トヨタ・ハイラックスサーフSSR-X(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ハイラックスサーフSSR-X(4AT) 2000.09.20 試乗記 ……343.3万円 総合評価……★★★★トラック万歳!
見ればわかるとおり、同車の原型はボンネット型トラックだ。つまりハイラックス(と書いてしまうと実にアタリマエだが)。独立梯子フレームをその象徴として、ハードウェアの基本的な構成はそれこそモーガンといい勝負するぐらいに古い(ピックアップの登場は1968年!)。
で、そのことがサーフにとっては決定的だった。「元がトラックである」という事情のおかげで同車はくだらないモノにならずに済んだ。もっといえば、サーフは現行トヨタ中屈指の傑作車だとすら個人的には思う。
ハードウェアのインフラ事情=「しょせんはトラック」がインプレ向きの静かさやいい乗り心地やいいハンドリングその他の追究に少なからず歯止めをかけさせた結果、皮肉なことにかえって非常に快適で楽しくかつ実用的クルマができた。いまさら流行りのジャンルでもなかろうが、暮らしの福祉向上には確実に役立つ1台だ。
なお、今回のテスト車は、2000年7月31日に追加された直噴ディーゼルターボ車。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行モデルは、1995年12月に登場した3代目。シャシーは一新されたが、ラダーフレームの構造は踏襲された。当初のエンジンラインナップは、3.4リッターV6、2.7リッター直4のガソリンエンジンと、3リッター直4ディーゼルターボの3種類。2000年7月31日に、ディーゼルがコモンレール式直噴に変更された。
(グレード概要)
SSR-Xは、下に「V」、上に「G」を置く中堅グレード。リアスポイラー、フロントフォグほか、「REAS」と呼ばれる、左右のダンパーを結んで減衰力を調整する機構が装備されない。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
車両前方の見切りが素晴らしく良好。それだけで乗る楽しみと安心感がナンボか増す。具体的にはボンネットがよく見え、かつその形状が明快で、ダッシュボードの造形も量的に控えめ。またAピラーも位置が手前でよく立っている。すべてトラックだからこそ。
細かい話としては、たとえばギアレバーその他の操作感が適度にゴツいのもいい。これと較べると、最近の乗用車のはほとんどゲーム機なみ。真剣に運転する気が失せる。
(前席)……★★★★
シートそのものはシボレー・ブレイザーあたりに少々負ける。座面のたっぷり感がイマイチ。が、日本車の水準でみれば優秀なほう。
運転姿勢は良好。ほぼ教科書どおり。以前はヘンに足元だけ浅いキライがあった(テラノは今でもそうだ)が、フレームから見直された現行は問題なし。幅、高さともに広くない空間は、しかしカタチが素直に四角いので、実際はヘタなセダンやミニバンよりずっとずっと快適。それもトラックならでは。
(後席)……★★★
やはり空間のデカさは大したことなし。ただし、シートの掛け心地はこのテ(概してよくない)のなかではわりかしマトモ。特筆してホメたくなるほどでもないが。ここに関しては「トラックだから」というインフラ事情に対するトヨタの諦めの悪さ(?)がいい方向にはたらいた感じだ。
全体として居心地は悪くない。もっとも、事前に過大な期待をいだかせないから、というのも要因として少なからずるあるとは思う。
(荷室)……★★★
後席を畳めばMTB1台を走行可能状態のまま横にして積み込むことができる。ちなみに、軽の箱バンなら自転車の分解作業一切なしで最低2台を立てたまま積める。
後席シートベルトのアンカーが自立式でないのは減点。ボーッと畳んでボーッと戻すとクッションの下に潜ってしまう。ユーザーが気をつけていればすむ問題かもしれないが、「GOAより先にやるべきことがあるでしょ」とはいっておきたい。とりあえず。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
新規導入の直噴ディーゼルターボはかなりいい。分厚くかつ流れるように自然なトルク特性といい、また円やかな音および振動の特性といい、ほとんど文句のつけようがない。乗った印象でいえばベンツML270CDIよりも上だ。ということは相当。速いしアジも濃い。
エンジンが太っ腹なおかげもあって、オートマのことはほとんど気にならない。というか運転している最中ほとんどその存在を意識させられない。つまり悪くないのだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
バネ上質量(もちろんデカい)とタイヤ空気容量(同じく)、という基本特性が乗り心地のよさに関しては決定的。小手先の工夫ではどうやっても出せない快適さを、したがってサーフはモノにしている。身体が喜ぶ。
走りはとにかく素直。舗装路でプリメーラに対抗しようとした結果テラノは無残なことになってしまったが、サーフは違う。やはり、いい意味で「しょせんはトラック」。楽しい。MR-Sよりよほどスポーツカーだ。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者 :森 慶太
テスト日 :2000年9月9日から9月10日
テスト車の形態 :広報車
テスト車の年式 :2000年型
テスト車の走行距離 :1267km
タイヤ :(前)265/70R16/(後)同じ
オプション装備 :LSD(3.0万円)、電動ムーンルーフ(10.6万円)、ナビゲーションシステム(17.5万円)、パッケージA(フロントバンパープロテクター+バックドア付きスペアタイヤキャリア+リアスポイラー+フロントフォグランプ=12.5万円)
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :市街地(10)
走行距離 :?-
使用燃料 :?-
参考燃費 :?-
|
|
|
|
|

森 慶太
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。







































