トヨタ WiLL VS(4AT)【試乗記】
『「ケッ」と思っていた』 2001.04.28 試乗記 トヨタ WiLL VS(4AT) ……175.0から205.0万円 アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、コクヨ、江崎グリコ、松下電器、そしてトヨタ自動車が参画する異業種合同プロジェクト「WiLL」。“カボチャの馬車”こと「Will Vi」に続く、トヨタのWiLL第2号として、「理屈抜きにかっこいいスタイル」を謳う5ドアハッチ「WiLL VS」が登場した。自動車ジャーナリスト、森 慶太がヨコハマから報告する。カローラとは別モノ
正確にいうとワゴン=フィールダーらしいが、WiLL VSはハードウェア上カローラと兄弟関係にある。でもって、これまで私が乗ったことのある現行型カローラは、『webCG』で取材したフィールダーのヨンクの1.8リッター(125ps)の4ATモデル「1.8S 4WD」と、アレックスの1.8リッター(190ps)「RS180 Sエディション」の6MTおよび4AT。
WiLL VSの内外をしばし眺めてチョイ乗りして、またしばし眺めた範囲の印象でいうと、カローラと較べてまずシート(前席)の、コトに座面のデキが明らかにイイ。基本骨格は同じものらしいが、クッションの形状や伸縮特性(わずかにコストを余計にかけるだけで確実に違ってくる)がおそらく違う。それに、イニシャルの着座位置もじゃっかん下げられた。着座姿勢やドラポジも、私の場合でいうと上下調整をいちばん下にすればとりあえず満足できる状態が得られた。
ダッシュボードも視覚上の高さをカローラ比でわずかに低くデザインされており、運転席に収まって前方を見渡したときの違和感は格段に減った。たったそれだけのこと、と読めるかもしれないけれど、実質は大違い。クルマとドライバーの一体感がカローラとはまるで別モノのようだ。もちろん、いい方向に。
一体型背もたれでヘッドレストの長さが足りないのはタマに疵(安全上はけっこう大問題だが、その点でカローラが素晴らしいというわけでもないし)。
細かいようで実は決定的に重要なディテールとして、ステアリングホイールもカローラランクス/アレックス用のモノよりハッキリとヨカッタ。触っているだけでイヤになってくるあのディンプル加工のレザー(合成皮革かもしれない)が、巻いてない。フツー。心なしか、形状そのものも人間工学上好ましいような……。で、さらに嬉しくなる。
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ツメられている
それと、VSはクルマの動きそのものも、カローラ比で明らかに一貫性が増している。簡単にいって、積極的に運転したい気持ちにさせる。と思ってエンジニアの方に聞いてみたところ、やはりというかアシ関係はバネもダンパーもブッシュも専用チューニング。おそらく、影響が大きいのはブッシュだ。そこだけ柔らかくしてアタリのカタさをゴマカす→結局は操縦性も乗り心地もヘンになる、という“インチキ・スパイラル”にハマらずに済んだのだろう。
前シートのマトモさも含めて、これらは基本的にいわゆる“企画モノ”ならではの縛りのユルさが奏功したモノだと思われる。あるいは、カローラと違って仕様のバリエーションがはるかに少ないぶん、チューニングを一球入魂(正確には三球入魂か)でやれたからこその結果でもあるはずだ。FF用=アドバン、ヨンク用=ミシュランのタイヤとのマッチングも、やはりそれなり以上にツメられている印象だった。
私が乗ったカローラやカローラランクス/アレックスは、いずれもちゃんとしたつくり込みや走り込みをしたうえで出てきた仕様とはとても思えないものばかりだった。端的にいってヒドかった。
しかし、VSはいささか事情が異なるようだ。ミソッカスになりがちなヨンクについても、今回は夏も冬もしっかり走り込んでチューニングを煮詰めたという(夏もガマンなしに乗れるヨンクを、という声が降雪地域のお客からあったそうだ)。すべての仕様にチョコチョコ乗ったあとでそうきいて、正直「なるほど」と思った。
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乗ってみてよかった
エンジンやオートマはカローラ用と同じもののはずだが、上記のような次第で今回はインフラ事情が大幅改善されていた。そのためか、いずれもカローラで乗ったときより印象がよかった。
後席の居心地は、しかしカローラ比で明らかに格落ち。こちら=乗員にむかってナナメにまっすぐ下がってくるルーフ形状は演出と受け取れるし、またサンルーフの用意ナシだから、頭上の空間にも明らかな大破綻はない。しかし背もたれは平板で、座面は尻が前にズレがち。おまけに、運転席から振り返って視界に入ったときのその姿のショボさ。開発スタッフにそう告げたところ、「畳んだときのスタイルを優先しました」との返答だった。
たしかに、リアシートのバックレストを倒して荷室を拡大すると(倒すのはカローラと違って背もたれのみ)見た目はそれなりオシャレ。フロアの高さ(ものすごく高い)あたりは冗談モノだが、フラットさといい内張りその他の充実度といいトヨタ車としてはなかなか。後席は、いっそ常時畳みっぱなしで乗るといいのではないか。
全体として、カローラ比でクルマとして確実にかつけっこう本質的によりマトモであるところがいくつかあったのが強く印象に残った。そのせいか、商品のウリである見た目のインパクトやオシャレさは相対的にむしろ順位が低かったが、まあいいでしょう。
「乗ってみてよかった」と今回わりと正直にいえる。なにしろ、“1号車”こと「WiLL Vi」の次ということで、乗る前は心の底から「ケッ」と思っていたから。
(文=森 慶太/写真=高橋信宏/2001年4月)

森 慶太
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