トヨタ・ハイラックスサーフ 3400ガソリン 4WD SSR-G(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ハイラックスサーフ 3400ガソリン 4WD SSR-G(4AT) 2003.01.28 試乗記 ……386.2万円 総合評価……★★★★開発力の発露
マイケル・J・フォックス扮するマーティ・マクフライが誕生プレゼントにもらって大喜びしたのも今は昔、本格クロカン市場の冷え込みを反映して、ピックアップトラック由来の「ハイラックスサーフ」と、ジープ系「ランドクルーザー・プラド」は先代から姉妹モデルになり、2002年10月、仲良くニューモデルに移行した。
栄枯をともにしたライバルが軒並み「モノコックボディ+4輪独立サス」になるなか、はたまたクラスを問わずに“乗用車系”ヨンクが乱入するカテゴリーにおいて、ハイラックス&プラド姉妹は頑固に「ラダーフレーム+固定式リアサス」を守り、むしろこれをアイデンティティとした。電子デバイス満載、上級版欧州志向のフルタイム4WDプラド、若者向け北米メインのパートタイム四駆(2WDあり)ハイラックスと性格が分けられる。
テスト車の「SSR-G」は、ハイラックスサーフの3.4リッターV6モデルにして最上級トリム。ボディはメインマーケットたる北米に合わせて拡大され、「80系」こと先代ランクルに迫らんばかり。フレームにキャビンが載る関係で、室内高は外観から想像されるほどではないが、それでも十分以上。車内横方向は文句なく広い。38.5mm径のステアリングホイールが小さく感じられるほどに。
走りはじめて驚く。エンジン+トランスミッションのスムーズさもさることながら、乗り心地は望外のよさ。「フレーム付き+リアリジッド」を微塵も感じさせない、というとウソになるが、この手のクルマの典型的な挙動−−路面の凹凸と拾ってテール部分が横に振れ、カーブではシャシーにワンテンポ遅れて上屋が追従する−−が希薄だ。
感心してエンジニアの方にうかがうと、シャシーとキャビンの接合方法ほかを徹底的にコンピュータシミュレーションした結果という。古典的な構造を最新のテクノロジーと経験の蓄積でみごとにアップデイト。開発力を見せつけた。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ランドクルーザー プラド」と、エンジンやフレームなどを共用するのが「ハイラックス サーフ」。現行モデルは、2002年10月7日にフルモデルチェンジした4代目。高級&上質指向のプラド、若者向けのサーフとキャラクターが分けられる。プラドには3ドアが設定されるが、サーフは5ドアモデルのみとなる。
メカニズムは、基本的にプラドと同じだが、高度な電制4WDシステムをもつプラドに対し、ハイラックスはコンベンショナルな「2WD-4WD」を、スイッチで切り替えるタイプとなる。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアはリジッド式だ。サーフは、右前と左後ろ、左前と右後ろのサスペンションを、高圧ガスを封入した中間ユニットで連結する「X-REAS」サスペンションを搭載。これはコーナーでのロールや段差の乗り越え時などに、中間ユニットが減衰力を増すことで、ロールやピッチングを抑えるもの。
エンジンは、2.7リッター直4DOHC16バルブ(150ps/4800rpm、24.0kgm/4000rpm)と、3.4リッターV6DOHC24バルブ(185ps/4800rpm、30.0kgm/3600rpm)のガソリンエンジンに加え、コモンレール式ディーゼルの3リッター直4DOHCターボ・インタークーラー付き(170ps/3400rpm、35.9kgm/1400〜3400rpm)の3種類が用意される。トランスミッションはすべて4段ATとなる。
(グレード概要)
ハイラックスサーフのトリムレベルは、上級版「SSR-G」と標準グレード「SSR-X」に大別される。後者には、さらにフェンダー、バンパーなどがメタリックになり、スチールホイールを履く廉価版「アメリカンバージョン」もカタログに載る。SSR-Xには4WDほかFR(後輪駆動)の2駆モデルも用意されるが、テスト車の「SSR-G」は四駆のみ。SSR-Xと比較して、タイヤが65扁平の17インチとスポーティなものになり、前後にフォグランプを装着。機関上では、4輪のダンパーを対角線上に結んで、中間に置かれたユニットが減衰力を補助して走行安定性を高める「X-REAS」を搭載するのが大きな違い。インテリアでは、ステアリングホイールが革巻きになり、パネル類が「メタル調」から「石目調(!)」に変更される。本革内装をオプションで選べるのもSSR-Gだけだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
3連メーター、インパネ上部に置かれたディスプレイ、大柄なスイッチ類と、トヨタらしくそつなくまとめられたインパネまわり。4または5方向に重ねた皿を動かすように操作する空調ダイヤル、木目調ならぬ石目調パネル、フラッグシップ「ランクル100」にならって先端から赤い光(ランクルは青)を照射するメーターニードルなど、ディテイルで個性化が図られたが、全体に通底するデザインモチーフがないためか、機能面でしか記憶に残らない。普及版ヨンクとして、それで十分とも言えるわけだが……。
(前席)……★★★
左右ともパワーシートにして、運転席には電動のランバーサポートもつく。惜しげななく使うには、廉価な布シートより、むしろ汚れを拭き取りやすいレザーの方がいいかもしれない。“贅沢なラフ”を演出できるのが、本革内装をオプションで選べる上級版「SSR-G」の特権か。ホールド性は考慮されないが、適度な硬さで、座り心地はいい。新型は先代よりフロア高が25mm低くされたが、それでも地上から60cm弱。絶対的には高い。そのため、外から見るほど室内高に余裕があるわけではないが、十分以上。室内横は広く、38.5mm径のステアリングホイールが小さく感じられるほど。左右席間に、巨大なモノ入れあり。
(後席)……★★★
前席同様フロアが高いので、外から見るほど床面と座面との距離はない。とはいえ、膝前、頭上とも十分以上の空間がある。窓の下端が低いので、視界もいい。さらに、しっかりしたヘッドレストが心強い。トンネルコンソール後端にはエアコン噴き出し口と、ゴミ袋を固定するための折り畳み式「トラッシュホルダー」が備わる。センターの幅広アームレストに、小物入れではなく、引き出し式のカップホルダーが仕組まれるのがアメリカン!?
(荷室)……★★★★
床面最大幅142cm、奥行き100cm、天井まで90cm弱と、広大なラゲッジルーム。セカンドシートを倒すと、奥行きは170cmとあきれるほど。フロアが二重になっていて、上のパネルは奧の部分が折れるようになっていて、むこうに押しながら上にあげると簡単に上下2段で使用できる「ダブルデッキ」になる。とはいえ、上の段にモノを載せておくと走行中に転げ落ちるし、かといって下に置いたものを覆い隠すには折り畳み式パネルの奥行きが足りない。パネルを抜き取って、上の段に差すようにした方がよかったのでは……。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
3.4リッターV6ガソリンユニットは、基本的に先代からのキャリーオーバー。とはいえ、4カム、4バルブのヘッドメカニズムをもつ6気筒は、熟成が進んだ4段ATと組み合わされ、何ら古さを感じさせない。
ハイラックスは、センターコンソールに備わるダイヤルを回すことで「2駆ハイ-4駆ハイ-4駆ロウ」を切り替えることができる。副変速機用のギアレバーをもつ「ランドクルーザープラド」と比較すると“お手軽”感があるが、クルマの性格分けのためには、むしろ有効だ。前後を直結にするセンターデフロックは全4WD車に標準、リアLSDは「SSR-G」にのみ、オプションで用意される。上級グレードのための、差別化デバイスとしても機能するわけだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
従来の「ラダーフレーム+リジッドサス」のクロカンとは一線を画す乗り心地のよさ。キャビンを載せるフレーム上のブッシュ類のチューニングはもちろん、サスペンションのセッティングにも(当然のことながら)十分な検討が加えられた。「コンピューターによるシミュレーション技術の発達が大きい」とエンジニア氏。仮想世界でのノウハウ蓄積が、リアルワールドの競争力にそのまま跳ね返る時代である。“素の良さ”に加え、SSR-Gには、右前と左後ろ、左前と右後ろのサスペンションを結んだ「X-REAS」を搭載。これは、コーナリング時や凸凹路面で、あたかもダンパーの容量が増したかに働くシステムだ。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年12月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:1618km
タイヤ:(前)265/65R17 112S(後)同じ(いずれもブリヂストン Dueler H/T840)
オプション装備:リアLSD(3.0万円)/前席サイド&カーテンエアバッグ+スライド機構付きサンバイザー(8.0万円)/本革シート+7ウェイアジャスタブル機構付き本革パワーシート+合皮ドアトリム(石目調)(26.5万円)/ライブサウンドシステム(DVDナビ+ワイドディスプレイ+カセット付きラジオ+TV+MD+CDプレイヤー+TVダイバーシティアンテナ+バックモニター=28.7万円)/ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン=3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(1):ダート(3)
テスト距離:161.1km
使用燃料:24.5リッター
参考燃費:6.6km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。






























