トヨタ・エスティマ アエラス-S(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・エスティマ アエラス-S(FF/4AT) 2003.06.26 試乗記 ……377.9万円 総合評価……★★ 2003年5月6日にマイナーチェンジが施された「エスティマ」。その際に追加設定された「アエラス-S」はローダウンサスをもつ、最上級スポーティグレード。自動車ジャーナリスト河村康彦が試乗した。
|
見えない進化
直列4気筒エンジンをほとんど“横倒し”してミドシップマウントするという、トヨタの量産モデルとしては画期的かつ独創的なエンジンレイアウトを採用、「天才たまご」を自称した初代エスティマ。が、フルモデルチェンジとともに初代の稀有なレイアウトはあっさりと捨てられ、好評だった外観だけを受け継ぎ、FFモデルへと変身したのが2000年1月のこと。
そして2003年5月6日に、3年4ヶ月ぶりでマイナーチェンジを実施。ただし、マイナーチェンジ前が好評だったため、ヘッドライトやリアコンビネーションランプのデザイン変更など、見た目の変化はごくわずか。むしろブレーキアシストの全車標準化や、歩行者傷害軽減ボディの新採用など、「見えない部分の進化」がより重要な項目として挙げられる。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1990年5月にデビューした、7/8人乗りの大型ミニバン。現行型は2000年1月にフルモデルチェンジされた2世代目。駆動方式が、初代のミドシップRWDからFFに変更された。これにより、フロア高が低くなり乗降性が向上、また、より排気量の大きいエンジンを搭載することが可能になった。2001年6月15日に、ハイブリッドモデルが追加された。
2003年5月にマイナーチェンジし、内外装の化粧直しがなされた。「エスティマT」はトヨタ店、「エスティマL」はカローラ店から販売される。2.4リッター直4(160ps、22.5kgm)と3リッターV6(220ps、31.0kgm)の2種を用意し、それぞれにFF/4WDモデルがある。
(グレード概要)
「アエラス-S」は、スポーティ仕様の「アエラス」にローダウンサスペンションや、前後パフォーマンスロッド、215/55R17タイヤ、スポーツシートなどを与えた、よりスポーティなモデル。エンジンは、2.4リッター直4と3リッターV6を用意。7人乗りのみの設定となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネまわり+装備)……★★★
今回のマイチェンで、内装色に4つの新色が用意された。また、LEDを使用した「ブルーグラデーションオプティトロンメーター」の、上級グレードへの新採用もニュースだ。イグニッションONでまずは指針のみが赤く点灯し、次いでブルー地に白目盛りの文字盤がゆっくりと照度を増していく。いかにも日本のミニバンユーザーが好みそうな、プレミアム感たっぷりの演出だ。異型メータークラスターをはじめ、アシンメトリーなデザインのダッシュボードデザインは、いまでもそれなりに新鮮。
テスト車には「G-BOOK」に対応したDVDナビ付きAVステーションが装着されていた。さらに、「ブラインドコーナーモニター」や「音声ガイダンス付きカラーバックガイドモニター」などが加わると、オプション価格は51.9万円なり。それ以外にも、デュアルパワースライドドア(12.0万円)、VSC&TRC(8.0万円)などオプションが盛りだくさん。いかな広報車とはいえ、総額75.9万円(!)分とはチとやり過ぎ?
(前席)……★★★
今回のマイナーチェンジで新設された「アエラス-S」は、シリーズ中で唯一“スポーツシート”を装着。比べてみればたしかに他グレード用のシートよりも、シートバック側端部の張り出し量が大きめ。しかし乗降性の妨げなど、一切の悪さをしていない。その一方で、ホールド性の向上にもそれほど寄与していない印象を受けた。
ちなみに“たまご型ボディ”を受け継ぎ、フロントエンジン化を図った現行エスティマは、先代に比べてフロントシート位置がグンと後退。それもあってフロントエンドの見切り性に劣るのが、数あるミニバンたちのなかで、ちょっと目立ってしまうウィークポイントだ。
(2列目)……★★
「アエラス-S」のセカンドシートは、フロントシートと同様“スポーツシート”が標準。それぞれのシート左右両側にアームレストを奢ったうえ、シート間にはカップホルダー付きのサイドテーブルを用意。スペース的には、大人にとっても満足できるレベルだ。シートスライドをあえて後端にセットしなくても、それなりの空間は確保される。
が、“伏兵”はこのグレード専用のローダウンサスペンションにあった。走り出すと、前席では感じなかったフロア振動が意外に大きく、空間的には問題ナシでもちょっと落ち着かない印象を受ける。フロントシートとの快適性の差は歴然。
(3列目)……★★
エスティマのシートも他の多くのミニバン同様、「後方に行くほど末席」という印象が拭えない。折り畳みを考慮するためにクッション厚は薄くなるし、左右のタイヤハウスを避けるため、左右方向への寸法も、どうしても制約を受ける。とはいえエスティマの場合、大人がそれなりの長時間ドライブに耐えるのは、そう苦しい相談ではなさそうだ。
ただし、走り出してみれば、伝わる騒音や振動が、3列のシートのなかで最大。例のローダウンサスのため、フロントを軸にした上下動も大きくなる。できれば、おとなしく渋滞にはまっていて欲しくなる(?)のがこのポジション。
(荷室)……★★
「人間を満載すると荷物は積めない」のが、世のミニバンの宿命。3列シートをすべて使うと、「こんな立派なテールゲートは見かけ倒しじゃないの!?」というくらい、荷物スペースは残されない。サードシートのクッションを垂直位置まで跳ね上げ、セカンドシートの背後まで前進させた“スーパースペースアップ”状態で、ようやくそれなりのラゲッジスペースが出現する。が、いずれにしてもとことん荷室にこだわるという人には、そもそもミニバンはオススメしない。それがこのクルマにもあてはまる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
エスティマのカタログを開くと、エンジンやトランスミッションに関する記述は申し訳程度。ミニバンにとってのパワーパックとは、もはや“刺身のツマ”的存在なのか…… 。
にもかかわらず、最新の2AZ-FE型2.4リッターエンジンは、「☆☆☆(平成12年基準排出ガス75%低減レベル)」のクリーンな排ガスレベルをさりげなく達成。3リッターV6モデルに比べると、さすがに走りの力感は落ちるが、ひとり、もしくはふたり乗り状態であれば、不足のない加速力を発揮してくれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
ローダウンサスペンションを装着した「アエラス-S」の全高・地上高は、標準車より15mmのダウン。率直にいうと、わずかに15mmでは見た目にもさほどのローダウンとは見えないし、ハンドリングの感覚もそれほど大きく変化したとは感じられない。チェーン装着時の車体との干渉などを厳しくクリアしなければならないメーカー純正モデルとしては、このあたりまでの“車高短”が限度なのだろう。
ドライバーズシートでステアリングを握る限り、乗り心地にもさほどのマイナス面は生まれていない。……と思ったが、実は後方シートに行くほどにその影響を感じさせられるのは前述した通り。ゲスト重視のクルマ選びをするならば、エスティマは標準仕様を選択すべし。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2003年6月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1872km
タイヤ:(前)215/55R17 93V(後)同じ
オプション装備:G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付ワイドマルチAVステーション(6.5型ワイドディスプレイ+DVD・MD一体AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ+TV+ビデオ端子+9スピーカー)+後席9型液晶ワイドディスプレイ(リモコン付)+ブラインドコーナーモニター(フロント直下モニター付)&音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター(51.9万円)/VSC&TRC(8.0万円)/音声案内クリアランスソナー(バックソナーレス)(4.0万円)/デュアルパワースライドドア(リモコン付)(12.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:212.0km
使用燃料:25.6リッター
参考燃費:8.3km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ホンダ・シビック タイプR/ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車【試乗記】 2026.1.26 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。
-
トヨタbZ4X Z(4WD)【試乗記】 2026.1.24 トヨタの電気自動車「bZ4X」の一部改良モデルが登場。「一部」はトヨタの表現だが、実際にはデザインをはじめ、駆動用の電池やモーターなども刷新した「全部改良」だ。最上級グレード「Z」(4WD)の仕上がりをリポートする。
-
アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.1.21 「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。
-
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.1.20 「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は?
-
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.19 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。
-
NEW
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】
2026.1.28試乗記スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。 -
NEW
クワッドモーター搭載で過去にないパフォーマンス BMWが示したBEV版「M3」の青写真
2026.1.28デイリーコラムBMW Mが近い将来に市場投入を図る初のピュア電気自動車の骨子を発表した。車種は明かされていないものの、「BMW Mノイエクラッセ」と呼ばれており、同時に公開された写真が小型セダンであることから、おそらく次期型「M3」と思われる。その技術的特徴を紹介する。 -
NEW
第100回:コンパクトSUV百花繚乱(前編) ―デザイン的にも粒ぞろい! 老若男女をメロメロにする人気者の実情―
2026.1.28カーデザイン曼荼羅日本国内でも、海外でも、今や自動車マーケットで一大勢力となっているコンパクトSUV。ちょっと前までマイナーな存在だったこのジャンルは、なぜ老若男女をメロメロにする人気者となったのか? 話題の車種を俯瞰(ふかん)しつつ、カーデザインの識者と考えた。 -
“走行性能がいいクルマ”と“運転しやすいクルマ”は違うのか?
2026.1.27あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの「走行性能の高さ」と「運転のしやすさ」は本来、両立できるものなのか? 相反するようにも思える2つ特性の関係について、車両開発のプロである多田哲哉が語る。 -
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】
2026.1.27試乗記“マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。 -
【番外編】バイパー、磐越を駆ける
2026.1.27バイパーほったの ヘビの毒にやられましてwebCG編集部員が、排気量8リッターの怪物「ダッジ・バイパー」で福島・新潟を縦走! 雄大な吾妻連峰や朋友との酒席で思った、自動車&自動車評論へのふとしたギモンとは。下手の考え休むに似たり? 自動車メディアの悩める子羊が、深秋の磐越を駆ける。






























