて建物に駆け込むと、そこは観光客で溢れ返っていた。ロープウェイの定員は60人。いったいどれくらい待てば僕らの順番はくるのだろうか。
「私たちは早めに乗れますよ。スタッフが昼前に整理券をもらっているから」
僕らのグループには何とも心強いスタッフがいるものだ。彼の言葉通り、次の次の次の次の次の次くらいにはロープウェイに乗り込める。時間にして2時間少々待ちといったところだろうかね、とか言っているときの落雷直撃だった。
スカート姿のおばさんたちが相談する声が耳に届く。
「歩いて下りちゃいましょうよ」
「大丈夫かしら?」
「大丈夫よ」
下りられねェ〜んだよ!!(つづく)
(文と写真=矢貫隆/2004年9月)
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矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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