トヨタ・アルファードハイブリッド 8人乗り 4WD(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルファードハイブリッド 8人乗り 4WD(CVT) 2003.09.16 試乗記 ……397.0万円 総合評価……★★★★ 「トヨタ・エスティマハイブリッド」に続くハイブリッドミニバン第2弾「アルファードハイブリッド」。ベーシックな標準モデルに、『webCG』記者が乗った。実用の哀しみ
「アルファードハイブリッド」の凄いところは、乗員をして、まるで“ハイブリッド”を感じさせない点である。カローラ級ハイブリッド「(初代)プリウス」が、ときにモーターだけで走って電気自動車感を、天才的なトランスミッション「動力分配装置」が不思議な加速感を、そして回生ブレーキが“カックン”感をドライバーに与えるのと比較して、トヨタの新型ハイブリッドミニバンは、目隠しして運転させられたら、もちろん恐くて運転できないのだが、そのドライブフィールはノーマル(?)アルファードとほぼ変わらない。たいてい回っている内燃機関、コンベンショナルなCVTを用いたトランスミッション、そして一段と自然になった電子制御ブレーキシステム「ECB」が、主な理由。
最新テクノロジーをいち早く消化して、それと感じさせずにお客さまに提供するところに、大トヨタの底力がある。使い勝手に関しても、またしかり。“実用”とは、細かいカイゼンの積み重ねと見つけたり。
「2トン超の8人乗りミニバンを、環境負荷への後ろめたさを感じることなく独りで乗りたい」というわがままなユーザーニーズに応える……、否、掘り起こすことも、ニッポン・ナンバーワン自動車メーカーの責務である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年7月に追加された、トヨタのミニバン“フラッグシップ”「アルファード」のハイブリッドバージョン。「エスティマハイブリッド」で先行して採用された「THS-C」(TOYOTA Hybrid System-CVT)を搭載し、10・15モード燃費はガソリン車より10km/リッターほどよい、17.2km/リッターを実現した。電子制御ブレーキシステム「ECB」と、それに付随する車両安定システム「VSC」&「TRC」、発電機とバッテリーによる1500Wの大容量電源などが備わる。
ハイブリッド版の外装は、ボディ同色グリルやLEDリアコンビネーションランプを装着し、ガソリン車と差別化が図られた。インテリアは基本的に同じだが、ハイブリッドシステム作動状況などの車両情報を表示する「ワイドマルチAVステーション」をはじめとする、豪華装備が特徴である。
(グレード概要)
アルファードハイブリッドは、ベーシックな「アルファードハイブリッド」(8人乗り)と、装備が奢られた「Gエディション」(7/8人乗り)に大別される。それぞれに、足が不自由な方の乗降に便利な、左側のセカンドシートが車外に出てくる「サイドリフトアップシート装着車」(8人乗り)が用意される。Gエディションには、ナビゲーションシステムが標準装備され、シート地が「プリントニット」から「ジャカードモケット」にグレードアップされるほか、「バックドアイージークローザー」「レーンモニタリングシステム」「バックガイドモニター」「コーナーモニター」など、便利装備が標準で搭載される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ことさらデザインで先進性や“洗練”をアピールすることなく、庶民的にまとめられたインパネまわり。見やすく大きな「速度計」、明確な「シフトポジション・インジケーター」が親切だ。「燃料計」と、それに覆い被さるカタチで設定される「瞬間燃費計」が、芸はないけれど、ストレートに燃費運転を訴える。センターコンソールは、上部に「6.5インチモニター」「オーディオ類」そして「インパネシフト」と、機能的でこなれた配置を採る。
(前席)……★★★
「ヨッコラショ」とよじ登る感じのフロントシート。あたりを睥睨する高い視点が、「MINIVAN FLAGSHIP」オーナーのプライドをくすぐる。「MINIVAN FLAGSHIP」とは、カタログの最初のぺージに書いてあった。
シートそのものは、ラグジュアリーな造形とソフトな生地から、ソファーのような座り心地を予想させるが、意外や座面は硬め。太股部分を盛り上げた工夫で、“平板”とのそしりを免れる。まずまずの座り心地。シート全体の角度を調整するレバーと、クッションのみの傾斜を変えるダイヤルが備わる。
大判の地図も縦に差せる、低い位置の大きなドアポケット、インパネ右端とセンターの小物入れ、トンネルコンソールには、小物置きと2人分のカップホルダー、そしてなんでも放り込める大きなフタ付きコンソールボックスと、ボディサイズの余裕を反映して、モノ置き、モノ入れは豊富。
(2列目シート)……★★★★
“純”箱形ボディの特徴を活かし、広い室内。セカンドシートは、570mm(7人乗りは550mm)のスライド量を誇り、一番後ろにセットすると、ちょっと驚く広々感。大きなサンルーフ(オプション)を開ければ、採光も十二分。2列目3列目用のエアコン調整機能も備わる。左右読書灯ほか、ピラーと天井の境を照らす間接照明用スイッチあり。4段階の照度調整付き。
シートは、フロントと何ら変わらない座り心地を提供する。センターシートは「引き出し式の2点シートベルト」かつ「ヘッドレストなし」なので、基本的に肘かけスペースである。
前席トンネルコンソール後端にAC電源のコンセントがあるので、パソコン、デジカメ、はたまたゲームを、気兼ねなく使う、または充電することができる。
(3列目シート)……★★
絶対的なボディの大きさから、大人用としても十分実用的なサードシート。少々座面が短く低めの着座位置ながら、ある程度のロングドライブにも耐えられる居住性を確保した。後輪のうえなので、それなりに路面からの入力があるが、直接的な突き上げは、ほどほどに抑えられる。
車検上は3人座ることもできるが、それはもちろん書類上のハナシ。左右分割スライド式なので、片方のシートを諦めて荷物を積むことも可能だ。ヒトを積むことを諦めれば、左右サイドに跳ね上げて、大きな荷室を確保する選択肢もある。
3列目にも、専用のエアコン吹き出し口と読書灯が設けられる。両サイドヒジ置き部に、「カップホルダー」「カップ型灰皿」「大小2つの小物置き」と、スペースの有効活用が図られる。
(荷室)……★★
垂直にそびえるバックドアが壁のようだ。クルマ後方のスペースさえ許せば、雨の日の、荷物の積み降ろしに便利。開ければ、立派な雨よけになる。
荷室部分の床面最大幅は128cm。天井までの高さは120cm。奥行きは、わずか20cmから2m超まで、シートアレンジに依存する。大人数運搬時には、奥行きのなさを高さでカバーし、また左右分割スライド式のサードシートが、ラゲッジスペースの伸縮性に機動性をもたせる。なお、アルファードハイブリッドは、ニッケル水素バッテリーを、サードシートからフロントシート下に移すことで、ハイブリッドシステムによる荷室の浸食を防いだ。みごとな“カイゼン”である。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2.4リッター直4(131ps、19.4kgm)と、THE-C用フロントユニット(モーター+CVT)を組み合わせたハイブリッドシステム。さらに必要に応じて後輪を駆動するリアモーターを装備、駆動方式としては「オンデマンド型4WD」を採る。
「モーターのみ」「エンジン+モーター」「エンジン+充電」といった動作モードの切り替えはまったく自然で、センターコンソールにあるディスプレイで「エネルギーモニター」を見ていないと、それと気づかないほど。2つの2トン超のミニバンとして、街なか、高速道路とも、過不足ない動力性能が得られる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地は、2トン超のミニバンとして順当なレベル。ことさら感銘を受けるスムーズさや、フラット感はないけれど、終始安定した走りで、路面からの直接的な突き上げもよく抑えられる。アルファードは、もともとこのサイズのクルマとしては例外的に、コンパクトカーでよく使われる「トーションビーム式リアサスペンション」が使われる。もちろん、コストパフォーマンスに優れるためだ。アルファードハイブリッドで採用された、必要に応じて後輪を駆動する「E-Four用リアユニット(モーターほか)」は、小型で、左右後輪間に置きながら、半独立式の後ろ脚を継承できるメリットがある。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年9月1日〜3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1308km
タイヤ:(前)205/65R16 95H/(後)同じ(いずれもグッドイヤー イーグルNCT5)
オプション装備:ツインムーンルーフ(10.5万円)/デュアルパワースライドドア(12.0万円)/SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(8.5万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:285.9km
使用燃料:39.0リッター
参考燃費:7.3km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。

































