日産エクストレイルX(4AT)【試乗記】
『走ってもヨシ!』 2000.11.06 試乗記 日産エクストレイルX(4AT) ……220.0万円 2000年10月19日に発表された日産の小型ヨンク「X-TRAIL(エクストレイル)」。「ターゲットユーザー」ならぬ「パートナーユーザー」に、「横乗り系」若者を据えた「新生」日産の意欲作。CG編集部大谷秀雄が、北海道で乗った。4人と4人の荷物を積んで
ここ数年活況つづきのいわゆる「ライトクロカン」市場に、ついに日産も参入を果たした。2年半前にプロジェクトをスタートさせたというエクストレイルは、車名「X-TRAIL」の「X」が、エクストリーム系スポーツへの掛詞になっている。
このことからもわかるように、中心的な購買層に据えられたのは20代の若者で、185.0から220.0万円(2リッターNA)の価格帯で揃えられたラインナップもそれを物語る。
フロントに横置きに搭載される「QR20DE」型直4(1998cc:150ps/20.4kgm)は、QRシリーズとしては初披露となるユニット。ブルーバードシルフィの「QR20DD」型のように直噴ガソリンタイプではないが、いわばその普及版。
来年2月には、2リッター直4ターボの「SR20VET」(280ps、31.5mkg)を与えられた「GT」が追加される予定で、こちらには282.5万円のプライスタグが付けられる。
全長4445×全幅1765×全高1675mmというディメンションは、RAV4(5ドア)やCR-Vよりも長く、幅広く、いっぽう全高だけが一番低い。全高が低いのは乗降性を助けるため。
「4人乗って4人分の荷物がきちんと積める」と主張されるように、2625mmと長いホイールベースを活かして、荷室に1000mmの奥行きを稼ぎだした。
左右のフロントフェンダーには、日本車の生産型としては初めて樹脂製フロントフェンダーを採用した。軽くブツけても、凹んで、すぐ戻る。
室内ではセンターメーターも目を引くが、撥水加工シートや、カーペットを廃して荷室床面にプラスチック製「ラゲッジボード」を用いたことが注目される。これらはアウトドアで濡れた身体で座る場合や、汚れた荷物を荷室へ積むケースを想定してのことだ。実生活での使い勝手を重視したのである。
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「シャーン!」と気持ちいいけれど……
つぎに北海道「日産HPG」のサーキットで試乗した印象を述べる。
テスト車にとって、こうした場面で何より大切なのは、4輪のフィールをドライバーに途切れることなく伝えること。ステアリングに大舵角を与えようと、4輪が大きく流れ出そうとも、常にドライバーに正確なインフォメーションを与える。これは、SUVにとってはけっこう難しい要求である。
エクストレイルには、合格点を与えられた。日産ライトクロカンの、ボディやステアリング系、およびサスペンション系から感じられる剛性感が高く、4輪からの情報をじゅうぶん得られたからだ。
エクストレイルは、SUVとしては優れたハンドリングをもつクルマである。
前後ともやや高めにロールセンターが設定され、SUV用タイアのグリップはそれなりながら、ステアリングレスポンスは良好。S字コーナーなどではリアのロールの切り返しも速くキビキビしている。
スピンモードに入りかけても、先回り制御されるオールモード4×4システムが有効に作用して、スロットルペダルを開ける方向で操作する限り、瞬時に安定した弱アンダーステア傾向へ転じてくれる。これはダートコースでも同様で、きわめて安定した高速走行を披露し、発散する兆しすら見せなかった。
CVTC(連続可変バルブタイミングコントロール)を備えたQR20DEユニットについては、5000rpmからトップエンドまで「シャーン!」と気持ち良く回る印象が強かった。なかなかいいエンジンだけれど、SUV用としては、4000rpm以下の中速トルクをもっと重視してもよいのでは、と思った。
(CG編集部 大谷秀雄/写真=荒川正幸)

大谷 秀雄
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