スバル・エクシーガ2.5i EyeSight(4WD/CVT)【試乗記】
“ぶつからない”クルマ選び 2012.08.29 試乗記 スバル・エクシーガ2.5i EyeSight(4WD/CVT)……298万7250円
「エクシーガ」がマイナーチェンジを受けた。安全装備を充実させ、「レガシィ」で採用された新2.5リッターエンジンを搭載。スバルの7人乗りミニバンの走りやいかに?
女性の関心が高い「EyeSight」
「ぶつからないクルマ?」に続いて今度は「ぶつからないミニバン?」。スバルが開発した運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」のCMに使われるキャッチコピーは、最後に「?」をつけたところを含めて、「東スポ」の見出しに通じるスレスレ感がある。
ところが「エクシーガ」のマイナーチェンジを機に行われた試乗会で配られた資料によれば、このCMのおかげで、EyeSightの知名度は想像以上に浸透していたそうだ。
販売の比率でいうと、「レガシィ」の実に89%、「インプレッサ」の61%がEyeSight搭載車であり、ユーザーの9割は次もEyeSightを付けたいと考えているという。一方、インターネットで調べた調査では、男性の69%に対し、女性は実に74%が、EyeSightに魅力を感じているという。
僕のパソコンで「AISAITO」と入力すると「愛妻と」と表示されるのだが、実際は“愛妻”がこの装備を選ぶ状況が多いのかもしれない。ということは、奥さま方が購入の主導権を握る可能性が高いと思われるミニバンでこそ、EyeSightは訴求力がありそうだ。スバルもそう考えたのか、マイナーチェンジでは三つあるエンジンのうち二つでこの安全装備が選べるようになった。
EyeSightを搭載したエクシーガは、今回初めて登場したわけではなく、2009年から「2.0GT」に存在していた。しかしそれは「EyeSight(ver.1)」であり、衝突軽減は行うものの、衝突回避はできなかった。これに対して今回搭載された「EyeSight(ver.2)」では、30km/h以下での衝突回避ができるようになったほか、ゆっくり歩いている歩行者も認識し、全車速追従クルーズコントロール(100km/h以下で追従走行する)、誤発進抑制制御、車線逸脱やふらつきを知らせる警報も内蔵するなど、機能が大幅にバージョンアップしている。
それだけではない。今回のマイナーチェンジでは2.5リッター自然吸気エンジンが新世代ユニットに切り替わってもいるのだ。
パワーも安全性も向上
試乗車は新しい2.5リッター自然吸気エンジンを採用した「2.5i EyeSight」だった。ちなみにEyeSight搭載グレードはこれ以外に「2.0GT EyeSight」があり、2リッターターボはこれだけになった。また、EyeSightの設定がない自然吸気の2リッターモデルから、前輪駆動が姿を消した。つまり全車4WDとなった。ミニバンとしては思い切った設定である。
エクステリアはドアミラーと17インチアルミホイールのデザインを変えただけなので、印象は変わらない。でもキャビンに入ると、旧型との違いに気が付いた。2列目の中央席にヘッドレストが追加され、シートベルトが3点式になっていたのである。
これはエクシーガに限らず、最近の国産車で目立つ動きだ。2012年7月以降に生産される乗用車には、全席に3点式ベルトが義務づけられたからである。法律で決められてから初めて装着するというのは情けない限りだが、EyeSightの緊急回避ブレーキはごく普通のドライバーの急ブレーキ以上に強烈で、2点式シートベルトやヘッドレストなしでは体を傷める恐れもあったのだろう。
2.5リッターエンジンは、先にレガシィに積まれたものと共通のロングストローク型だ。最高出力と最大トルクは170ps、23.4kgmから173ps、24.0kgmへと向上し、リニアトロニックと呼ばれるCVTの高効率化とアイドリングストップ機構の追加もあって、燃費はJC08モードで13.2km/リッターを達成している。
今回の試乗は、少し前に試乗記をお届けしたSTIプロデュースの「エクシーガtS」と同じ日に行った。ターボエンジンならではのトルクの盛り上がりと活発なサウンドが印象的なtSと比べると、2.5iのエンジンは黒子のようだった。
ミニバンではトップクラスの乗り心地
少し前までのスバルの水平対向エンジンは、低回転のトルクが細く、それならとアクセルペダルを踏み込むと独特のサウンドを響かせるなど、実用車としては主張が強かった。それが熱狂的なファンを育てたわけだけれど、低回転から力強く、回転を上げずとも望みの加速が手に入る「エクシーガ2.5i」をドライブすると、こちらのほうがミニバンにふさわしい感じがする。
スバルらしさが薄れたわけではない。運転モードを切り替えられる「SI-DRIVE」を「I」(インテリジェント)から「S」(スポーツ)に切り替えれば、他のリニアトロニックと同じように、MTで各ギアを引っ張ってつないでいくような加速感が手に入る。さらにレスポンスな走りが欲しければ「S♯」(スポーツシャープ)をセレクトすればいい。ちなみにこのS♯でもアイドリングストップは効く。
高速道路での直進安定性は、同時に乗ったtSほどではなかったものの、4WDのおかげもあって不満のないレベルだった。全車速追従クルーズコントロールは、輸入車に比べると穏やかな反応だったが、安楽な巡航が味わえるという点は同じ。なによりも200万円台中盤の国産ミニバンでこの機能が手に入るのは画期的だ。
そしてそれ以上に褒めたいのはシャシーである。豊かなストロークがもたらすしなやかな乗り心地や、腰高感がまったく存在しないハンドリングは、数あるミニバンの中で間違いなくトップクラスだろう。水平対向エンジンがもたらす重心の低さが、しっとり動くのにグラッとこない足を実現しているようだ。
エクシーガは、いままでは、その実力を味わう人が限られていたように思う。ワゴンのようなスタイリング、スライド式ではないドア、水平対向エンジンに4WDというマニアックな内容を持つために、奥さま方の同意を得ることが難しかったと予想できる。
でも新型にはEyeSightがある。これがきっかけとなって、エクシーガの走りの良さを“愛妻”も含めて多くの人が体感すれば、日本のミニバンシーンも少しは味のある方向に変わるのではないだろうか。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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