三菱グランディス エレガンス-X(FF/4AT)【ブリーフテスト】
三菱グランディス エレガンス-X(FF/4AT) 2003.08.12 試乗記 ……287.5万円 総合評価……★★★★ 「世界のわがまま」をキャッチフレーズに、“スタイリッシュ”を狙った3列シートミニバン「グランディス」。三菱の経営再建計画「ターンアラウンド」の戦略モデルに、モータージャーナリストの生方聡が乗った。
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長く付き合える
このところ、比較的コンパクトな3列シートのクルマに人気があるが、5人以上が荷物を載せてドライブするには、「グランディス」のような全長4.7m超のタイプか、「ステップワゴン」のような全高1.8m超のタイプが便利である。スペースを全長で稼ぐか、全高で稼ぐかの違いだが、“自然な運転感覚”という意味では、全高が低い方が有利だ。エクステリアデザインの点でも、背の低いタイプのほうがすっきりしているものが多いように思える。
グランディスも、まさにそのままの印象。モダンで嫌味のないデザインとミニバンとしての機能性、そして、運転のしやすさがバランスよく仕上げられている。押しの強さはないが、長く付き合うにはいいクルマだと思う。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「グランディス」は、1983年に誕生したピープルムーバー「シャリオ」を始祖とするミニバン。2003年5月、3代目の「シャリオ・グランディス」で3ナンバーサイズへ大型化された。現行モデルは、2003年5月にフルモデルチェンジした4世代目で、伝統の車名「シャリオ」を捨て、「グランディス」となった。コンパクトカー「コルト」に続く、三菱自動車の経営建て直しを目指した「ターンアラウンド計画」の戦略車種。また、親会社のダイムラークライスラーから派遣された乗用車デザイン本部長、オリビエ・ブーレイ氏が、ゼロから手がけた初のモデルでもある。
全長×全幅×全高=4755×1795×1655mmのボディに、キャプテンシートの6人乗りか、ベンチシートをもつ7人乗り仕様を設定。パワートレインは、バルブコントロール機構「MIVEC」を備えた2.4リッター直4SOHC16バルブ(165ps)に、「INVECS-II」スポーツモード付き4段ATの組み合わせのみ。駆動方式はFF(前輪駆動)と、「2WD」「4WD」「デフロック」3つのモードから選択できる電子制御4WDの2種類となる。
室内の特徴は、助手席の座面を跳ね上げて荷物スペースにできる「ユースフルシート」や、クッション角度を3段階に調節できる。リラックスモード付セカンドシートなど。サードシートは、左右分割して床下に格納することができる。
(グレード概要)
グランディスは、「エレガンス」と「スポーツ」、2種類の内外装イメージを設定。主な違いはインテリアにあり、エレガンスは木目調パネルと、ブルー照明のメーターを採用。スポーツにはメタル調パネルと、レッド照明のメーターが装着される。上記2つのイメージとトリムレベルによる、4つの推奨パッケージと、ベーシックな「スタンダード」が用意される。加えて、装備などを自由に選べる「カスタマーフリーチョイス」がコルトに続いて採用された。よって、外装はスポーツ、インテリアはエレガンス、などの組み合わせも可能である。
推奨パッケージの「エレガンス-X」は、エレガンス内外装の上級グレード。エクステリアに、16インチアルミホイールやディスチャージヘッドライトなどを装着。インテリアは、本革巻ステアリングホイール&シフトノブに加え、DVD-MMCS&7インチ液晶ディスプレイなどが、標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
優しい曲面でデザインされたインパネは、スイッチ類の配置やパネルの色づかいなどの効果もあって、モダンな雰囲気をつくりあげる。一方、メーターパネルは見やすい大型のアナログメータを採用し、機能的なのが好印象だ。試乗車の「エレガンス-X」は“エレガンス内装”が標準になるが、シフトパネルやドアのスイッチパネルに使われている木目調パーツに、もうすこし本物っぽさがほしかった。
(前席)……★★★
ファブリック地のシートはからだにフィットし、座り心地もよい。運転席からの視界は良好で、あまり高すぎないシートポジションとあいまって、落ち着いて運転することができる。センタークラスターに配置されたゲート式のシフトレバーは、マニュアルシフトをする場合でも手の届きやすい位置にあるのがいい。カードホルダーや折りたたみ式のセンターテーブルなど、運転席まわりの収納も充実する。
(セカンドシート)……★★★★
試乗車は、2列目がベンチシートの7人乗り仕様。その2列目は、シートバック、クッションともに、適度な厚みと張りがあって乗り心地がいい。前後スライドは、1番前にすると座ることは困難だが、ノッチの2番目なら大人でも座ることができる。だから、一番後ろなら余裕たっぷりだ。走行時の乗り心地も十分快適である。ただし、中央席はやや硬い座り心地なので、補助席と割り切ったほうが無難だ。
(サードシート)……★★★
3列目は、折り畳むと荷室床の窪みに収まり、フラットになるよう設計されている。だからシートバックの高さが低く、2列目に較べると、さすがにクッションは平板だ。しかし、大人でも窮屈にならないスペースは確保される。
(トランク)……★★★★
3列目シートを起こした状態でも、40cmほどの奥行きがあるラゲッジルーム。25cm強の深さがあって、たくさんの荷物が飲み込めそうだ。5:5分割式の3列目シートは、簡単な操作で収納可能。フラットなフロアを生み出すことができる。この場合、奥行きは120cmほどに拡大される。2列目をチップアップすれば、さらに大きなスペースが現れるから、大きな買い物でも困ることはまずないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
グランディスに用意されるエンジンは、2.4リッター直列4気筒SOHCのみ。大きめの排気量のおかげで、低回転域から必要十分なトルクを発揮し、街なかから高速道路にいたるまでとても扱いやすい。静粛性の高さも魅力だ。
組み合わせられる4段オートマチックは、レバー操作によるマニュアルシフトが可能な「INVECS-II」。シフトアップ&ダウン、ともにスムーズ。5段ATが散見されるようになった昨今だが、4段であることのデメリットは感じられなかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
グランディスは、数あるミニバンのなかで、どちらかといえば硬く、フラットな乗り心地。直進安定性が高いこともあって、高速道路などではリラックスして運転することができた。山道を走る場合でも、比較的姿勢は安定しているから、ドライバーもパッセンジャーも安心だ。2列目、3列目の乗り心地も快適で、リアアクスルからの突き上げなどもうまく遮断される。ただ、ロードノイズがやや大きめなのが気になった。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年7月8日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6744km
タイヤ:(前)215/60R16 95H(後)同じ(いずれもヨコハマ ASPEC A300)
オプション装備:ウッド&本革巻ステアリングホイール&ウッドシフトノブ(1.5万円)/ACパワーサプライ(1.0万円)/後席7インチワイド液晶ディスプレイ(10.0万円)/寒冷地仕様(3.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):山岳路(5):高速道路(2)
テスト距離:350.2km
使用燃料:51.3リッター
参考燃費:6.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。