ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT)【短評(前編)】
最良のXタイプ(前編) 2004.07.28 試乗記 ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT) ……568.1万円 2004年7月17日から、日本での販売が始まった「ジャガーXタイプエステート」。Xタイプセダンを日ごろのアシにする『webCG』エグゼクティブディレクターは、ワゴンボディをどう見るのか? 箱根からの報告。2.5 SEエステートがベスト
これで『webCG』上で「Xタイプエステート」を書くのは2回目である。前回は春にフランスで試乗したMTの3.0だった(http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015169.html)。
今回は、予定より早く日本導入が決まったモデルに試乗できた。
日本仕様は「2.0 V6 SE」と「2.5 V6 SE」、ともに5ATという2種となった。これはこれで賢明な選択だと思う。FWD(前輪駆動)で廉価版の「2.0 SE」と、4WDで中間車種の「2.5 SE」。この2つがあれば、マーケットの大半はカバーできるし、Xタイプの2つの使命を果たせるからだ。
ひとつはジャガーらしさを備えつつ、特有の軽快さを訴求しつつ、しかも比較的買いやすく市場に提供すること。もうひとつは、ジャガー最初の量産4WDとしての「X」の意義をアピールできるということである。
箱根で開かれたプレス試乗会では、時間の関係で、試乗できたのは2.5 SEの方だけだったが、2リッターV6に乗ったwebCGスタッフの印象もまじえて、2.0 SEもそれなりに想像できる。そして個人的には、現在のジャガーXタイプラインナップのなかで、2.5 SEエステートがベストバイと断言できる。
驚いたこと
それには2つの理由がある。まず、Xタイプ2.5 V6 SEエステートが−−いうまでもなく−−ジャガー中唯一のワゴンボディを持つこと。そして他の上級ジャガーとは異なり、「トラクション4」と呼ばれる、常時4WDを備えるということである。
つまり2.5 V6 SEエステートは、「XJ」も「XK」も持ち得ない、独自の価値を備えたジャガーであり、しかもセダンのデビュー後3年以上を経たいま、大きく改善されてきたXタイプの美点をそのまま受け継いで、立派なジャガーネスさえ感じさせるようになったモデルなのである。
「低速での乗り心地のざらつき感」「比較的大きなロードノイズ」「スポンジーで不安感を与えるブレーキ」「細部の仕上げ水準の低さ」「電子制御系統の小さなトラブル」「やや反応の鈍い5AT」、これらがデビュー時期のXタイプの弱点だった。
すでにその多くは、3年目を迎えたセダンで解消されていることを知っている。たとえば個人的にはもっとも不満だったブレーキは、文字通り年を追うごとに改善され続け、最近ではほぼ8割方満足できるものになった。
細部の仕上げ水準も、やはり3年間でずいぶん変わったし、電子系もかなり経験が活かされて、つまらないトラブルは減ってきた。
でも、今回エステートに乗って驚いたのは、乗り心地やロードノイズなど、快適性の大きな向上だった。
![]() |
ボディの見直し
実はこれは、ワゴンボディではとても難しいことである。リアのバルクヘッドがないうえ、開口部が広いから、どうしてもボディを強化しなければならない。また、荷物を積むから、後輪荷重変動が激しい。そのため、サスペンションのセッティングを多少は硬くする必要がある。また荷室との仕切りがないから、客室からキャビンに後輪からのロードノイズが伝わりやすい。プロペラシャフトをはじめとする機械部分が多い4WDモデルでは、特に快適性を上げるのは難しい。
それがXタイプエステートでは、セダンより静かで、しかも試乗車はスポーツオプションの「225/45R17」というピレリのPゼロ(標準は205/55R16)を履いていたにもかかわらず、低速での乗り心地も、振動・騒音も驚くほど遮断されていた。
そして速度を上げるにつれて、ほどよいソフトネスが相まって、いわゆるジャガー・ライドをもたらしてくれる。
実はフランスでの試乗会で設計者と会ったときに聞いたのだが、このボディはBピラーより後ろは、600点に近い新パーツが使われている。そのうえ、だ、特にフロアの共振設計やサスペンションの見直しは、相当徹底的にやったという。その過程で、旧来のセダンが持っている弱点もいくつかみつかり、エステートのボディを設計したおかげで、セダンの方も大きく改善できたのだという。
「ワゴンボディはとても挑戦的だったから、そこから得られたものはとても大きかった」と、そのとき会ったエンジニアは語っていた。(後編につづく)
(文=webCG大川悠/写真=荒川正幸・ジャガージャパン/2004年7月)
ジャガーXタイプ2.5 V6 SEエステート(5AT)(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015533.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。





