スバル・プレオ RS 2WD(CVT)【ブリーフテスト】
スバル・プレオ RS 2WD(CVT) 2001.08.24 試乗記 ……119.5万円 総合評価……★★★夢膨らむドライブトレイン
「ビート」「カプチーノ」「AZ-1」亡き後、軽自動車のスポーツモデルといえば流行のモノスペースベースが全盛。スバル軽のホットモデル、「プレオRS」もトールボーイのセダンに、軽最強を誇る64psスーパーチャージャーユニットと、7段のシーケンシャルシフトが可能な「スポーツシフトi-CVT」を組み合わせてつくられた。
スポーツシフト付きのCVTが先代ヴィヴィオに搭載されて登場したときは、無段変速のCVTをわざわざ多段化する滑稽さが先に立ったものだが、乗ってみると目からウロコ。本格的なスポーツカーも顔負けのドライビングファンに溢れていた。CVT本来の伝達効率の良さとクロースレシオが相乗効果を生み、エンジンの一番美味しいところをリニアにダイレクトに楽しめるのである。プレオのスポーツシフトi-CVTではシステムがさらに進化、変速は僅か0.2秒で完了する。
ただし、惜しむらくは専用ボディでないことだ。軽でありながら「あれもこれも」と欲張り気味のプレオは、ファミリーユースにはよくてもスポーツドライビングには少々不向き。なかでも頭上にコブシ2個半が楽に収まるスカスカの天井はいかにも艶消しである。
今のご時世、多額の開発費を投じて少量生産のスポーツカーをつくるのはリスキーにすぎるというなら、同じGMグループになったよしみでスズキからカプチーノのボディを借り受けるというのはどうか。なに、エンジン横置きじゃボディが載るまいだって? それならFWD(前輪駆動)ユニットがそのままミドシップに載るビートかAZ-1はどうか。ライバルでもビジネスベースでなら不可能とは言い切れない時代なのだから。プレオのドライブトレインは、そんな夢膨らむ魅力のパッケージである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年の軽自動車規格改定に合わせ、ヴィヴィオの後を継いで登場。ボディは、背の高い5ドアのみである。標準車(?)「プレオ」ほか、レトロ風フェイスの「プレオ・ネスタ」、ニッコリ顔の「プレオ・ニコット」、そして「プレオ・バン」がある。いまや過給機として珍しいスーパーチャージャーを備えた、個性的なエンジンラインアップを誇る。すべて直列4気筒で、シングルカムのNA(45psと46ps)、インタークーラー付きマイルドチャージ(60ps)、同スーパーチャージャー(64ps)、ツインカムのインタークーラー付きスーパーチャージャー(64ps)と、種類が豊富。トランスミッションは5MTとCVT、駆動はFFと4WDが用意される。
(グレード概要)
「RS」は、プレオ中最もスポーティなグレード。最強のDOHC16バルブスーパーチャージャーユニット(64ps、10.1kgm)とステアリングホイールのスポークに付いたスイッチで7段のシーケンシャルシフトが可能な「i-CVT」を搭載(5MTモデルは用意されない)。リアブレーキをドラムからディスクに格上げしてストッピングパワーも強化、タイヤサイズはスポーティな「155/55R14(4WDモデルは155/65R13)」となる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
プラスチックの質感は上々。軽だからといってみじめな思いはしなくて済む。小物入れの数は多いが、小さかったり薄かったりで、中途半端なのが癪のタネ。限られたスペースのなかで、居住性相手に陣取り合戦をするとこうなる? 4枚のドアすべてにパワーウィンドーが備わり、キーレスエントリーも付くのは日本車の常識かもしれないが、海外の小型車では珍しい豪華装備。
(前席)……★★
ダッシュボード、ドア、ステアリングホイールがドライバーに近く、胸元の狭苦しさは免れない。それを救うのがAピラーを立て、ルーフを高く取った視界の良さだが、天井だけが妙にスカスカでもったいなさが募る。まるで浴槽がバスタブの露天風呂。風切り音も目立つ。
(後席)……★★
トールボーイのフォルムとアップライトな着座姿勢で、ヘッドクリアランスとレッグルームは軽の水準をはるかに上まわる。50:50分割可倒式(定員は4名)リクライニングシートもスペックの上では魅力的だ。「では快適か?」と言えばそうではない。シートの造りがあまりに平板でリラックスできないのだ。「仏造って魂入れず」の感あり。
(荷室)……★★★★
本来のラゲッジスペースは小さいが、リアシートを倒すことによっていかようにでも対応でき、拡大余地が大きい。床はフラットで使い勝手がよく、跳ね上げ式のテールゲートは、キーやオープナーなしで開くのが便利。それもバンパー高からガバッと。その実用性、Bピラー以降は乗用車というよりバン?
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
軽には贅沢な4気筒DOHCスーパーチャージャー・インタークーラー付きを奢られただけあって、スムーズかつパワフルなのは確かである。トルクに余裕があるため、80km/h巡航では2200rpmにすぎず、概して静かだ。リミットは7500rpm、Dレンジフルスロットルでは6000rpmで自動的にシフトアップされる。その実力を最大限に引き出してやるのが「スポーツシフトi-CVT」と呼ばれるスバル得意のCVTだ。CVTは本来無段変速のはずだが、それを逆手に取って理想のレシオにセッティング、マニュアルモードを選ぶとレーシングカー並みに接近した7段セミオートマチックに変身する。ステアリングスポーク上の「プラス・マイナス」スイッチで操作するシフトアップ/ダウンは、ポルシェのティプトロニックみたいで痛快そのもの。実用上はフルオートマチックでも充分なのに、楽しいからとついつい遊んでしまう自分がいた。コラム式のセレクトレバーは足下が広くていいが、反面ダッシュボード周辺が狭くて建て込んでいるため、空調スイッチが隠れてしまうのは困りものだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
一丁前に扁平率55%の大径タイアを履いているため、低速での乗り心地は硬めでハーシュも認められ、若干バネ下が重い印象もある。しかしすいた高速道路の速い流れにのると、それらが解消、一変して軽量車とは思えないスムーズさとしっとり感に包まれる。つまり普通の小型車と同じような感覚で同じように走れるのだ。ハンドリングも同様、全体としてはペースに見合った水準を確保しているが、軽いだけにフロントの接地感だけは希薄だ。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:道田宣和(二玄社別冊単行本編集室)
テスト日:2001年7月24日から7月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:6622km
タイヤ:(前)155/55R14 69V/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE040)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:184.0km
使用燃料:22.6リッター
参考燃費:8.1km/リッター

道田 宣和
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