日産グロリア300TX(4AT)【ブリーフテスト】
日産グロリア300TX(4AT) 2000.12.21 試乗記 ……419.0万円 総合評価……★★★井のなかの蛙
ドライバーズカーの意味あいが強く、内外いかにも高級そうな重量級FRセダン、という意味で、たとえばBMWの5シリーズはグロリアにとってひとつ非常にわかりやすい目標、あるいは現実的な理想像だ。クラウンもそうだが、各種ディメンションも近いといえば近い。
で実際、グロリアは「5シリーズのようなモノ」になっていなくもない。大まかにいえば。
すくなくとも、乗った感じドライバーズカーとしてはトヨタの競合モデルよりそれらしく出来上がっている。というか、いってみれば、そこがトヨタと日産の基本的な違いだ。ひとりグロリアにかぎらず。たんにアシがカタい/ヤワいというレベルでなく、やはり日産のクルマは全般的に走るのが好きだ。乗る人間のコトをわかっている。
で、その要因は走行実験チームの力量の違いか、メーカーの考え方の違いか。ということ以外、このクルマに対する感慨は特にない。
現行型で変えてきたというメカニカルレイアウトも、よく見れば若干の手直し程度。アウディA6風のスタイリングも、芯から革新的には見えない。Eクラスや5シリーズや、それから各種トヨタFRと較べると完全に世代が古い。「国内専用モデルは井のなかの蛙」といわれても反論できまい。「現実=市場」においては、もはやグロリアとて井の中の蛙ではいられないのに。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1999年6月に、グッと斬新なマスクをひっさげて登場。「セドリックはノーブル、グロリアはダイナミック」との性格付け。グロリアの方がややスポーティである。エンジンは、2.5、3リッターのV6「直噴」ユニットと、3リッターターボ、それに4WDモデル用の2.5ストレート6の4種類。トランスミッションは基本的に4AT。最上級グレード「300ULTIMA-Z」には、円盤を組み合わせた無段変速機「エクストロイドCVT」が採用された。
(グレード概要)
「300TX」は、3リッターモデルのエントリーグレード。上級版たる「300TXプレミアムリミテッド」は、ステアリングホイールにオーディオ、エアコンのスイッチが付き、CDオートチェンジャー+7スピーカーなどオーディオ類が奢られ、センターコンソールのディスプレイが5.8から7インチにアップするなど、装備がより充実する。機関的な差異はない。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
いわゆるデザインは明らかにダサい。外観でアウディA6風をやったのであれば、こちらももうちょっと考えたら良かったのではないか。質感(高そうな感じ)も、明らかにトヨタ車に2、3歩譲る。地図モニター画面、およびその周辺の使い勝手の設計も未消化。同じくトヨタ車に負けている。ヘンな話、ショーバイを考えたら走り云々よりよほど大事な部分である。「しっかりせい!」といいたい。
(前席)……★★★
たとえば山道あたりをトバしてみるとよくわかることだが、足元空間も含めてのエルゴノミクス(人間工学)は、同種のトヨタ車より確実にいい。連続するカーブでアタフタする身体を、ドライバー自ら安定させるための努力が少ない。といって、特別サポート形状が仰々しいタイプでないのはいうまでもない。要するに、ダンナ系グルマであっても「ちゃんと走ってるナ」ということがわかる。ドライバーズカーとしてそれらしい、と思わせるひとつの要因は、たとえばこのへんだ。
(後席)……★★
Eクラスあたりと較べたら、あっさり「ゴメンナサイ」というほかない広さ、というか狭さ。日本の5シリーズだし、もともと世界の強豪各車と戦う気もないクルマなんだから、と思えば「まあ、こんなもんですか」。グロリアほどのサイズがあれば、FRであっても、あるいは突き詰めた空間設計を特にやらなくとも、それなりの空間は確保できるものだから。
(荷室)……★★
大筋、後席に同じ。従来背もたれとトランクの間にドッカとあった燃料タンクは多少前方に引っ越し。が、本格的に後車軸前/後席座面下へ移ったわけではない。被追突時の安全性を試験合格レベルで確保できればいい、というような発想がみてとれなくもない。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
黙って乗っているうちは、てっきり2.5リッターだと思っていた。降りて調べたところ3リッターだった。単体でいえば「VQ」ユニットは傑作エンジンだと思うが、グロリアの車体との組み合わせでは常用域のトルクというか、ありがたみがやや希薄である。上まで回せばそれなりに速く、かつVQだけに音や振動の質もいいが、これではちょっと……。オペルのV6でも載せてあげたい。それと、シュンシュン系のアジで売るなら、せめてオートマは5段にしてもらいたい。ギアが近づいて出力のつながりがよくなって、もっと気持ちよくなるハズ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
アシの設定はかなりわかりやすいダンナ系。すなわちソフトライド志向。が、トバすと意外や(あるいは意外でないのかも)よくついてくる。ロール挙動ひとつとっても、沈みと戻りがキレイ。クルマ全体に、意に反したヘンな動きをしない。アジの領域に達しているステアリングフィール。乗っているうち知らず知らずに運転がザツになる、ということがない。さすが日産車、ということなのか。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2000年11月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:1999年型
テスト車の走行距離:14363km
タイヤ:(前)215/55R16 91V/(後)同じ(いずれもヨコハマ Advan A460)
オプション装備:マルチAVシステム(32.0万円)/キセノンヘッドランプ(6.0万円)/ボディコーティング(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:275.4km
使用燃料:35.0リッター
参考燃費:7.9km/リッター

森 慶太
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