第48回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その1〜(矢貫隆)
2004.09.01 クルマで登山第48回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その1〜
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久方ぶりの更新となる「クルマで登山」。パート2として、心機一転、再スタートをきる。
“第2章”は、神奈川県の西丹沢にある檜洞丸から始まるが、その前に、この夏ニュースとなった“あの事故”に、幸か不幸か巻き込まれてしまったお話をお届けしたい。
■トラブルは僕にも起こる
それはまさに一瞬の出来事だった。ピカッと光ったらゴロゴロッと鳴る前に建物内の電気が一斉に消え、次の瞬間にゴロッと雷鳴が響くと同時に大勢の人たちが「キャーッ」と悲鳴をあげた。
僕は雷ではびっくりしなかったけれど、それから10分ほどしてロープウェイの係のおじさんの状況説明を聞いたときには目眩がしたような気がする。
「落雷がロープウェイの電気系統を直撃して運行不能になりました。復旧の目処は立っていません」
近くに登山道はない。だから僕たちは、いつともわからぬ復旧を、ただ待つしか下山の手段はなかったのだ。
そう、忘れもしないあれは2004年7月25日のことである。翌日、テレビのニュースが大々的に報じていたから覚えている読者も多いと思うが、木曽駒ヶ岳のロープウェイが落雷で停止してしまい、標高2611m地点で乗客が14時間も足止めを喰らったというあの事故である。取り残された乗客は1200人。
僕はそのなかのひとりになったのだ。
滑落とか落雷直撃とか遭難とかヘリコプターで救助とか、その種の山のトラブルは自分には無縁だと思っていた。その種のニュースを見聞きするたびに、何て不運な、何て不幸な、何て間の悪いとか思っていた僕だ。今回のことでよくわかった。その種のトラブルは僕にも起こるのだ、と。(つづく)
(文と写真=矢貫隆/2004年9月)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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