ボルボC70 T-5 Classic(5AT)【試乗記】
急がない245馬力 2004.08.31 試乗記 ボルボC70 T-5 Classic(5AT) ……577.5万円 1996年にデビューし、2001年から日本に導入されたボルボのオープン4シーターが、パワーアップして登場。高圧ターボを積む「C70 T-5 Classic」はどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。優雅なサイドビュー
台風一過、土佐の空は晴れわたり、カブリオレの、ホワイトパールのボディが輝いている。足ともの、ポリッシュされたホイールが光っている。ボルボのフル4シーターオープン「C70 T-5 Classic」のプレス試乗会に来ている。
C70 T-5 Classicは、“クラシック”のサブネームからわかるように、2001年にクーペと入れ替わるカタチで日本に導入された「C70カブリオレ」の(ほぼ)最終バージョンである。2004年7月15日に販売が開始された。
エンジンが、これまでの2.4リッター“ライトプレッシャー”ターボ(200ps)から、245psを発生する強心臓2.3リッター“ハイプレッシャー”ターボに替えられ、外観上では、「Otrera(オートレラ)」と呼ばれるデザインの17インチホイールが採用されたのが新しい。価格は、577.5万円。昨2003年に出た特別仕様車「ホワイトパール・スペシャルエディション」が545.0万円だったから、約30万円が、45psアップの代価ということになろうか。
幌の開閉は、センターコンソールのスイッチひとつで行える。ソフトトップは、後席の後ろにキレイに収まるので、リアに向かってなだらかに駆け上がるショルダーラインの邪魔をしない。クラシカルで、優雅なサイドビューだ。
「自分を演出する」要素が強いオープンモデルらしく、C70は、受注生産で好みのカラーにコーディネートできる。9色のボディカラー、5種類の内装と2種類のインテリアパネル、そして3色のソフトトップから自由に選べる。ちなみに、「スカイブルーパール」が、専用のボディカラーである。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
C70の安全性
C70のいいところは、抜群の開放感が得られること。前後のサイドウィンドウをおろせば、オープンンエアを満喫できる。目障りなロールバーもない。
エレガントなC70のデビューは1996年。屋根が開くボルボとしては、FRPボディのオープン2シーター「P1900スポーツ」(1956年)以来、ずいぶん長いブランクがあったが、それは「ボルボにふさわしい安全性を確保できる目処がつかなかったから」と、ボルボは説明する。
C70は横転時に備え、強化されたAピラー、ウィンドスクリーン・フレームに加え、車両が40度以上傾いた場合に0.2秒で飛び出すU字型プロテクションバーが、リアシートの後ろに仕組まれる。
また、折り畳まれたソフトトップを収納する馬蹄形のボックスは補強構造として機能し、たとえば後方からの衝突に備える。「ちょっと荷室が狭くなるんですけどね」とボルボのスタッフは苦笑するが、それでもゴルフバッグ1から2セット、旅行用トランクを搭載することができるという。
取材班の撮影機材とスタッフの鞄を、上下が狭いラゲッジルームに入れ、基点となったホテルを出発する。カメラマンの峰さんが後席に座る。
−−どうですか?
「いいんじゃないですか」
−−なにが?
「オープンカーの後ろは楽しいじゃないですか」
そうですか。
C70のリアシートは、ソフトトップを開閉する仕組みが左右に設けられるため、横幅が通常よりやや狭まるが、大人2人用としては十分だ。頭上には、無限のヘッドクリアランスが取られる。オープンにした場合。
性能強化
ボルボに限らず、世のオープンモデルは、その華やかさとは裏腹に、あまり数が出るものではない。だから、どうしてもライフスパンが長くなりがちで、まわりのモデルがモデルチェンジするにしたがい、機関面では少々古くなる。
先代「V70」のシャシーを活用したC70も例外ではなく、日本仕様がいかな高圧ターボを得たからといって、本当の意味でのハイパフォーマンスを手にしたわけではない。品のいい外観に似合わずうねり声を上げがちな5気筒ターボに鞭を入れれば、たしかにC70は、ご婦人がスカートをたくし上げてセール会場に突進するがごとく、勢いよく加速する。が、もちろん、それははしたないことである。
青い海。セミの声。そよぐ風。そんなものを満喫しながら、ゆったり走るのが、人生を楽しむコツ……ってなことが、わかっているヒトのためのクルマである。ハードコーナリングで「ボディがわななく」とか、「アシがシャキっとしないので、上屋がぶかついて感じる」なんてことは、C70オーナーの興味の外だろう。「225/45R17」というスポーティなサイズのピレリP6000は、ルックス面への性能強化が求められている。
拡大
|
拡大
|
45psの余裕
最初の撮影をしているうちに、陽が高くなってきた。3層構造のしっかりしたつくりのソフトトップを上げれば、前後席とも、普通の4シーターモデルと変わらぬ居住性が確保される。
後席の乗員が不当に快適性を奪われるとしたら、それは空間の問題ではなく、背中をくすぐる“音”のせいだ。C70には、クルマの開発段階からプレミアムなオーディオシステムの搭載が考慮されており、リアシートの背もたれには、9インチのツインサブウーハーが埋め込まれる。10コのスピーカーは、デンマークの名門DYNAUDIO製。4.1チャンネルの「ドルビーサラウンド・プロロジックシステム」によって、音場のスウィートスポットが広いのがジマンだ。
リアのサブウーハーをキャンセルし、CDを聴きながら、さて、やまなみハイウェイに行こうか、桂浜を目指そうか。室戸岬に行くのもいいかもしれない。45psの強化分は余裕にまわし、ボルボC70 T-5 Classicで急がないで行く。
(文=webCGアオキ/写真=峰昌宏/2004年8月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。

































