リンカーンLS3.9V8(5AT)【ブリーフテスト】
リンカーンLS 3.9V8(5AT) 2001.01.10 試乗記 ……498.0万円 総合評価……★★★アメリカ版マークII
アメリカ人が考える「ちょっとヨーロッパ風」な4ドアセダン。日本ではあまり見かけないが、アメリカでは大ベストセラー。
たしかに、見かけはアメリカ人(日本人やもちろんヨーロッパ人ではなく)がヨーロッパを感じるようなカタチをしているが、いざ乗り込むと、ダッシュボードの各種スイッチ類からして完全なアメリカンテイスト。乗り味も、かつてのアメリカ車を思い出させるフワフワした柔らかいものだ。この点、ライバルのキャディラックは従来の「アメ車」の走りから決別した。もっと引き締まっている。
あくまでアメリカ国内に顔を向けたリンカーンLSは、日本人には非常にわかりにくい。ヨーロッパ風を気取ってはいるが、内実は土着的という点で、アメリカ版のトヨタ・マークIIみたいなものか。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年のニューヨークショーでデビューした、リンカーンブランドのドライバーズセダン。同じフォードグループのジャガーSタイプと、基本的なプラットフォームを共用する。日本には、3リッターV6、3.9リッターV8の2モデルが導入された。いずれも革内装の、ラグジュアリーな仕様である。トランスミッションは5ATのみ。
(グレード概要)
3.9V8は、リンカ?ンLSの上級モデル。エンジン排気量のほか、装備面では、運転席、ステアリングホイールにメモリー機能が付き、また降車時にステアリングホイールが跳ね上がり、シートが下がる、「イージーエントリー&イグジットシステム」が搭載される。革とウッドのコンビステアリングホイール、グローブボックス内蔵に6連奏CDチェンジャーが標準装備されることなどが、V6モデルとの違い。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
スイッチやレバー類の配置が散漫な印象を受ける。日本で使う場合の重要度や頻度がキチンと反映されていない。たとえば、ハザードスイッチは、日本とアメリカではその使われ方が大きく異なる(日本の方がよく使う)。リンカーンLSではいまだに使いにくいハンドルポスト上にハザードスイッチがあるが、ライバルのキャディラックは、ダッシュボードに移し変えた。日本仕様の作り込みの差だ。
(前席)……★★
Aピラーの傾斜が強く、頭をブツけてしまった。全長4.9m、全幅1.9mとボディは小さくないのに、車内は思いのほか狭い。着座位置が低く、乗り込みにくいが、一度座ってしまえば、大ぶりなシートがラグジュアリー。
(後席)……★★★
座面が大きく落ち込む。従って、前席の背面が大きく目の前に立ちはだかって、閉所感が強い。低く座ることになるから、天井との空間は十分確保されるが……。
(荷室)……★★
天地が薄いトランクルームは、奥に行くに従ってどんどん薄くなる変わった形状。開口部も広くないから、大きなものを積むのは難しい。トランク内のレバーを引くと、リアシートの背もたれが左右分割して倒れるのは便利。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
3.9リッターV8は、排気量のわりに(?)軽快によく回る。3000rpmを超えてから、大いにパワーが盛り上がる。セルシオの4.3リッターやBMWの4.4リッターといった最近のV8よりキャラクターがある。加速していて、気持ちがいい。
しかし、エンジンの好印象をトランスミッションが台無しに。マニュアルモード付き5段ATは、変速のショックが大きく、スムーズさに欠ける。3速と4速のギア比が隔たりすぎるのも欠点。使いにくい。4速をすこし落とした方がいいのでは? 全体に、古くさい印象。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地はダンピング不足、といえるほど柔らかい。段差を乗り越えたり凸凹の路面を走ると、ホイールがドタバタと上下するのが車内に伝わる。かつてのアメリカ車の乗り心地。あの味を懐かしみたい人にはいいだろう。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者: 金子浩久
テスト日: 2000年12月4日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式 :1999年型
テスト車の走行距離 :1万6659.7km
タイヤ :(前)215/60R16 94V/(後)同じ(いずれもFirestone Firehawk LH)
オプション装備 :--
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離 :302.8km
使用燃料 :42.5リッター
参考燃費 :7.1km/リッター

-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。