トヨタ・スペイド1.5G(FF/CVT)【試乗記】
子育ての味方 2012.09.19 試乗記 トヨタ・スペイド1.5G(FF/CVT)……222万5850円
子育て世代に使いやすいサイズの「トヨタ・スペイド」を通して、少子化について思いを巡らせた。
「ポルテ」よりちょっぴり若作り
「使いやすさ フル揃ってる!」とのキャッチコピーが躍るトヨタ・プチバンのテレビコマーシャル。「こりゃ画期的だね」と感心した。だって、具体的なクルマの姿、出てこないんだぜ。登場するのは赤いマシュマロみたいな漠としたカタチで、でも、スライドドアの開口部の大きさ、リアシートがスライドすること、そして床が低いことをしっかり見せ、最後に「ポルテ」またはその姉妹車「スペイド」を申し訳程度に紹介して、おしまい。これなら、今後、いくら派生車種が追加されても大丈夫!?
「トヨタのデザイナーはへそを曲げないかね?」と無用な心配もしたくなるが、もちろん、ちゃんとポルテ用、スペイド用のコマーシャルも用意されている。「家族想いプチバン」と「チャレンジするためのプチバン」がそれ。ノホホンとした顔つきのポルテと、ややキリッとしたスペイド。前者は、トヨタ店、トヨペット店で販売され、後者はカローラ店、ネッツ店で買うことができる。スペイドのほうが、ちょっぴり“若作り”なわけだ。かつては、バッジとグリルを変えただけで堂々と“別のクルマ”として売っていたのだから、ポルテとスペイドの差別化は、がんばったんじゃないだろうか。
外観の雰囲気は異なるが、基本的に同じクルマで、グレード構成、価格設定に違いはない。1.3リッターが145〜155万円。メインになる1.5リッターモデルは、159〜191万円。トランスミッションはいずれもCVTで、1.5リッター車には4WDも用意される。
片側スライドドアは良心的な選択
言うまでもなくポルテ/スペイドは、助手席側、つまり左サイドにスライドドアを持つのがアイデンティティーである。スイッチひとつで、横幅約1mもの開口部が出現する。開け閉めの軽快さには欠けるが、車両の前後どちらからでも荷物を車内に持ち込めるので、便利。乗り降りも楽。そのうえ旧型ポルテは右側運転席用に1枚のスイングドアしか持たなかったが、新型ポルテ/スペイドは、前後2枚のスイングドアを備えるようになった。リアシートへのアクセスが容易になった。
「スライドドアはコストが高い」という理由もあろうが、右側もスライドドアにしなかったのは、小さな子供を乗せる機会が多いクルマとしてなかなか良心的な選択といえる。なぜなら、スライドドアは、後方から開閉の状態を確認しづらいから。路肩に停車中のポルテ/スペイドの横を、同じ方向に向かって通り過ぎたり、逆にすれ違う場合、通常のスイングドアなら、「開いた」→「誰か出てくる」と予想、注意できるが、スライドドアの場合、「突然、子供が飛び出してきた!」とあわてるケースが考えられるからだ。
両側スライドドアを採用したコンパクトカー「プジョー1007」のような、使い勝手と革新を同居させたようなクルマも楽しいが、なにはともあれ、日常から離れすぎないのがトヨタの強みであり、つまらないところであり、でもやっぱりエライところである。
両親の財布のヒモを緩ませる?
スペイドのジマンは、前後に70cmも動かせる助手席(背もたれを倒すとテーブルにもなる)と、天地方向にも広い室内、そして前後席どちらの乗員も、手を伸ばせばティッシュに届くことである。グローブボックスと運転席背面にボックスティッシュを入れるスペースが設けられ、しかも通常のティッシュケースのように、ちゃんと1枚、1枚、取り出せる。ブローブボックス下部と運転席背面に、スリットが切ってあるのだ。
若者とティッシュと聞くと、つい「ムフフ……」な想像をしてしまう人は、『webCG』読者にはいないと思うが、スペイドの場合、ティッシュを使うシチュエーションを求めるというより、ティッシュを使ったその結果、求められるクルマといえる。
カタログでは、白人モデルを使って上手に“ナマ”な感じを減じているが、若いふたりができてしまった、否、さずかった場合、手頃な価格、使いやすい大きさのスペイドはありがたい存在だろう。変化自在なシートはアクティブな、子供の背丈を記録する「柱の傷」の代替となるBピラー室内側の目盛りはほのぼのと幸せな家庭を連想させ、初孫を楽しみにしている両親の財布のヒモを緩ませよう。開口部が大きく、床が低いスペイドなら、「足腰が弱った祖父母の送迎にも便利」という殺し文句も使える。インストゥルメントパネルに備わる室内装備の目玉、ペットボトルのみならず、大容量で安価な紙パックも差せるカップホルダーを笑うなかれ。多くの場合、「若い」と「貧乏」は分かちがたく結ばれており、子育てにはお金がかかるのだ。
新しいポルテとスペイドを見たとき、かつてのマイクロミニバン「ホンダ・モビリオ」と「モビリオスパイク」のように、かたや家族向け、こなた趣味に使える多目的車、といった売り方をするのかと思ったが、もはやそういう時代ではないようだ。少子化に歯止めがかかることを祈りたい。
(文=青木禎之/写真=田村 弥)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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