ダイハツ・コペンの「ライバル車はコレ」【ライバル車はコレ】
ダイハツ・コペンの「ライバル車はコレ」 2002.08.13 試乗記 ショーカー「Kopen」改め市販モデル「Copen」として登場したダイハツの軽2シーター。電動ハードトップをもつマイクロスポーツにライバルとは? 自動車ジャーナリスト、河村康彦が選ぶ。ダイハツ・コペン(0.66リッター=149.8万円)
「こんなクルマをつくってみたかったからつくった」――開発責任者の口からそんな嬉しいフレーズを聞くことができたのが、軽自動車のカテゴリーながら、「2シーターオープン」というキャラクターをウリにするダイハツ・コペンだ。
ハードウェア的には「ミラ・ターボ」のそれと血縁関係にあるコペンだが、だからといって、単にミラのスタイリングを“お椀型”にリファインし、メルセデスのオープンカーばりの電動リトラクタブル式ハードトップを組み合わせただけではない。いや、それだけでも大したもんだけど……。
コペンの生産にあたっては、工場内に「エキスパートセンター」なる専用の“工房”を準備し、組み立ては特別な教育を受けた高技能者のみが担当するというから、力が入っている。「損をするとはいわないが、実際にはほとんど儲からない」とダイハツ首脳は苦笑い。そうしたことも覚悟の登場がコペンなのである。利益云々より、むしろ全社的な士気を高めることが、このクルマには求められているようだ。
【ライバル車その1】 マツダ・ロードスター(1.6リッター=183.9から204.8万円)
■駆動方式はともかくとして……
「車両本体価格149.8万円!」のコペンに比べると、さすがに値段はハッキリと1ランク上のマツダ・ロードスター。が、その内容をみると「はてさて、コペンとどちらにするか?」と真剣に迷う人も現れそう。
エンジン排気量の大きな差はともかく、マツダ・ロードスターがハードウェア上で、コペンに対するアドバンテージとしてアピールしたいのは、「FR(後輪駆動)」というレイアウトかもしれない。が、イメージ上はともかく、実質的な走りの質感では「両者にさほど大きな違いはない」というのがぼくの印象。すなわち、コペンの走りの質感は、FFレイアウトを採るにもかかわらず極めて高い。微低速域でのサスペンションの動きのしなやかさなどは、むしろコペンがマツダ・ロードスターに後塵を浴びせてしまいそう。微低速だけど。絶対的はともかく、コペンのコンパクトさが功をそうしたのだろう、ボディの剛性感という点でも、いまやロードスターに大きなアドバンテージは感じられない。
【ライバル車その2】スズキ・カプチーノ(0.66リッター=145.8から169.8万円/1995年5月)
■先駆者
いまや“伝説の名車”(?)であるカプチーノのデビューは、すでに10年以上前の1989年(販売は91年から)。回転収納可能なリアウインドウを備えた2シーターのデタッチャブルルーフ型ボディに、3気筒DOHCターボをフロントにミドマウント。FRレイアウトのこのクルマは、販売台数こそ目立たなかったものの、その後に熱狂的なファンを生み出すことになったのはご存知のとおりだ。当時のダイハツの技術者たちは、「ウチでもあんなクルマがつくれたならなぁ……」と何とも羨ましい気持ちでこのクルマを眺めたという。そして、最大のライバルメーカーに対して長年抱いてきたそんな思いが、今回、コペンを登場させたといってよさそうだ。
それを裏付けるかのように、ダイハツのテストコースの片隅には、もう随分と走行距離を重ねたカプチーノが置かれていた。当然ながら「ボディのしっかり感」や「絶対的な走行性能」などは最新のコペンに比べるべくもないものの、このクルマは今でも十分に楽しいと感じさせてくれた。タイトなコクピットに、まるで自分がクルマの部品の一部になったかのように収まると、自然に“やる気”が湧いてくる。自在なハンドリング感覚は、「さすがはフロントミド」と感心させるもの。コペンというライバルが現れたからこそ、スズキにはぜひ“復刻版”を出して欲しい――そんな思いを抱かされるのが、“先駆者”カプチーノである。
(文=河村康彦/2002年8月)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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