日産プレサージュ 3.5X 4WD/2.5V FF(CVT/4AT)【試乗記】
生活者のクルマ 2003.07.24 試乗記 日産プレサージュ 3.5X 4WD/2.5V FF(CVT/4AT) ……364.3/268.0万円 腰高で、しかも室内が上下に狭かった「日産プレサージュ」。厳しい消費者からの反応を汲んで、新型はどう変わったのか? 月販5000台を目指す意欲作に、『webCG』記者が北海道で試乗した。
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ベストミニバン(2003年7月現在)
「たとえばおじいさんやおばあさんを迎えに行ってですね、けれどもクルマに慣れないヒトがミニバンに乗り込もうとすると、どうしていいか迷ってしまうんです。そんなとき、自動でスライドドアが開いて、パッとセカンドシートが前に倒れると、すんなりシートにつける。運転手もあわててドアに走らないでもすみますし……」というエンジニアの方の話をうかがって、日産の新型ミニバン「プレサージュ」のイメージが、頭の中でピッと像を結んだ。
2003年7月22日、北海道で開催されたプレス試乗会でのことである。帯広空港とホテル「アルファトマム」(アルファリゾート・トマム)を往復する100km余のコース。3.5リッターV6(CVT)と2.5リッター直4(4AT)、2種類あるニュープレサージュのうち、往路を前者、復路を後者で走るスケジュールが組まれた。いずれのモデルにもFF、4WDが用意され、テスト車はV6が4WD、直4がFFだった。
当日の朝、空港で新車説明会に出席し、駐車場で実車を前に説明を受けたときは、いまひとつピンと来なかった。左側のドアミラー下部に取り付けられたカメラを使って、インパネ中央のディスプレイにクルマの左側を映し出してドブに落ちないようにする「サイドブラインドモニター」は“21世紀のハイテック”な感じだし、運転席に居ながらにして、スイッチひとつで2列目左のシート背もたれを倒してかつ前方にスライドさせ、3列目への乗り込みを助ける「リモコンウォークイン」は、肘かけを出していると引っかかるということが判明したが、それはともかく、ウィーンとリクライニングレバーが動くさまがロボットっぽくてオモシロかった。
プレサージュ最大のジマン「サードシートワンタッチ床下格納」は、ラゲッジルームに設置されたリングを引くと、サードシートの座面がバサッと前に立ち上がり、一瞬おいてバックレストがパタンと前方に倒れる。こちらはカラクリっぽい。再度リングを引くと、座面をそのまま前に押し倒して荷室を大幅に拡大できる。「ヘエ」「ヘエ」「ヘエ」と3回感心した。リアガラスだけを開閉できるハッチゲイトについては、まあ、最新ミニバンだから。
……と、傍観者の立場で眺めていたリポーターだが、実車に試乗し、2列目シートに座り、サードシートをテスト中に不覚にも眠ってしまったあと、エンジニアの人たちにインタビューして、ようやく日産が月5000台の販売を目論む野心作がピンと来るようになった。
結論から言うと、新しいプレサージュは、いま“ベスト”な実用ミニバンだと思う(2003年7月現在)。後出しジャンケンでは、後から手を出すメーカーほど有利なことは当たり前だが、それでも日産の最新ピープルムーバーには、単なる差別化のためではない、骨太なコンセプトが感じられた。
2.5リッターがオススメ、3.5は“少々贅沢”である。ドライブする機会はなかったが、カタログにはエアロなスポーティグレード「ハイウェイスター」もラインナップされる。
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競争力ある価格
1998年の夏にデビューした先代プレサージュは、「ホンダ・オデッセイ」の大ヒットに触発されたとおぼしき急造ミニバンだった。03年6月26日に発売された今回のプレサージュは、皮肉な言い方をすると、旧型の失敗を真摯に受けとめて開発されたクルマといえる。
国内では「ティアナ」で使われる新開発「FF-Lプラットフォーム」を用いて車内の床を低くし、リアドアは狭い場所での乗降に便利なスライド式に変更、さらにシートアレンジを、実際に使われるパターンに絞って使いやすさを追求した。従来モデルにガッカリしていたリポーターは、その変身ぶりにちょっとビックリ。
(先代の試乗記はコチラhttp://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000010672.html )
全長4840、全幅1800、全高1685mmのボディサイズは、オデッセイとの近似値。押し出し重視の立ち気味グリルと、やはり立ち気味のバックゲイトが、居住空間に配慮した“実直なピープルムーバー”を主張する。それでいて、「サイドウィンドウ下の面、いわゆるショルダーラインからサイドボディが張り出し、また強調されたフェンダーがプレサージュを退屈さから救っている……」とは、日産デザイン担当者の弁。
まずヨンクの3.5リッターV6「X」に乗る。車両本体価格306.0万円と最も高価なモデルで、17インチホイール、ナビゲーションシステム、リモコンスライドドアやサイドブラインドモニターなど、オプション込みのお値段は364.3万円也。ちなみに、FFの3.5リッターは、素のままで272.0万円。ひとまわり大きなエンジンを積みながら、「オデッセイ」や「トヨタ・エスティマ」の3リッターモデル(267.5万円〜/293.5万円〜)と競争力ある価格だ。
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驚きのサードシート
プレサージュの内装は、グレード「X」が明るい木目調パネルにアイボリーのバックスキン調生地、「V」は濃い茶に明るいグレーのスウェード、そして「ハイウェイスター」がメタル調パネルに黒のニット素材の組み合わせとなる。「プリメーラ」以来、加速がついたインテリアデザインは、センターに情報・操作系を集める手法がすっかりこなれた印象だ。
「3.5リッターV6+CVT」のプレサージュは、粛々と走る。34.0kgmの太いトルクを活かしておとなしく走れば、タコメーターの針が2000rpm以下を指したまま、しかもほとんど変動することなく、100km/hの巡航速度に達することができる。スカイラインにも積まれるVQ35DE(NEO)ユニットは、実用重視に設定しなおされ、あまり存在を感じさせない。“プレミアム”グレード用として採用されたCVTは、違和感が大幅に払拭された。
乗り心地は硬い。テスト車がオプションの17インチを履いていた影響も考えられるが、そもそも比較的重心が高く、大人数が乗ることを考慮しなければならない“人員運搬車”は、安楽な乗り心地を保ちつつ、動的な安全性能を確保するのが難しいのだろう。街なかでは、舗装の継ぎ目などが気になることがある。一方、速度を上げるとグッとスムーズになるから、西へ東へ、南へ北へ、家族旅行に励むユーザーにはいいかもしれない。
一見キャプテンシート風のセカンドシートは、実際、通常は左右個別に座るキャプテンシートで、足もと、ヘッドクリアランスとも空間に不満はない。そのうえ前席のバックレストは、後ろの乗員に圧迫感を与えないよう、丸みを帯びたカタチにされた。たくさんヒトを運搬する必要があるときには、進行方向向かって左のシートを横スライドさせることでベンチシートとして使うこともできる。法規上は、3人がけ可能。
驚いたのはサードシートで、やや座面が低いけれど、膝まわり、頭上とも、大人用として実用的だ。しっかりステーが伸びるヘッドレストが心強い。これなら、3列目の乗降性向上を目指した「リモコンウォークイン」が意味をもつ。車輪の真上なので、ときどき突き上げはあるが、無理なく寝れるレベルであることは、実地に証明した。法規上、ココに3人座れるというのも、ひとつの驚きである。
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プレサージュのある光景
販売の主力となる2.5リッターモデルは、213.0万円からのエントリーと、オデッセイ(212.5万円〜)、エスティマ(229.5万円〜)、そして三菱グランディス(208.3万円〜)と比較して、これまたじゅうぶん競争力ある値付けがされた。日産他モデルとの部品共有化率46%が効いているのだろう。
やや余談だが、プレサージュに使われるプラットフォームは、国内ではティアナ、海外では「アルティマ」「(次期)マキシマ」といったセダン、ミニバンの「(次期)クエスト」、そしてSUV「ムラーノ」と、実に幅広いカテゴリーをカバーする。そのうえプレサージュを見るかぎり、できあがったクルマに、機能面でいびつなところがないのが立派だ。
CVTC(連続可変バルブタイミングコントロール)機構を搭載した2.5リッター直4「NEO QR25DE」ユニットは、吸排気系に手が入り、中低回転域でのトルクが太らされた。最高出力は163ps/5200rpm、最大トルクが25.0kgm/3600rpmである。さすがに急な上り坂では回さないといけないからエンジン音が高まるが、むしろ活力が感じられる、とプラスに考えた。カメラマンとスタッフ、リポーターの3人と撮影機材多数を積んで走っても、動力性能に不足はない。
テストドライブを終えて、複数の開発者の方とお話しする。さすがに皆さま、ミニバンにお乗りだ。
−−どうやって使ってます?
「いつもはサードシートを畳んでいます」
「大きな荷物を積むときは、いっときも早く3列目を畳みたいものなんです。戻すときは、急ぐ必要がない……」
「私は、3列目はできるだけ前に動かしてして、荷室が使えるようにしてます」
「うちは娘と息子がいるのですが、2列目、3列目とバラバラに座るんですですね。それぞれが好きなことしたいもんだから。」
2-1-1ですかァ……と、別のエンジニアが最後の話題を受けて、座が盛り上がる。同じ年頃の子どもがいる技術者も多いのだろう。当たり前だが、ミニバンも使われ方いろいろ。会話の端々から、生活に根ざした開発が感じられた。
そんな経緯があって、冒頭の発言を聞いたときに即座に“プレサージュがある光景”が頭に浮かんだ。
渋滞気味の駅前サークル。タクシーの列の横にプレサージュが停まる。広くはないタクシーとの間に、ゆっくり歩いて来る祖父と祖母。目の前でスライドドアが自動で開いて、セカンドシートが倒れる。小柄なおばあさまは3列目に乗り込む。おじいさまはシートを直して、2列目に。ふたりの仲は冷え切っているのか? ……どうも意地の悪い発想をしてしまうのは、リポーターが、「家族」とか「ミニバンのある生活」と、縁がない人生をおくっているからである。
(文=webCGアオキ/写真=峰 昌宏/2003年7月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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