日産スカイライン4ドアスポーツセダン25GT-V(4AT)【ブリーフテスト】
日産スカイライン4ドアスポーツセダン25GT-V(4AT) 2000.09.08 試乗記 ……309.1万円 総合評価……★★★ニッポン代表の奇態なスポーツセダン
スカイラインとはさしずめ、イタリアだったらアルファロメオ。あるいはドイツだったらBMW。わが国を代表するスポーツセダンだ。日産にとっての基幹車種のひとつであるべきはずの同車だが、最近の売れ行きは月販オマケで1000台前後とふるわず。ただしその一方で、中古車情報誌掲載の物件数がダントツ一位だったりはする。しかもほとんど2ドア。
クルマの特徴は、まずメカニカルレイアウトのアナクロぶり。Cd対策どこ吹く風のバンカラ趣味な車体外形。そして、血の道あげて鍛えあげた運動部精神バリバリのシャシー性能。
事実上の国内専用車種ということで、伝統はすなわち長い「陸封」期間を意味する。国際標準からすればかなり異色の、もっと正直にいえば、奇態なスポーツセダンだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
10代目にあたる現行スカイラインは、1998年5月に登場。4ドアスポーツセダンと、実質2ドアセダンの2ドアスポーツクーペがある。エンジンは、2、2.5、2.5リッターターボの3種類。いずれもストレート6。駆動方式はFRと4WD。
(グレード概要)
25GT-Vは、2.5リッターNAモデルに、ターボ用の足まわりを奢った「通」好みの1台。電動スーパーハイキャス(4WS)、フロント4本、リア2本のアルミキャリパー対向ピストンブレーキ、リアスタビライザーなどが装備される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネまわり+装備)……★★★
低レベルのアンチャン志向を丸出しにしたセンス(今回表面的にはわずかに改善)、およびセンターパネルにおける水平基準が狂ったように見える難点等を除いて??という大マケなオマケをすれば??エルゴノミクス(人間工学的に)はまあ良好。ドラポジのよさも含め、暴走対応型司令室として恥ずかしくないデキだ。これまた見た目にホンのわずかよくなってはいるものの、いわゆる質感は「ほしがりません勝つまでは」の世界。覚悟しといてほしい。
(前席)……★★★★
なにより印象的なのは、スポーツカーなみに低い着座位置。セダン一般の水準からすれば異例だが、スカGだからこれでいいのだ。実際、座るとかなりソノ気になる。同様にかけ心地も。セダンとしては異例のカタさだが面圧分布は良好。さすがに走りのための機能は鍛えあげられている。暴走対応度の高さを考えれば乗降性もかなり優秀。空間は広さを重視してない系。上屋が四角いので狭苦しくはない。スカGだしこれでいい。
(後席)……★★★
やはり低い着座位置。広くない空間。だが必ずしも苦しゅうない。座面下にタンクがないぶんの有利さか、クッションのエグりは深いが底突き感なし。そんなにダメじゃない。要改善はヘッドレスト。背もたれ上端をいいわけ程度に盛り上げただけではヘッドレストとすらいえない。それと、肩甲骨より上の部分の背もたれをもう少し起こしてほしい。あとは音環境。風切り音ならぬ雨天の水切り音があからさまに筒抜けなのはガッカリだ。
(荷室)……★
ゴルフバッグ4コは積めるらしい。が、このみっともないカタチよ。ガタイの立派さから想像すると情けなくなる狭さよ。R32 から数えて3世代ほったらかしの、ハッキリいって世界水準から10年遅れたパッケージング。それが一発でバレる。奥がヒナ段状になっているのは燃料タンクにケラれた結果。本来ならとっくの昔にリアサス直前=後席座面下に引っ越していてしかるべし。補強バー設置用のスペースとして活用してる場合じゃない。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
カチンカチンに鍛えあげられた車体およびシャシーに対して、ターボなしの2.5リッターは線細すぎ。ことにATだとお得意の高域性能も曇りがち。爽やかに回る感触は相変わらずイイが。オートマは、単体でみれば日本車として特に可もなし不可もなし。とはいえ、エンジンの性格のせいもあってスカG用としてはモノ足りず。せめて5段を。というか、このアシこのエンジンには現状だとMTしか似合わない。NA+AT前提なら、17インチの仕様はナシでしょう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
操舵入力に対する反応がここまでソリッドでニジみやブレと無縁なクルマはちょっとない。エンジンやタンクの搭載位置のダサさは、眺めれば一目瞭然だが乗ってもわからず。痛快、というより絶句モノ。ターボと同じキリキリに締め上げられたアシなのに、車体のソリッド感も例外的に高い。さあこい段差。単に剛性が高い低いのレベルを超えて、もはやこれはスカG独特の得難いアジである。乗り心地もむしろ「いい」というべきだろう。
(写真=五條伴好)
【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2000年9月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:1073km
タイヤ:(前)225/45ZR17/(後)同じ(いずれもBridgestone Potenza RE040)
オプション装備:ナビゲーションシステム(24.6万円)/サイドエアバッグ(4.0万円)/ボディコーティング(3.5万円)/特別塗装色(0.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション(プレス向け試乗会)
走行状態:市街地(8):山岳路(2)
走行距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

森 慶太
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。