ランドローバー・フリーランダー5ドアES(5AT)【試乗記】
『英国はドコから』 2001.01.24 試乗記 ランドローバー・フリーランダー5ドアES(5AT) ……230.4万円 東男ホンダとの結婚を解消し、やさ男BMWに走ったローバーが、「この役立たず!」と叩き出されて、器量のいい娘、というか、ガタイのいい息子「ランドローバー」がフォードの旦那に引き取られた、というのが、最近の自動車業界再編劇の一篇である。 「会社名のランドローバーと、モデル名レンジローバーを混同するお客さまもいらしゃいます」と、BMWグループから独立して、昨年設立されたランドローバージャパンのスタッフは苦笑する。わが国では、400、200、75、そしてニューミニといった乗用車は、BMW(ジャパン)のローバー部門が取り扱い、レンジローバー、ディスカバリーなどのオフロード4駆は、ランドローバージャパンが引き取った。威圧感のないスタイリング
1月22日、新生ランドローバーが導入を始めた小型オフローダー「フリーランダー」のプレス向け試乗会が、静岡県は須走で行われた。前日、東京では薄く積もるほどの雪が降り、富士の麓も白く覆われた。「絶好のヨンク日和」である。
フリーランダーのデビューは、1997年のフランクフルトショー。以来、2年間で約12万台が販売され、欧州でのベストセラー小型ヨンクとなった。
日本導入が遅れたのは、従来の1.8リッター、2リッターディーゼルターボの直4ユニットに、5段MTしか組み合わされなかったからだ。つまりオートマがなかった。2001年モデルから追加された2.5リッターV6モデルに、ようやくJATOCO製5段ATが採用され、晴れて日本に輸入されることに。5ドア(S/ES=295.0/335.0万円)と、荷室部分が幌になった3ドア(315.0万円)がカタログに載る。
ボディサイズは、どちらも全長4390mm、全幅1810mm。2代目になってひとまわり大きくなったトヨタRAV4より、まだすこし大きい。それでも威圧感がないのは、ボディの縁を削った、丸みのあるフェイスゆえだろう。ひっかき傷をあまり気にしないですむ、未塗装樹脂製バンパーと、同じく樹脂製フェンダーで、ボディが囲まれるのがいい。スタイリングを手がけたのは、ジュリー・マクギャバン。現在はリンカーンディビジョンで働くという。
せっかちにも対応
赤い5ドアモデルに乗った。やや着座位置の高い、グレーの革シートに座る。座面のサイドサポートの間が狭く、お尻をすぼめるような感じ(?)と、小径のステアリングホイールが、いかにも英国車、というか、ローバー車っぽいと思った。いや、ステアリングホイールのリムの太さに、なるほどランドローバーだ、と思った。
フロントガラスから見えるボンネットの、両端が四角く盛り上がっているところが、レンジローバーを彷彿とさせる。「小ベンツ」ならぬ「小レンジローバー」というタイトルを思いついて、しかしゴロが悪いな、と諦めた。
走り出すと、RAV4や、ホンダCR-Vといった「アーバンヨンク」というよりは、当たり前だが、ディスカバリーの弟分である。乗用車のような4輪ストラットの足まわりをもつが、どこかリジッド風の、上屋が左右に揺れる感がある。「オンロード性能を軽視した」というのでは決してなく、「これがランドローバーの乗り心地だ」と、開発陣が自信をもっているからなのだろう。オンオフの妥協点が、「オフ寄り」である。
2.5リッターV6は、4カム24バルブのオールアルミユニットで、177ps/6250rpmの最高出力と、24.5kgm/4000rpmの最大トルクを発生する。シュルシュルとよく回るエンジンで、しかし、「ヨンクは低回転域でもっとモリモリと」と思うヒトがいるかもしれない。僕は思った。気持ちはいいんだけどね。
待望の5段ATも、不満なしとはしない。シフトはスムーズだが、いったんシフトアップすると、多少スロットルペダルを踏み込んでもなかなかキックダウンしないから、小気味よいドライブが難しい。せっかちなドライバーは、僕のことだが、Dポジションの右に並行して切られたシフトゲート、「S/M(スポーツ&マニュアル・ステップトロニック)」レンジにシフターを動かす必要がある。すると、前方に押すとアップ、手前がダウンの、シーケンシャルシフトが可能となる。
先進と伝統
「古くさい」とさえ感じさせるドライブフィールとは裏腹に、「Go-anywhere Vehicle」と謳われるフリーランダーには、電子制御が満載される。
HDC(ヒル・ディセント・コントロール)は、逆落としに坂を下るとき、ギアをロウに入れ、ATシフターの後の黄色いボタンを押すと、アラ不思議。勝手にエンジンブレーキがかかり、ABSが作動、「約6km/hという理想的なスピードを維持」するシステムだ。
また、ABS、トラクションコントロールに加え、EBDと呼ばれる制動機構が搭載された。これは、急ブレーキ時の前のめりになった姿勢で、フロントとリアのブレーキの強さを電気的に制御してくれる。前後のブレーキも強化された。
キングジョージ調の家屋が隣合う街並みを保ちながら、現代にうまく適合していくイギリス社会のような、というのは言い過ぎですが、「ブリティッシュ」な雰囲気をもつところが、フリーランダーの魅力である。
そういえば、初めてシートについたとき、「(足の短い僕には)ステアリングホイールがやや手前すぎるな」と感じた。カテゴリーはまったく違うけれど、英国生粋のスポーツカーメーカー、TVRのトウボードもウンと遠かったっけ。あれは、社長のピーター・ウィラーが、やたら足が長いからなんだ。ドライビングポジションが、スタイルのいいイギリス人向き。そんなところも、小型のランドローバーに「英国」を感じた一因か……。
(webCG アオキ/写真=河野敦樹)
【特別付録】どこにでも行けるクルマです
クリストファーK.エリス ランドローバージャパン代表取締役社長は、日本語がお上手だ。
「なんで、そんなにうまいのですか?」
いやいや、まだまだです、と謙遜する様子も、板についている。1980年代に、北海道に宣教師として長期滞在したことがあるのだという。
その後、「ニンテンドー」のソフトを開発する会社に入り、大学で勉強しなおしてMBAを取り、93年からフォードグループで働く。マツダにいたこともある。
「フリーランダーの一番のウリは何でしょう」と聞くと、卓越したオフロード性能を挙げる。
「でも、オフロードに行くヒトは一握りです」と記者。
「それはアメリカでも同じです。でも、ドコにでも行ける、というイメージが大切なんです」。Go-anywhere Vehicle、と完璧に発音した後、ニッコリして付け加えた。「フリーランダーは、街なかに置いてもカッコいいでしょう?」
「同じフォードグループとして、エスケープと競合しませんか?」との意地悪な質問には、ランドローバーはプレミアムブランドですから、と前置きしてから、「ブリティッシュなところが、フリーランダーの特徴です」と答える。「フォードグループの社員として言うことはできませんが、オフロード性能も、ね」。そう言って笑った。

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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