トヨタ・アルファードハイブリッド“Gエディション”サイドリフトアップシート装着車(CVT)【試乗記】
透けて見える戦略 2003.08.28 試乗記 トヨタ・アルファードハイブリッド“Gエディション”サイドリフトアップシート装着車(CVT) ……505.0万円 ハイブリッドカーを推進するトヨタが、最高級ミニバン「アルファード」にハイブリッド版を追加した。車重2トン超にして、カタログ燃費17.2km/リッターを謳う新型に、『webCG』記者が試乗した。カタログ燃費約10kmアップ!
トヨタの3列シート7/8人乗りのミニバン「アルファード」に、ハイブリッド版が加わった。ミニバン系では、「エスティマハイブリッド」「コースターハイブリッド」に続く3車種目である。
プラットフォームやパワートレインを「エスティマ」と共用するアルファードは、ハイブリッドシステムもエスティマから譲り受けた。2.4リッター直4エンジンにモーターを組み合わせたパワーソースからCVTを介して動力を伝える「THS-C」(TOYOTA Hybrid System-CVT)がそれ。「THS-C」とセットになって、ハイブリッド版エスティマ&アルファードを特徴づける、電気式4WDシステム「E-Four」、電制ブレーキ「ECB」(Electronically Controlled Brake system)なども、基本的に同じものだ。
「E-Four」は、プロペラシャフトの替わりに電線(?)を使う4輪駆動システム。つまり、必要に応じてリアのモーターを回して後輪を駆動する仕組みで、重いプロペラシャフトを使わないですむので、2輪駆動モデルからの重量増加を抑えられる。「THS-C」とセットで搭載されるから、アルファードハイブリッドは、全車オンデマンド式4WD車ということになる。
「ECB」は、いわゆる“ブレーキ・バイ・ワイヤ”。ブレーキペダルと4輪のブレーキを電気的につなぎ、もちろん、減速時にエネルギーを回収する回生機能付き。すべてを電気的に処理するので、「各種制御を意識させない自然なブレーキフィーリングを実現した」(プレスリリース)というのがジマンだ。
以上、難しい英略号ほかの恩恵で、アルファードのハイブリッド版は、ノーマル2.4リッター4WD車と較べてなんと! 10km/リッターもいい17.2km/リッターの「カタログ燃費(10・15モード)」を実現した、と謳われる。アルファードハイブリッドの車重は、ノーマル比約130kgも重い2050kgだから、これは驚異的だ。
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停まっていても涼しい
アルファードハイブリッドの価格帯は、366.0から441.0万円。エンジン単体モデルが289.0から342.0万円だから、だいたい3割増しといったところ。そのぶん、標準装備が充実しております。今回のテスト車は、トップグレードのうえオプション満載のため、505.0万円! 「セルシオ」に手が届こうかというお値段である。
ハイブリッド版には、専用フロントバンパーや、LEDリアコンビネーションランプなどを採用。ギラギラしていたメッキメッシュグリルは、ボディ同色に換えられた。落ち着いたフロントマスクが好ましい。
室内に目を転ずると、ハイブリッド化による居住・ラゲッジ空間の浸食が、最大限抑えられたのがわかる。具体的には、ニッケル水素バッテリーの格納位置が工夫された。
先達エスティマハイブリッドは、サードシートを約2cm上げ、荷室下部にわたってバッテリーを配置したため、荷室が狭められた。アルファードハイブリッドは、バッテリーをフロントシート下部に移したことで、ノーマル車と同じ居住空間を確保した。「8人乗りでゴルフバッグが8個積める」ラゲッジルームの積載能力も変わらない。
アルファードハイブリッドは、キーをひねっても黙っている。「アレ!?」と思うほどに。2秒ほどして、電車が発車するときのような「ヒュルルン」という音とともにエンジンが回る。ただし、バッテリーの充電や暖気の必要がないかぎり、エンジンは止まる。テスト車の車内は、すぐに静かになった。エアコンの風音が大きく聞こえる。
エンジンが止まってもエアコンが働くのは、世界初を謳うモーター内蔵「2Wayコンプレッサ」のおかげ。2Wayとは、エンジンからも、モーターからも駆動されるという意味である。エンジン駆動時は、“普通のクルマ”と同じようにベルトでコンプレッサーをまわす。エンジン停止時には、バッテリーから電力を得たモーターが駆動を受けもつ。真夏でも、アイドリングストップのたびに、暑い思いをしないで済むわけだ。このコンプレッサーだけで、市街地モードでの燃費は、約1km/リッターも向上したという。
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次の次元
エンジンの効率が悪い発進時はモーターで、一定速度に達すると、エンジンが動力になるのは、従来のエスティマハイブリッドと同じ。全力加速時にはエンジンに加え、フロントのモーターはもちろん、リアのモーターも加勢する。「日産スカイラインGT-R」のようだ!?
エンジン&前後モーターフル稼働の全開加速は結構ウルサイが、それに見合う加速性能は得られる。絶対的に速くはないが……。一方、タウンスピードや定常走行では、静か。“高級ミニバン”らしい。
センターコンソールには、“21世紀に間に合った”プリウスでお馴染み、「エネルギーモニター」が、アルファードハイブリッドにも備わる。「6.5インチワイドモニター」で、エンジン、バッテリー、モーター、タイヤ間のエネルギーの流れを見ていると、けっこう頻繁に切り替わる。しかし、運転に違和感はまったくない。さらに回生機能が組み込まれたブレーキも自然なフィールで、よく利くことに感心した。
なお、「THS-C」には、前後モーターに加え、第3のモーターたる「スタータージェネレーター」がある。これは、主にモーター走行時、必要に応じてエンジンを駆動する用途で使われる。
THS-Cは、バッテリーに余裕がなくなると、エンジン動力で発電する。その際、従来は前後と第3のモーターすべてを使っていたが、新型は“ちょっとだけ充電”なら、スタータージェネレーターのみが働くように改良された。「ハイブリッドシステムの静粛性が高まった」と、担当エンジニアの方は、胸を張る。実際、静粛性は高い。
新しいプリウスで、北米市場でのハイブリッド車販売を積極化するとウワサされるトヨタ。国内でも、人気カテゴリーたるミニバンで、着々とハイブリッド化を進めている。
2002年5月にアルファードが登場したときには、「FF(前輪駆動)のトヨタ・アルファード vs FR(後輪駆動)の日産エルグランド」といった図式で、(一部クルマ好き間で)ハナシが盛り上がった。その後アルファードは、販売面で優位にたったのみならず、クルマとして次の次元に行ってしまった印象を受ける。さらにいうと、モデル単体での勝負のみならず、量産効果によってハイブリッド分野でのアドバンティッジをますます増そうという、トヨタの戦略が透けて見える。
(文=webCGオオサワ/写真=峰 昌宏/2003年8月)

大澤 俊博
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