トヨタ・ウィンダム3.0Gリミテッドエディション(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ウィンダム3.0Gリミテッドエディション(5AT) 2004.08.27 試乗記 ……441万3150円 総合評価……★★★ 「Are you WINDOM ?」というより、「Where is WINDOM ?」な3代目「ウィンダム」。わが国での販売成績いまひとつながら、それでもマイチェンで意匠を変更。“ニュー”ウィンダムに、『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。
![]() |
感心するのは……
「3リッターV6+5AT」のパワーパックで、ベース車両「カムリ」(2.4リッター直4+4AT)との違いを内外とも明確にした3代目「ウィンダム」。わが国では、ハードトップ調のスペシャルティなボディと、北米メインゆえの“バタ臭さ”(ほぼ死語)を活かして、「特にクルマに興味はないが、でも他人と同じはイヤ」という(比較的)裕福な層に受けていた。問題は、その数があまりにすくなかったことである。
デビューして約3年。前後バンパーの形状に手が入れられ、外観はやや「ツルン!」とした印象に。丸くなったフォグランプが、わかりやすい識別点。さらに室内の木目調パネルは、和風に華やかなライトブラウンに変更された(除く「ブラックセレクション」)。
走り始めれば、これはいままでと変わらない。静かなV6。スムーズなオートマ。どこかトロンとした乗り心地。総じてラクシャリー。“ゼロ・クラウン”で叫ばれ始めたトヨタの「スポーティ」は、遠くに聞こえる。
それにつけても、感心するのは三河の商人魂。小国の国家予算に匹敵する売上を誇りながら、商品力強化に余念がない。ホンダや日産では、商品リストで野ざらしにされるであろう不人気車種でも、しっかりマイチェン。販売に活を入れる。あ、価格もちょっぴり上がってます。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行「ウィンダム」は3代目。初代は、1991年に「カムリ」のシャシーを利用した高級スペシャルティセダンとして登場。北米でのトヨタ高級販売チャンネル「レクサス」で、「ES300」として販売された。1996年8月21日に、ホイールベースを50mm延長した2代目がデビュー。
2001年の同じく8月21日、同様にホイールベースを50mm延ばして2720mmとしたブランニューシャシーを使用した3代目ES300ことウィンダムが誕生した。
エンジンは、2.5リッターV6が落とされ、3リッターV6のみに。組み合わされるトランスミッションは、4段から5段ATとグレードアップ。2004年7月6日にマイナーチェンジを受け、内外装の意匠が変えられた。
(グレード概要)
グレードは大きく「X」と上級版「G」にわかれる。「G」には、ダンパーの減衰力を16段連続可変させるセミアクティブサスたる「H∞-TEMS」が搭載されるのが、「X」との最大の違い。そのほか、DVDナビゲーションシステムが標準で装備される。
「X」「G」ともに、黒内装の「ブラックセレクション」が設定され、「G」には、さらにトラクションコントロール、アンチスピンデバイス「VSC」、クルーズコントロール、木目調+本革巻きステアリングホイールなどが装備された「リミテッドエディション」、その黒内装「リミテッドエディション・ブラックセレクション」がラインナップされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
コンサバティブなセダンそのもののインパネまわり。機能的で安心感が高い。ナビゲーションシステムが違和感なく収まっているのはさすが。
マイナーチェンジを受け、日本のご年輩の方々に受けがいい、ライトブラウンの木目調パネルが採用された。センタークラスターのメタル調パネルも明るくなって、全体に華やかな印象に。購買層の年齢に合わせ(?)、数字、指針を視認しやすい独立3眼式オプティトロンメーターは標準装備。
(前席)……★★★★
柔らかい座り心地のフロントシート。運転席、助手席とも8ウェイのパワーシート。ドライバーズシートには、さらに電動ランバーサポートが付く。
エアコンは左右独立式。テスト車には、新採用のベンチレーション機能が装備されていた。シートバック、クッションから風が吹き出るシステムで、猛暑のおり、オシリ、背中とも涼しくてありがたかった。汗っかきのヒトには、特にオススメ。ただしお値段は、「シートヒーター付きレザーシート」とのセットオプションで、23万4150円なり。
左右シート間の、肘かけを兼ねた二重のモノ入れは、「浅」「深」使い分けできて、便利。
(後席)……★★★★
前席に準じた、ソファのような革シート。座り心地よく、足もと、膝前、頭まわりと、十分なスペースが採られる。リアガラス用電動サンシェードや、小物入れとカップホルダーを兼ねた大きなセンターアームレストあり。乗り込む際に、足もとを照らしてくれる「ドアカーテシランプ」は、乗員の自尊心をくすぐる小細工……否、演出だ。
メインマーケットたる北米市場の安全基準に合わせたためか、3人分の3点式シートベルトと、ヘッドレストが備わる。ISO-FIX対応チャイルドシート用アンカーと、チャイルドシート頂部を留めるテザーアンカーも設置される。
(荷室)……★★★
この手のクルマの最重要事項「ゴルフセットの運搬」に最大限配慮されたトランクルーム。「ゴルフバッグ4セットがラクに入る」とカタログには謳われる。容量は、VDA法で519リッター。床面最大幅156cm、奥行き108cm、高さ50cm。センターシートを通すことで、長尺モノも載せることができる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「可変バルブタイミング機構(VVT-i)」「3段可変吸気システム(ACIS-V)」と、2段構えで、ラクシャリーセダンらしいフラットトルクを目指した3リッターV6。スロットルバタフライとペダルが電気的に結ばれる電制スロットルを採用。静かで、余裕あるアウトプットを提供する。凡庸なフィールの影にハイテクが潜むトヨタらしいエンジンだ。「平成12年度排出ガス規制値25%低減レベル」を達成した。
5段ATは文句ないデキ。唯一ケチをつけるとすると、出足および加速の力強さを強調するためか、閉じたスロットルを急に開けたときの加速が、やや唐突なところ。ドライバーの品性が問われる?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
渋滞した街なかでも、空いている高速道路でも、“ボンヤリ流す”という乗り方がピッタリくるトヨタ・ウィンダム。ステアリングフィールも足まわりもやわらかく、どこかゴムの薄膜を通したよう。ストレスがたまる交通状況が多いわが国に、よく合ったチューンといえるかもしれない。「ヨーロピアンか」「アメリカンか」と乱暴にわけると、いうまでもなく後者。おおらかに乗りたい。
サスペンションには、ダンパーの減衰力を16段階にコントロールするセミアクティブダンパーを装備。「非線形H∞制御理論にもとづく調整」がなされるが、ボディはいまひとつビシッとしない。いわゆる「フラットライド」に欠ける。シフトレバーの横には、硬軟4段階に調整できるダイヤルが設けられるが、結局、「コレ」といったポジションは見つけられなかった。
(写真=峰昌宏/2004年8月)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2004年7月22日-7月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:646km
タイヤ:(前)215/60R16 95H(後)同じ(いずれもTOYO TRAMPIO J33)
オプション装備:本革シート(フロントシートヒーター&ベンチレーション機能付き)+電動格納式ミラー(23万4150円)、チルト&スライド電動ムーンルーフ(9万4500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。