トヨタ WiLL VS1ZZ-FE(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ WiLL VS 1ZZ-FE 2WD(4AT) 2001.06.05 試乗記 ……180.7万円 総合評価……★★★変種第2号
K.ディックの短編に登場するシミュラクラ(アンドロイド)は、人間と見分けがつかないほど完成されているにもかかわらず、破壊されると真空管や歯車が飛び出す。WiLL VSは、SF映画から飛び出してきたような、というかそのまま使えるカタチをしているにもかかわらず、中身はカローラをベースにした内燃機関のクルマである。
若年層の顧客獲得に必死なトヨタが、異業種の企業と立ち上げた「WiLL」ブランドの第2号。“カボチャの馬車”をイメージしたカマトト……、失礼、メルヘンチックなWiLL1号「Vi」と比較すると、「VS」はいわば“男の子”仕様だ。デザイン画から抜け出たような“ナマ”なカタチが、そのままカタログに載るのが、ニッポンイチの自動車メーカーのスゴイところ。衝突安全ボディ「GOA」をはじめ、ダブルエアバッグ、電子制御前後制動力配分装置、ブレーキアシストなど、安全面でも抜かりない。
「開発期間短縮」「少量生産のノウハウ」「『ヤルな、トヨタ!』のイメージ」を獲得できれば、旬がごくごく短くてもかまわない、刹那のパイロットモデル。普遍的な「美」を目指さない点でも、自動車の変種だ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年4月6日にデビューしたカローラ(フィールダー)ベースの5ドアモデル。アサヒビール、花王、近畿日本ツーリストなどとすすめる異業種合同プロジェクト「WiLL」のブランド名を冠する。2000年1月17日に登場した「WiLL Vi」に続く第2弾。エンジンは、バルブ駆動システムが異なる「1ZZ-FE」「2ZZ-GE」、2種類の1.8リッターユニットが用意される。それぞれ136ps、190psを発生するFFモデルのほか、125psの4WD版もラインナップされる。トランスミッションはいずれも4AT。
(グレード概要)
136ps版と190ps版の装備面での違いは、ステアリングホイールが「合皮/本革」、CD/MD一体型ラジオが「オプション/標準」であるところ。機関面では、ハイチューンモデルにはステアリングホイールのボタンでシフトを行える「スポーツステアシフトマチック」が搭載されるほか、フロントブレーキのローター径が14から15インチにアップ、制動力が強化される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
航空機のコクピットをイメージしてデザインされたインパネまわり。好き嫌いは別にして、ダッシュボード上面の一部やパネルが、グレー基調のインテリアに色調を揃えながら外板に合わせた紫になっていたり、ドアトリムにやはり暗い紫の柔らかい素材を使ったりと、非常に凝った内装だ。ATシフターは、アルミダイキャスト製。
(前席)……★★★★
左右のバックレスト形状が異なる、これまた凝った専用シート。着座位置は、ベース車フィールダーより若干低いというが、それでも絶対的には高め。座面の長さがたっぷりしているのがイイ。背もたれの幅もあり、全体にあたりが柔らかい安楽寄りのフロントシート。追突されたときに、頸部への衝撃を緩和する機能をもつ。
(後席)……★★
意図的に閉所感が演出されたリアシート。後席のサイドガラスはひどく狭いが、そのぶん(?)、ちゃんと下まで窓がおりる。「座り心地より、バックレストを倒したときに荷室フロアがフラットに延長されることを優先しました」と開発陣がいうとおり、座面は平ら。広々感はないが、スペースそのものは、膝前、頭上とも確保される。
(荷室)……★★
リアにいくほど狭くなるボディ形状ゆえ、ラゲッジルームの使い勝手はいまひとつ。床面最大幅108cm、奥行き81cmと、それぞれカローラセダンより42cm、14cmも小さい。リアシートのフォールディングが簡単なのが救いか。床下には、深さ14cm前後のアンダートレイが3カ所設けられる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.8リッター「1ZZ-FE」ユニットは、吸気側バルブの開閉タイミングをコントロールする「VVT-i」を採用。2500rpm前後のトルクが厚い実用ユニット。「ビーン」と独特の共鳴音を小さく響かせる。スロットルの踏み始めの力強さとはうらはらに、いざ速く走らせようとすると、意識的に高い回転域を使う必要がある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
前マクファーソンストラット、後トーションビームの形式はフィールダーと同じだが、WiLL VS専用のしまった足まわりをもつ。街なかで「不快な硬さ」はないが、一方、期待されるほどシャープなハンドリングを見せることもない。クルマの楽しみ方として、ドライビングプレジャーは、もう古い?
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年5月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:2700km
タイヤ:(前)205/55R16 89V/(後)同じ(いずれもヨコハマ Advan A681)
オプション装備:CD/MD一体型ラジオ(5.7万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:295.2km
使用燃料:26.3リッター
参考燃費: 11.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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