ダイムラークライスラー・Necar4アドバンス【試乗記】
3リッターV6のようだ 2002.12.31 試乗記 ダイムラークライスラー・Necar4アドバンス Kazuo's FAST! Impressionの第4回は、なんと!! 燃料電池車「Necar(ネッカー)4アドバンス」。メタノール改質型燃料電池を採用したNecar5に対し、「4」は、やはり動力源に燃料電池を使いながら、250気圧に圧縮された気体の水素を搭載する。Aクラスベースの次世代自動車は、運転するとどうなのか?会員コンテンツ「Contributions」より再録。響きわたる高圧ポンプの音
2001年5月22日、東京は港区のホテルで、ダイムラークライスラーによる燃料電池のシンポジウム「燃料電池と21世紀のエネルギー選択」が開催された。私はパネルディスカッションの司会者として参加。シンポジウム前に、わずかな時間ながら最新の燃料電池車「Necar5」に乗ることができた。
いよいよ実用化が間近に迫ったNecar5。今回のテスト車は、日本で初めて行われる公道での走行実験「燃料電池自動車共同プロジェクト・実車走行試験」のために用意されたもの。既にナンバー取得済みである。
Necar5はメタノールを燃料とし、クルマのなかでメタノールを改質、水素をつくる装置をもっている。残念ながらステアリングホイールを握ることは許されなかったが、助手席で同乗することはできた。
まず、高圧ポンプの音が室内に響きわたったのが印象的。水素を燃料電池に送り込むのだろう。“走り”は、今までの自動車とは大きな違いはない。パワーソースがモーターなので、変速ギアはない。そのため非常にスムーズに加速する。低速トルクは大きい。Necar5には、バラード社製・PEM型燃料電池「Mark900」が搭載される。パワーは75kW(約100ps)、150km/hの最高速度が謳われる。
さて、聞き慣れない言葉であるメタノールとは、いったいどんな物質なのだろうか。メタノールはいわゆるアルコールである。CARTのレーシングカーは、メタノールを燃料としている。ガソリンと異なり、メタノールは天然ガスやバイオマスから取り出すことができる。再生可能なエネルギーとして活用可能なのだ。
しかし、燃料電池自動車では、クルマにメタノールから水素を取り出す装置(改質器)を搭載する必要がある。改質器のさらなる小型化が求められ、また水素の取り出しにも時間がかかるため、実用化にはもうすこしの時間が必要だ。
力強く、静か
今回ドライブできたのは、Necar4“アドバンス”と呼ばれるモデルで、メタノールのかわりに、250気圧の圧縮水素を搭載する。1999年に発表されたNecar4は、液体水素を燃料とするので航続距離は450kmと長かったが、圧縮水素は水素密度が低いので走行できる距離は200Kmとなる。液体化して水素密度を高くすることも考えられるが、そのためにはマイナス253度という超低温が必要で、これもまた実用化は難しい(なお、ダイムラークライスラーは、350気圧のタンクを開発中であり、これが実現できれば、約300kmに航続距離を伸ばすことができる)。
私はすで数台のプロトタイプに試乗してきたが、Neca4はかなり完成されており、低速トルクはじゅうぶん。それもそのはず、燃料電池はNecar5と同じバラード社製Mk.900。パワーも変わらず75kWだ。
発進は、ガソリンエンジンのAT車と変わらない。停車状態からの加速感は、3リッターV6といったところか。力強く、しかも静か。そのうえ排出するのは水だけである!
マフラーから水を出しながら
Necar4“アドバンス”のような、水素を気体の状態で搭載する圧縮水素型燃料電池自動車のデメリットは、水素を供給するインフラストラクチャーが整っていないこと。逆に言えば、都市バスのように決まった路線を運行する場合には、限られた場所に水素ステーションを設置すればよいから、すぐにでも実用可能だ。
一方、乗用車として使うには、場所を問わず自由に燃料を供給できることが条件となる。そのためには、気体のままの水素より、常温で液体のメタノールは都合がいい。既存のガソリンスタンドの設備を、若干変更するだけで活用できるからだ。GMやトヨタは、より現実的に考えをすすめ、ガソリンそのものから水素を取り出すことを検討中だ。
Necar4は、アメリカ・カリフォルニアですでに4500kmに及ぶ走行実験を行っており、一方、メタノール改質方式のNecar5は、日本での走行実験が始まった。
まもなく、マフラーから水を出しながら走る燃料電池車の姿を、首都圏で見ることができるはずだ。
(文=清水和夫/写真=河野敦樹/小河原 認/2001年6月12日)

清水 和夫
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