「FF車で下り坂をエンブレすると挙動が乱れる?」
2004.04.23 クルマ生活Q&A ブレーキ「FF車で下り坂をエンブレすると挙動が乱れる?」
FF(前輪駆動)車に乗っています。FF車は、下り坂でエンジンブレーキをかけると挙動が安定しない、ということを聞いたのですが、本当でしょうか? どのようになってしまうのですか?(IHさん)
お答えします。FF車はフロントエンジン、フロントドライブという構造上、重量が前方に集中しがちです。ボンネットの下に、エンジンやトランスミッション、ディファレンシャルといった重量物が積まれていますから。
さて、走行中にブレーキをかけると、荷重がリアからフロントに移ることは、体験上からもご存知でしょう。エンジンブレーキでも、それは同じです。
荷重が前にいき、後ろから荷重が抜けると、リアタイヤがしっかり路面に押さえつけられなくなります。そのため、挙動が不安定になるのです。下り坂となれば、その傾向はなおさら顕著にあらわれます。
たとえば高速走行中にゆるい右コーナーの下り坂で急激にエンジンブレーキをかけた場合、タイヤが路面にしっかりと踏ん張っていないと、リアが左に流れて不安定になるのです。
では、すべてのFF車が不安定になるかというと、そんなことはありません。ダンパーやサスペンションのセッティング、その形式によって、安定をつくり出すことができるのです。
余談ですが、FF車のドライビングテクニックに、「タックイン」という素早くコーナーをぬける技法があります。コーナーで“きっかけ”程度にステアリングを切ってアクセルを戻し、リアをスライドさせることで、一気にコーナーの出口に頭を向ける方法です。これは、荷重をフロントへ移すとリアの接地性が弱くなるというFF車の特性を、逆に利用したものです。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。