ダイハツ・ムーヴL(2WD/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・ムーヴL(2WD/4AT) 2003.01.15 試乗記 ……102.8万円 総合評価……★★★★見えない部分に“新しさ”
「衝突時安全性と燃費、そしてパッケージングの飛躍的向上を図るため、今回あえてプラットフォームの一新を図りました」
開発責任者が誇らしげに語るのが、スズキ「ワゴンR」と共に、これまで“トールBOX軽自動車”市場を牽引してきた、ダイハツ「ムーヴ」のフルモデルチェンジドバージョンだ。
スクエアなキャビン部分から小さなノーズが突き出すという、軽自動車の世界ではもはや“当たり前”のフォルムゆえ、うっかりすると「従来モデルをベースに、ていよくリファインしただけじゃないの?」と、思えてしまうこのクルマ。けれども、実はその“新しさ”は、むしろ「見えない部分」にこそある。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツの軽セミトールワゴン。現行モデルは、2002年10月15日にフルモデルチェンジを受けた3代目で、プラットフォームが一新された。ボディサイズは軽自動車規格イッパイだが、ホイールベースを従来比+30mmの2390mmに延長。ドア内側の形状を見直すなどして、幅で80mm、前後乗員間隔を105mm拡大した、広い室内がウリ。加えて、スライド量を250mmに拡大した後席や、ワンタッチで後席を折り畳める「ワンモーション荷室フラット」など、使い勝手の向上が図られた。
ムーヴは、コンサヴァティブな「ムーヴ」と、スポーティな外観をもつ「ムーヴ カスタム」の2種類。エンジンは、0.66リッターの直3NA(自然吸気/58ps、6.5kgm)とターボ(64ps、10.5kgm)。カスタムには、それらに加え、「軽」で唯一の4気筒ターボ(64ps、10kgm)もラインナップされる。トランスミッションは、コラム式4段ATをメインに、フロアシフトの5MT、CVTが用意される。FF(前輪駆動)のほか、4WDも設定される。
(グレード概要)
ムーヴのグレードは、NAの「L」と「X」、ターボエンジンを積む「R」の3種類。ベーシックグレードのLは、0.66リッター直3DOHC12バルブ(58ps、6.5kgm)のエンジンに、コラム式4段AT、またはフロア式5段MTの組み合わせ。XやRとは異なり、エクステリアにルーフエンドスポイラーや、サイドマットガードが装着されず、ホイールはスチールホイール+キャップとなる。室内では、250mmスライドする後席や、ワンモーション荷室フラットも備わらない。安全装備として、前席SRSエアバッグは装着されるが、EBD付きABSが3.0万円のオプション設定となるなど、装備が簡素化される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
“大屋根型”のワイドなバイザーの下に、大きなメーターを配したダッシュボードまわりは、デザイン的にも質感上も、1〜1.3リッター級コンパクトカーと較べてなんの遜色もない。上下2段式の「デュアルグローブBOX」やシートアンダートレイをはじめ、収納スペースは22個所とタップリある。ドアミラースイッチやパワーウインドウスイッチ、はてはダッシュボード両端の引き出し式カップホルダーのマーク部分にまで、照明が灯るのも軽自動車としては前代未聞だ。ついでにいえば、パワー式の集中ドアロックは、まるで高級輸入車のごとくフューエルリッドのロックと連動する。余談だが、姉妹車の「ムーヴカスタム」の最上級モデル「RSリミテッド」(FF)には、高級車でもまだ採用例の少ない、前車追従機能付きのレーダークルーズコントロールを、オプション設定。オドロキ!!
(前席)……★★★
実際目にすると「外れて落っこちてしまうのではないか!」と思える、約90度まで開くドアをあけると、室内幅一杯にベンチタイプのシート(MT仕様はセパレート型)が広がる。センターアームレストを出せばセパレート風に使えるし、ヘッドレストを取り外してリクライニングすれば、いわゆる“フルフラットシート”に変身も可能。すっきりした見た目は好感が持てるし、座り心地もなかなかだ。
(後席)……★★★★
フロントと同様、90度近くまでガバっと開くドアから後席に乗り込むと、とても軽自動車とは思えない、余裕の大きなレッグスペースに圧倒される。「ボディ構造の進化によってダッシュボードを前に出すことができ、同時にリアシートを後方に移動させることでタンデムディスタンス(前後乗員間の距離)を105mm拡大できた」という。デビューからわずか4年にして、プラットフォームの刷新に踏み切った理由のひとつがここにある。ショルダー部分も広く、大人2人ではもったいない?
(荷室)……★★★
Lグレードには、ムーヴの“目玉商品”ともいえる、250mmスライドするリアシートと、「ワンモーション荷室フラット」は装備されない。
とはいえ、Lの後席シートバックも前倒し可能で、完全にフラットにはならないものの、荷室の奥行きを拡大できる。ラゲッジスペースをフル活用するのでなければ、問題ないだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)…★★★★
新型ムーヴは、全車“クリーン排ガス”を実現。NAモデルは★3つレベルの「超−低排ガス」をパス。3気筒&4気筒ターボモデルでも、★2つの「優−低排ガス」車に認定された。NAモデルの場合、通常は使用に伴った劣化の避けられない触媒貴金属に、世界で初めて自己再生機能を持たせたという「インテリジェント触媒」を採用したことがそのヒミツだ。
トランスミッションは、プレス向け試乗会に用意された4段ATに加え、5段MT、CVTと多彩。ちなみに、前述の高度なクリーン化を達成したことによる、動力性能の不自然さは一切感じられない。4段ATのシフトプログラムも、ごく自然だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
新型ムーヴの走りの質感も、内外装同様、やはり小型車並。むしろ、こうした表現は適切ではないかもしれない。なぜならこのクルマの場合、走りのクオリティはすでに「一部の小型車のそれをしのいだ」とさえ、いえるものだからだ。
新型ムーヴの走りには「骨がある」。このクルマのボディの動きには、これまで軽自動車特有と思われた“ペナペナ感”がない。サスペンションの動きは、ゆったりしたストローク感が表現されるし、ブレーキの踏み応えも多くの軽自動車に感じられる、「薄板を踏みつけるような感触」がない。ちなみに、ステアリングフィールはターボ付きよりも、自然吸気エンジン車の方がより自然。これは、燃費のハンディキャップを少しでも減らすべく、ターボモデルに限って電動式パワーステアリングを装備(他は油圧式)することが原因だろう。
(写真=中里慎一郎)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日: 2002年9月30日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)145/80R13 75S(後)同じ
オプション装備:CD付きカセットラジオ+4スピーカー/ABS/13インチアルミホイール(8.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:高速道路(5):市街地(5)
走行距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























